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不動産売却にかかる費用の相場について3つ
マンションや戸建て、土地などの不動産を売却する際には、手数料や税金などさまざまな費用が発生します。売却活動を進める前に、全体的な経費・コストをシミュレーションしておくことで、スムーズな売買取引を行うことができるでしょう。
ここではまず、不動産売却時の費用の相場についてご紹介します。
1:マンションの場合
マンション売却時における諸費用の相場は、100万~140万円ほどと言われています。
ここでの計上項目は「収入印紙代」「登記費用」「仲介手数料」「住宅ローン完済費用」「家財等の撤去、片付け費用」などが含まれています。なお、これらの項目については以下より解説をしていきます。
2:戸建ての場合
戸建て売却時における諸費用の相場も、マンション同様に100万~140万円ほどと言われています。ここでの計上項目は、「収入印紙代」「登記費用」「仲介手数料」「家財等の撤去、片付け費用」「測量費用」などが含まれています。
戸建ての場合、買主から売却範囲確認のため、境界確認書や確定測量図を求められる場合があります。境界が決まっていない不動産を売却する際には、確定測量が必要となる場合があることに注意が必要です。
3:土地の場合
土地売却時における諸費用の相場は、100万~200万円ほどと言われています。ここでの計上項目は、「収入印紙代」「登記費用」「仲介手数料」「家財等の撤去、片付け費用」「測量費用」「解体費用」「土壌汚染調査費用、水道引込工事費用」などが含まれています。
土地の売却では抵当権の抹消登記の他にも、所有権を買主に移転する所有権移転登記の手続きが必須となっています。そのため、所有権移転登記時にも登録免許税が発生します。
また、売却時に土地の用途が変更となる場合においては、調査費用が発生するため、マンションや戸建ての売却時に比べて費用が大きくなる傾向があります。
不動産売却にかかる費用と計算方法6つ
ここからは、不動産売却にかかる費用とその計算方法について紹介してきます。
ここで取り上げるのは不動産会社に支払う「仲介手数料」、売買契約書に貼付する「収入印紙代」、抵当権の抹消に伴う「登記費用」、「税金」、「その他の費用」についてです。
1:仲介手数料について
仲介手数料は、媒介契約を締結した不動産会社を通じて売買契約が成立するとその成功報酬として支払うものです。
不動産取引においては、「売主(事業主)」「販売代理(代理)」「仲介(媒介)」といった取引態様があります。仲介手数料は、「仲介(媒介)」取引において支払われる手数料となっています。
相場はどのくらいか
仲介手数料の金額については、宅地建物取引業法において上限が定められています。売買価格が200万円以下の場合は「取引額の5%以内」、200万円超400万円以下の場合は「取引額の4%以内」、400万円超の場合は「取引額の3%以内」とされています。
これはあくまでも「上限額」であるため、どのような場合においても金額が固定されているというわけではありません。ある程度の目安・相場として捉えておくことがポイントとなります。
手付解除の場合
売買契約を締結する際に買主から売主へ支払われる手付金は、売買代金の一部としての性格と契約が解除になるときに必要となる性格の2つを有しています。売主は手付金の倍額を買主へ変換することで、契約を白紙に戻すことが可能です。
手付解除が行われた場合、売買契約は一度成立しているため仲介手数料の請求権が消滅することはありません。したがって、不動産会社との媒介契約によって一度成約になった以上、仲介手数料の支払い義務が発生することになります。
ただし、不動産会社の責めに帰すべき事由によって手付解除が行われた場合は、この限りではありません。
違約解除の場合
民法第557条第1項では、相手方が契約の履行に着手した後は、手付金の放棄では契約を解除することができないとしています。この場合、違約金の支払いが必要となり金額は手付金の倍額が必要となります。
上記のような違約解除の場合であっても、仲介手数料の支払いは別途必要となります。ただし、決済(物件の引渡し)までに至った場合に請求される金額の全額を支払う必要はないといった判例があります。
2:印紙税について
不動産取引において不動産の売買契約は課税文書に該当し、売買契約書の記載金額によって印紙税法上定められた税額が課税されることとなります。印紙税の納付は既定の印紙を契約書に貼付し、それを消印することで終了します。
不動産取引では通常、売主と買主の双方で契約書を作成し保存します。そのため、それぞれの契約書が課税文書に該当するため、どちらも印紙が必要となります。
軽減税率について
