危険物を扱うガソリンスタンドの解体というと、通常の家屋よりもさらに安全性を重視し、慎重に進めなければならないものだということはなんとなく予想がつきますよね。そしてその分工事も難しく、費用も高くなりがちなものです。
今回はガソリンスタンドの解体について、ポイントや手順、補助金の申請方法について見ていきましょう。
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ガソリンスタンドの解体は難易度が高い?
ガソリンスタンド跡地をよく見かけるワケとは…
「どう見ても以前はガソリンスタンドがあったんだろうな」とわかる跡地というのは、割とよく街なかで見かけますよね。
ガソリンスタンドがあったくらいの場所なので、どこもかなりの好立地なのに施設もそのまま、別の使い方がされるわけでもなく放置されている光景を見て、不思議に思ったことはありませんか?
実はガソリンスタンドが廃業すると、その跡地を更地にして新たに別の施設を作ることは、かなりハードルが高いことなのです。
難易度も費用も高い
ガソリンスタンドは、ひとつ間違うと炎上・爆発する非常に危険度の高いものを扱う場所ですよね。そのため、消防法というものに従って建物の強度や設備の安全面において厳しい規制がなされています。
また外からは見えませんが、地下には巨大で頑丈な貯蔵タンクも埋設されています。強度の高い建物や解体が面倒な設備に加えて、安全にとても気をつけて作業しなければいけない状況から、ガソリンスタンドの解体工事は非常に難易度が高く、それに伴って費用も相当高くつく傾向にあるものなのです。目安としては300万~1千万円、土壌汚染があったなどの場合は数千万円になることもあるようです。
そのため、解体を請け負ってくれる業者を見つけることや費用を工面することがなかなか難しく、それで解体工事を進められなくて、ガソリンスタンドの跡地が放置されている光景をよく見る…ということなのです。
次項では、このように難易度の高いガソリンスタンドの解体においておさえるべきポイントをいくつか見ていきましょう。
ガソリンスタンド解体の主な注意点
難易度や費用が高くなりがちなガソリンスタンドの解体工事を実際に考える際、注意すべき点やおさえるポイントがいくつかあります。
業者探しのポイント
どんなことでも実績豊富な業者を選びたくなりますが、ガソリンスタンドの解体を請け負ったことがある業者というのは、そんなにたくさん見つかるものではありませんよね。
それでも、「危険物取扱者」の資格を持ち、特殊な重機や道具をそろえていて、できるだけ経験(ガソリンスタンドに限らず、家屋などの解体経験でも)豊富な業者を選びたいところです。経験や実績を積んでいる業者は顧客からの信頼もあるので、作業が慎重かつ丁寧で安心です。
地下の貯蔵タンクの扱い
地下に埋設されている貯蔵タンクは、最終的に「完全撤去」するか「埋め込み」をするかどちらかの処置となります。
タンクを地中から取り除いて埋め立て、完全に撤去してしまえば、跡地を有効活用することはもちろん問題なく可能になりますが、費用がかなりの高額になるという難点があります。
逆にタンクを取り除かず、中に水や砂を詰め込んだうえでコンクリートを流し込んで、そのまま地中に埋め込んでしまうという方法は、完全撤去よりは安上がりですが、跡地を別の目的で再利用することができなくなってしまいます。
どちらの方法も一長一短あるわけですが、ガソリンスタンドを廃業するほどの状況であるということは、完全撤去の費用を用意するのも容易ではないケースが多く、そのため仕方なく埋め込み処置して跡地を放置、というパターンになりやすいのです。
土壌汚染調査はするべき?
土壌汚染調査は、必ず行わなければならないという義務はありません。 しかし、最近のガソリンには指定有害物質である鉛・ベンゼンなどといったものはほとんど含まれていないといえますが、古くから長い期間営業していたガソリンスタンドの跡地だと、有害物質が検出されることもまれにあるのです。
そのため、ガソリンスタンドの跡地を売却する際には、買い主に「土壌汚染されていないことを証明する書類」を提出しなければならなかったり、自治体によっては条例で土壌汚染調査を行うことを定めているところもあったりします。
結局、義務ではなくても土壌汚染調査はしておかなければならない、という流れになっているということですね。
近隣住民や新しく土地所有者になる人の安心・安全のためにも、やはり土壌調査の結果を示しておくことは重要でしょう。
補助金はあるの?
ガソリンスタンドの解体工事の際には、補助金を利用できる場合があります。しっかり調べて、上手に活用したいところですね。
補助金の申請方法や注意点など詳細については、後述します。
ガソリンスタンド解体の手順
建屋内装解体
事務室や整備室、サービスルームなどがある建屋の内部からまず備品を撤去します。
キャノピー撤去
スタンドの上部にある大きな屋根部分を解体していきます。構造物を撤去したあとは、柱の基礎部分も掘削して解体します。
建屋解体
備品をすべて取り除いた建屋の構造物を解体します。
地下タンク処理
前述した通り、地価の貯蔵タンクは完全に撤去する方法と埋め立てる方法がありますが、いずれの場合もまずタンク廃止の処置を行います。
残ったオイルの処理
バキュームカーなどでタンク内部に残っているオイルをきれいに吸い込みます。
油分を中和する
中和剤や乳化剤と呼ばれる特殊な薬液をタンク内に吹きつけて、油分を中和していきます。
油分がなくなったか確認する
タンク内に水を張って油膜が浮かないか確認したり、可燃性蒸気がないかどうかを検査したりして、万が一にも残った油分がないかを調べます。
タンクの最終処理
タンクを完全に撤去する場合は、このあとタンク内に不燃性のガスを詰めて可燃性ガスが発生しないように処置をし、ここでようやく掘り起こしてそのままの形で解体処分場に運びます。
タンクを埋め立てる場合は、油分の残留がないかを確認したのち、タンクに水や砂を詰めてまわりにコンクリートを流し込んで埋め立てます。
整地
敷地内に土を運び込み、しっかり転圧して整地し、完了です。
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ガソリンスタンド解体には補助金がもらえる場合も
補助金の内容
ガソリンスタンドの解体においては、「一般社団法人全国石油協会」から補助金を受けられることがあります。
要件はいくつかありますが、まずは「中小企業等」「財務状況の厳しい者」であること。それから補助を受けられる範囲は「地下埋設物等撤去」の部分であるため、貯蔵タンクや配管の撤去にかかる費用についての補助金、ということになります。 埋設物撤去にかかった費用の3分の2を上限、ということなので、たとえば解体工事全体にかかった費用が900万円でそのうち貯蔵タンクの撤去にかかった部分が600万円だったとしたら、600万円の3分の2=最大400万円が補助金として受け取れる、ということになります。
補助金申請の際の注意点
補助金申請の手順や詳しい要件は「補助金申請のための手引書」に記載されているため、そちらを確認しましょう。
着工後の申請や、交付決定前に着工してしまうと補助金を受け取ることができないため、十分注意が必要です。
まとめ
ガソリンスタンドの解体は、一般的な家屋などの解体とは一味違って難易度も費用も高くなる傾向があります。特に大変なのが地下に埋設されている貯蔵タンクの扱いであり、これを完全に撤去するか埋め立ててしまうかで、かかる費用にも今後の土地活用にも大きく違いが出てきます。
補助金を利用することもできるので、跡地の活用方法はよく考えたうえで、解体工事の内容を決めたいですね。
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