解体工事は日中に屋外で行われる工事なので、どうしてもいろいろな要因が重なり工期が遅れる可能性があります。
そのため、解体後の建て替え工事に影響を与えないために、ある程度の余裕を持ったスケジュールが必要です。
それでも、予想外の事態によって納期が遅れてしまい今後のスケジュールに影響が出てしまうことがあります。
もし解体工事の遅延が起きた場合は解体業者に損害賠償を行うことは可能なのでしょうか?
今回は解体工事の遅延による損害賠償の請求について解説します。
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納期が遅延=必ずしも損害賠償請求できる訳ではない
解体工事は見積もりの段階では予想ができないことが多く、解体工事が始まってからわかることもあるのでどうしても工期が延びてしまうことがあるのです。
ここでは解体工事の工期が延びる理由を3つに分けて解説し、損害賠償の請求ができるかどうかについても言及していきます。
天候不良や災害の発生による場合
屋外で行われる工事が遅延する理由として、雨が降った場合を想像する方は多いと思います。
小雨程度であれば粉塵が舞いづらくなるため好都合といえるので、工事を中断するということがないのが通例です。
しかし、ゲリラ豪雨のようなあまりにも激しい雨であれば、作業員が足を滑らせるなどの危険があるので工事を中断せざるを得ません。
また、風が強い場合は解体した廃材や粉塵が飛ばされてしまうために、風が収まるまでは中断する必要があります。雪が降る地方で12月から3月に解体工事を行う場合は、降雪によって作業が中断したり、除雪作業によって工期が延びる可能性が高いです。
その他では、地震や竜巻といった突発的な災害があった場合も当然作業は中止となり、警戒速報や避難速報が発令されるレベルの大雨も同様でしょう。
天候不良による遅延では安全上の理由から作業を中断するのが妥当といえます。地震や竜巻といった自然災害は、いつ発生してもおかしくはありませんし、作業員の安全を確保できるまでは工事が進めることは困難でしょう。
そのため、天候不良や自然災害が理由による工事の遅延の場合は、損害賠償を解体業者に請求するのは不適切だと考えられます。
近隣住民のクレームや行政指導による工事の中断
解体工事では振動や騒音と粉塵がどうしても発生してしまいます。
粉塵に関しては、重機や工事現場に水をかけながら作業をしたり養生シートによってある程度抑えることは可能です。
振動や騒音に関してはゼロにすることは難しいので、近隣住民の方は日常生活の中である程度の我慢を強いられることになります。振動や騒音が我慢するのが難しいようなレベルであれば施主に対してクレームを入れてくる場合もあるでしょう。
また、近所で冠婚葬祭が執り行われる場合なども、その日だけは工事を行わないで欲しいとお願いされる場合もあるかもしれません。
通常の業者であればクレームやお願いの声があれば、振動や騒音を減らす工事に切り替えたり、お願いされた日は工事を行わないなどの対応をしてくれます。
しかし、そういった声を無視した工事を続ける業者も中には存在します。
何も対応せずに工事を行った場合、最悪のパターンとして行政からの指導が入り工事がしばらくの間止まってしまうことになるでしょう。
解体業者による改善が見られず行政からの指導で工事が中止になった場合は、解体業者の責任による遅延のため賠償請求は可能です。
地中埋設物が見つかり解体工事が中断した場合
解体工事では、工事途中に地中埋設物が見つかった場合に工事が中断することがあります。
撤去が簡単なものであれば工期に影響が出ることはありませんが、大きなものによっては一度解体工事を中断しなければなりません。
地中埋設物の代表的なものは、以下のようなものが考えられます。
・古井戸
・浄化槽
・建築廃材
・地下室
見積もり段階では床下になにが埋まっているかわからないため、これらが発見された場合工期が延びてしまう可能性があるのです。
多くの解体工事では、見積書に地中埋設物にがあった場合の追加請求について記載されています。地中埋設物が見つかった場合には、契約内容に従い追加費用を支払う必要があるため注意してください。
その他には解体工事の中で地中に遺跡が見つかった場合、調査をするために工事が中断してしまう場合もあります。