不動産を売却する場合、印紙税は納めなければならない税金です。しかし、所得税法の一部改正により、「不動産の譲渡に関する契約書」に関する印紙税の軽減措置がとられるようになりました。
軽減税率の対象となるのは、「不動産の譲渡に関する契約書」に該当するもの、売買契約書の記載される金額が10万円を超えているものとされています。くわえて、平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成された書類に限られます。
売買契約書関連書類の発行にかかる費用
不動産売却時には、売買契約書を作成するにあたって関連書類の発行費用が発生します。
登記識別情報(登記済権利書)や固定資産税納税証明書などは、マンション・戸建て・土地の売却時に共通して必要となります。また、マンションを除く戸建て・土地の売却時には、土地測量図や境界確認書の発行費用が必要となります。
3:住宅ローン返済手数料について
住宅ローンを利用中に不動産を売却する場合は、金融機関によって返済手数料(完済手数料)が必要となる場合があります。ネットバンキングで住宅ローンを組んでいる場合には、完済手数料が発生しないといった場合もあるため確認が必要です。
また、住宅ローン利用時に保証会社を利用して保証料を前払いしていた場合は、一括繰上返済によって返済期間が短くなった分の返金を受けることができます。
4:抵当権抹消費用について
住宅ローン借入時には、その対象となる不動産に対して金融機関が抵当権を設定します。住宅ローンを完済しただけでは抵当権は消滅しないため、一括繰上返済手続きとは別に抵当権の抹消手続きを行う必要があり、その費用が発生します。
抵当権抹消登記には、「登録免許税」と「これにかかる印紙代」、「司法書士に支払う報酬」が含まれており、一般的な相場としては約2万円とされています。
「司法書士に支払う報酬」は司法書士事務所によって値段設定が異なるため、報酬額の安いところを探すことで抵当権抹消費用を節約することも可能です。
5:譲渡所得税について
土地や建物を売って得た利益のことを「譲渡所得」と言います。
譲渡所得には、所得税や住民税が課税されるため、これらを総称して「譲渡所得税」と言います。また、不動産の譲渡所得にかかる所得税と住民税は「分離課税」であるため、給与所得や事業所得といった他の所得とは切り離して計算されます。
譲渡所得は「売れた価格」そのものではなく、不動産購入時の価格や費用、売却時の費用を「売れた価格」から差し引いたもので算出されます。
建物を売却する場合は、年数の経過によって価値が減少していくため、用途や構造、経過年数に応じた減価償却費を勘案しなければいけないことに注意が必要です。このことから譲渡所得は、「収入金額−取得費−譲渡費用」で算出されます。
6:その他かかる費用
最後にこれまで紹介できなかった「引っ越し費用」や「解体・測量にかかる費用」、「ハウスクリーニングやリフォームにかかる費用」について紹介していきます。
「解体や測量にかかる費用」はマンション売却時には発生してくる可能性は低く、「ハウスクリーニングやリフォームにかかる費用」は土地売却時に発生してくることはありません。
引っ越しにかかる費用
不動産売却によって住み替えをする場合は、引っ越し業者に支払う「引っ越し費用」が発生します。荷物の量や新居までの距離、引っ越しを行う時期によって値段は大きく異なります。
とりわけ就職や転勤が多い時期は引っ越し件数も多くなるため、費用も大きくなります。反対に引っ越しが少ない時期では、安く抑えることができます。
解体や測量にかかる費用
建物を取り壊し、更地にして土地を売却する場合は、解体業者に支払う「解体費用」が発生します。建物の解体費用の相場は構造ごとに異なります。
木造の場合、解体費用は「坪単価3万~5万円」で、鉄骨造の場合は「坪単価4万~6万円」、RC造の場合は「坪単価4万~8万円」程度が目安となっています。
また、土地や戸建ての売却時には正確な土地の測量が必要となるため、土地家屋調査士に支払う測量費用も発生します。土地の売却時には「確定測量」が必要となり、費用は40万~50万円程度が目安となります。
ハウスクリーニングやリフォームにかかる費用
引っ越しにかかる費用と同時に、退去時のハウスクリーニングや建物や建具の修繕(リフォーム)といった原状回復のための費用も発生します。
ハウスクリーニングは業者に依頼することで床や壁、浴室、トイレなどをきれいに掃除してくれます。売却時にハウスクリーニングを行うことは義務ではありませんが、不動産取引におけるトラブル防止のためにも行っておくことが推奨されています。
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不動産売却にかかる費用を安く抑える6つの方法
