ゼネコンとは、ゼネラル・コンストラクターの略で、General(総合)とContractor(請負・契約者)という英単語を組み合わせた和製英語General Contractorです。そういった要素を併せ持ち、日本の都市開発を支える総合建設業を営む企業を指します。
工事の一式を統括する業務を行うことが多く、複数の下請け業者によって施工される大規模で複雑な工事を得意とします。そのため、会社の規模も大きく、建設業界の知識がない方も、社名を聞いてピンとくるかもしれません。 今回はこのゼネコンについて、基礎知識を学んでいきましょう。
ゼネコンとは
ゼネコンの定義
ゼネコンは、さまざまな分野のエキスパートがそろった大きな組織です。上述したようにゼネコンには明確な「定義」はないものの、ひとつの会社で設計・施工・研究が行われているところだということが知られています。
仕事内容
ゼネコンは建設のプロジェクトのトップであり、リーダー的な存在で、さまざまな部門を一括して持っています。その代表的なものを紹介します。
設計
建設業界におけるゼネコンの役割は、土木と建築のそれぞれの設計に基づき、作成された図面や仕様書を元に施工をすることです。
土木工事の場合における設計は、建設コンサルタントが担い、建築工事では、建築設計事務所が設計を担います。
道路や橋・トンネル・ダム・河川堤防・海岸防潮堤といった社会インフラを支えるものが土木構造物であり、それに対して商業施設・物流施設・官公庁舎・オフィスビル・学校・ホテル・マンションといった身近な建物などが建築構造物です。 街づくりを支えるこれらの土木構造物や建築構造物の施工が、建設業界におけるゼネコンの役割なのです。
施工管理
ゼネコンの根幹ともいえるのが、建設における施工管理です。設計図や仕様書に書かれた内容を遂行し、成果物を形作っていきます。 ゼネコンは施工作業を下請けと呼ばれる協力業者へ発注し、全体の進行の管理をするのが役割です。中でも工程・原価・品質・安全の管理は重要な業務となっています。
研究開発
常に業務の効率化や建築物の強化を図るのが研究部門です。地震の揺れに対する耐震技術の研究や、自然の力を利用した推進技術や美しく強度の高いコンクリート造りなどを研究しています。過去の事故や災害を教訓とし、日々研究開発をしていくことで、技術の向上を図ります。
建設会社や工務店との違い
建設会社や工務店との大きな違いは、ゼネコンが建設における役割の「設計」「施工」「研究」の3つのすべてを自社で行っているのに対して、建設会社や工務店では、「設計」「施工」の2つだけというのがほとんどである点です。 もう一つの違いは、明確な基準はありませんが、建設の規模がゼネコンの方が大きいことが挙げられます。建設会社や工務店はそれに比べると規模が小さいものが多くなっています。
ゼネコンの種類
日本には、大きく分けて3タイプのゼネコンが存在します。
いわゆるスーパーゼネコンといわれる大手5社の、鹿島建設・清水建設・大成建設・大林組・竹中工務店。
そのほかに海洋土木を専門とするマリン・コンストラクター(Marine Contractor)、通称マリコン。
道路などのインフラ工事に特化した道路舗装専門の最大手など。 どのゼネコンにおいても「設計」「施工」「研究」といった3つの分野は行っています。
スーパーゼネコン
日本の建設業界において、大きな影響力を持っているのが上述した5社であり、スーパーゼネコンと呼ばれています。日本の代表する建造物を数多く手掛けており、他社を圧倒する存在です。名前を聞くと、ご存知だった方もいるでしょう。この5社は特に規模が大きく、日本のゼネコンの中のトップ5となっています。
マリコン
マリコンは、海洋土木工事に強みを持ったゼネコンを指す言葉です。具体的には、埋め立てや護岸工事、海洋トンネルや海に架かる橋脚工事などの土木工事で、これらは高い専門性を要することが多く、新規参入が極めて難しいとされています。
日本のマリコンの技術は高く、国内のみならず海外からも評価されており、世界各国の湾岸工事や空港の用地造成を受注しています。 代表的な会社は五洋建設・東亜建設工業・東洋建設などが挙げられます。