いずれにせよ、地中埋設物が見つかった場合の遅延では、損害賠償請求は難しいと思われます。
このように、解体工事の遅延の内容として解体業者の責任があった場合には、損害賠償の請求ができると考えられます。
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納期の遅延が起きた場合のために契約書で確認すべき項目
もし、解体工事で工期の遅れが生じた場合は、解体業者と交わした契約書の内容や約款を確認することが重要となってきます。
契約書を確認する際に見るべき項目としては「工期」と「遅延損害金」の2つです。
通常であれば契約書には「〇〇年〇月〇日に着工、〇〇年〇月〇日までに完了」すると記載されています。実際には一週間で終わる工事であっても、天候不良といったトラブルに対応するために余裕を持った工期を設定する場合が通例です。
想定よりも工期が伸びたとしても契約書に記載された工期内で終わった場合は納期の遅延にならないことは留意してください。
遅延損害金の項目はおもに「遅延日数に応じて遅延損害金を支払う」ことと「遅延損害金の年率」が記載されています。
遅延損害金の法定利率は年率3%ですが、契約書に添付されている約款によっては年率が異なる場合もあるので必ず確認しましょう。
解体工事の遅れが原因で賠償できる金額と解体業者に請求する方法
解体業者の責任によって納期が遅れた場合、施主が被った損害額を解体業者に請求できます。
解体工事の遅れから建て替え工事の工期もズレ込み、結果として仮住まいの家賃が1ヶ月多く発生した場合などが対象です。
解体業者の責任による納期の遅れと、それによって発生した実害額の確認が取れたら、解体業者に損害請求を行うことができます。
工事代金の支払いが終わっていなければ、仮住まいの家賃分と遅延損害金を差し引いて支払いができないか交渉を行いましょう。
工事代金の支払いが既に終わっている場合であれば、解体業者に該当の金額を返金してもらいたいという要求をすることになります。
実際に解体業者の責任によって納期の遅延がはっきりしているのであれば、解体業者側も要求に応じてくれる可能性が高いです。
しかし、損害請求に応じない業者であった場合は弁護士に相談するといった対応が必要になります。
解体工事の納期遅延が起きないように施主側ができること
突発的な自然災害や地中埋設物による工事の中断はしかたない部分もあるでしょう。
しかし、その他の点については施主側の対応によって、発生する可能性を下げることが可能です。
天候不良が起きやすい時期に解体工事を行う場合は、ある程度の余裕をもたせたスケジュールを組むことで柔軟な対応ができます。
梅雨時期や台風が予想される時期では2週間は余裕をもたせる必要はあるでしょう。
梅雨や台風シーズンである6月から9月は、解体業者は比較的暇なことが多いので余裕のあるスケジュールでも問題なく請け負ってもらえるでしょう。
雪が降る地域であれば、12月から3月に解体工事を行うことで除雪作業による遅れをなくすことができます。
この時期は解体業者的には繁忙期となるため、できるのであれば施工時期をずらしたほうが余裕のあるスケジュールで工事を行えるようになるでしょう。
近隣住民からのクレームについては、事前のあいさつ回りをしっかり行うことである程度のリスクを軽減することが可能です。
解体工事の遅延はどうしても避けられないものもありますが、施主側の調整で避けられるものもあります。
損害賠償の請求をしないため解体工事は余裕のある日程で行うべき
解体工事の納期の遅延があった場合、解体業者の責任であれば損害賠償の請求が行えることがわかりました。
しかし、天候不良による中断や地中埋設物の発見による工事の延期では損害賠償の請求は難しいといえます。
いずれにせよ解体工事が大幅に遅れてしまうと、建て替えなどのスケジュール全体に影響が出てしまいます。
大事なのは損害賠償を請求の可否よりも、余裕のあるスケジュールや近隣住民へのあいさつ回りを行うことで遅延のリスクを減らせるということです。
無理のないスケジュールを組むことが、トラブルの起きない解体工事にするコツであるといえるでしょう。
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