ここからは、不動産売却時の諸費用を安く抑える方法を紹介していきます。これまで紹介してきた諸費用の中には、値引きや節税対策によって安く抑えることができます。
これらの仕組みを理解しておくことで、不動産会社の提示を鵜呑みにすることなく、自らで値交渉や税金対策を講じることができます。
1:仲介手数料の場合
仲介手数料について解説した価格は「上限額」であるため、金額が固定されているというわけではありません。
不動産会社によっては、仲介手数料を半額にしたりそれ以上のサービスを提供したりする場合もあります。
また、不動産仲介会社は、自社で仲介物件を仕入れて自社で買い手を見つけたいといったビジネススタイルが根底にあります。つまりは売り物がなければ始まらないため、不動産売却の仲介手数料についてはある程度の値引きを許容している会社もあります。
2:相続で譲渡所得を抑える場合
通常、相続によって取得した不動産を売却する場合は、相続で取得した際に相続税を納め、売却によって得た譲渡所得に対して譲渡所得税を納めることになります。
しかし、相続によって取得した不動産を売却する場合は、「相続税の取得費加算の特例」を受けることができるケースがあるため、確認が必要です。
これによって、譲渡所得を算出する際の取得費の中に納付した相続税の一部を加算することが可能となります。特例の適用を受けるためには、売却する不動産が相続または遺贈によって取得したものであり、相続税が課税されているものに限られます。
くわえて、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却していることが条件として付帯します。
3:譲渡損失の損益通算及び繰越控除を利用する場合
まず、「損益通算」とは、譲渡所得を計算した上で算出された損失を給与所得などの他の所得の利益と相殺することを言います。「繰越控除」とは、その相殺しきれなかった損失分を翌年以降の所得と相殺することを指します。
土地・建物等の譲渡所得の計算において生じた損失は、原則として他の所得との損益通算および繰越控除はできないこととなっています。
しかし、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失」と「特定居住用財産の譲渡損失」の要件を満たしていれば、譲渡損失を他の所得との損益通算および繰越控除をすることができ、節税対策に繋がります。
出典:住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき|国税庁
4: 居住用財産の3,000万円控除を利用する場合
居住用財産(不動産)を譲渡することで得る譲渡所得から、3,000万円を控除することができる場合もあります。これは、居住用財産の所有期間を問わずに適用することができ、譲渡益が3,000万円に満たない場合は、その金額までが控除され税額は0となります。
譲渡益が3,000万を超過する場合には、超える金額に対して短期譲渡所得または長期譲渡所得の税率を適用することになります。
また、3,000万円控除は、3年に一度しか適用することができないといった点に注意が必要です。
5:各自治体の補助金制度を利用する場合
現在の日本では「空き家問題」が浮上しています。この問題の対策として自治体などで積極的な補助金制度などを設けている場合があり、これらを賢く利用することで不動産を手放す手続きをスムーズに進めることができます。
各地方自治体の補助金や助成金については、「全国補助金一覧サイト」「地方公共団体による空き家対策支援制度検索サイト」「空き家・空き地バンク全国自治体支援制度サイト」などで抽出することができます。
6:遠方の物件の場合には交通費を減らす
売却したい不動産が遠方の場合は、売買取引のために赴く交通費を削減することも大切です。とくに、売却の際に必要となる公的書類については、一度で取得するように心がけることが重要となります。
何度も遠方に赴き、費用や時間を浪費してしまうと、効率的な売却とは言えないでしょう。まずは、目に見える出費から抑えて売却活動を進めることがポイントです。
不動産売却にかかる費用の内訳や相場を知っておこう
ここまで、不動産の売却にかかる費用の内訳や相場について解説してきました。不動産取引は、人生において何度も訪れるようなことはないため、不動産会社の提案を鵜呑みにしやすい傾向にあります。
そのため、正しく不動産売却にかかる費用を理解し、内訳や相場を頭の中に入れておくだけで、提示された価格の妥当性を見抜くことができます。
また、不動産の引渡しまでに用意しておかなければならない費用がある程度明確になるため、よりスムーズに売却手続きを進めることができるでしょう。
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