道路舗装
ゼネコンの中には、道路舗装に特化した会社があります。社会のインフラとして必要不可欠な道路、その工事の多くは、国や地方自治体から発注された公共工事で、新設のほか補修などのメンテナンスにも高いニーズがあります。
今後は国内需要が低下していくことが予想されていますので、高い技術力を生かした海外進出や道路舗装周辺領域への進出も視野に入れた動きもあります。 代表的な会社はNIPPO・前田道路・鉄建建設・日本道路などが挙げられます。
その他のゼネコン
準大手ゼネコン
準ゼネコンとは、一般的に年間の売上高が単独で3000億円を超えるゼネコンのことを指します。
もちろん単独での請負で仕事もしますが、大きなプロジェクトの場合には、スーパーゼネコンでさえ単独で仕事を請け負わず、他社と共同で行うJV(Joint Venture)といった手段で請け負うのですが、その際にスーパーゼネコンの次の序列での参入となることが多い企業です。 代表的な会社は、長谷工コーポレーション・戸田建設・フジタ・前田建設工業・熊谷組・安藤ハザマなどが挙げられます。
中堅ゼネコン
中堅ゼネコンとは、一般的には年間の売上高が単独で1,000億円を超えるゼネコンを指します。 大体のゼネコンに同じことが言えますが、会社内に研究開発部門があり、そのほかにも技術部門、設計部門などを所有しています。また、護岸工事やダム・トンネル工事など、専門的な分野にも高い技術を有する会社も多数あります。
サブコン
これまでの話でゼネコンについては理解をしていただけたでしょう。では、ゼネコンに対してサブコンとどんなものなのでしょうか。こちらはゼネコンではありませんが、関連が深いのでここでご紹介しておきます。 サブコンとは、大規模な建築工事や土木工事において、元請け(ゼネコン)から、建設作業や設備の工事部分を請け負う企業のことを指します。そもそも建設工事はゼネコン一社で行うことは不可能で、多岐にわたり直接工事を担当するサブコンの協力のもと成り立っています。簡単に言うと下請けをしてくれる直接工事を遂行する会社といえます。
建設業界におけるゼネコンの役割・新たな動向
これからの建設業界における役割と使命
社会資本の防災・減災対策、強靭化対策や、被災時の交通系のインフラの早期復旧も、大事な役割です。日々の開発や研究に力を注ぎ、災害大国の日本における安全と安心を守るインフラ設備の定着化を図り、よりよいものに置き換え、さらには災害時での教訓を生かし、被害を最小限にとどめるための街つくりや早期復旧を見据えています。
ゼネコンの果たすべき責務
建設業界は社会資本の建設や補修・維持管理を行い、地域経済の一翼を担うとともに、災害の未然防止や災害時の応急対策・復旧に努め、人々の安全を守るために努力を惜しんではおりません。 ただ発注者の希望通りの成果物を作るだけではなく、人々が日々安心して暮らせるようたゆまぬ努力をしています。
今後の動向
今後、建設業界では首都圏を中心に再開発や物流施設、リニア中央新幹線、大阪万博などの大型プロジェクトが相次いで予定されています。
また、特に首都圏や都心部を中心に、建物の老朽化が進み、建て替え需要も増加傾向にあります。
そういった観点からも、短期的には建設業界の需要はしばらく旺盛だといえるでしょう。 一方で、人口の減少に伴い、長期的な国内市場の縮小が見込まれるので、建設需要が徐々に先細りを見せ、発注競争のさらなる激化が予想されています。こうした一連の流れから、ゼネコン各社は不動産開発や洋上風力発電、インフラ運営、海外展開などの新たな成長の種を育てています。
さいごに
建設業界はまだまだマンパワーに帰依するところが多分にあり、産業の中では後れを取っているのも事実です。短期的には国内需要は安定していますが、長期的に見たときに、人口の減少や最新のテクノロジーの発展により、人が直接作業をするのではなく、ロボットやAIなどが作業の中心となる可能性も十分に秘めており、そうすることによって、事故や災害で尊い命が犠牲になることも減少するのではないでしょうか。