不動産を購入する際には、実際の不動産に対する代金にとどまらず、税金や諸経費に高額の費用がかかるものです。
そのひとつに、「不動産取得税」という税金があります。固定資産税は知っているけれど、他にも税金がかかるの?という方は多いことでしょう。実際、課税されるのは1回きりであるため、存在をあまり知られておらず、ましてや軽減措置が受けられて節税対象になるものだということはなかなか把握されていないかもしれませんね。
今回は不動産取得税について、金額の算出方法やケース別の軽減措置まで詳しく解説していきます。
不動産取得税とは?分かりやすく解説!
不動産取得税とは?対象は?
不動産取得税とは、その名の通り不動産を取得した際に課税されるものです。土地や建物などを購入したときに、都道府県に納税する地方税として区分されています。
個人・法人の別なく課税されるもので、購入だけでなく交換や贈与・新築・増改築の際も対象となります。さらに、自分で住む・利用するものでなくても、不動産投資としての経営目的で取得したものにも課税されます。
ただし、「取得」といっても相続による取得の場合は例外となり、このときは不動産取得税はかかりません。また、他にもいくつか免除の例があり、それに関しては詳しく後述します。
課税はいつ?頻度は?
不動産取得税の納税通知書は、不動産の所有権移転の登記をしてから約4〜6カ月後に届きます。そのため不動産取得税は、不動産の取得日の半年から1年後に支払うのが一般的です。ただし、各自治体によって支払いのタイミングは異なるため、納期は事前に確認するようにしましょう。
また、不動産を取得すると他にも固定資産税や都市計画税といった税金が発生しますが、これらが毎年納めなければならないのに対して、不動産取得税は「取得した際の1回のみ」の納税で済みます。
とはいえ、取得対象が不動産という高額なものであるため、不動産取得税もそれなりの金額になります。税額の計算方法を確認しておき、納付書が届いてからあわてることのないようにある程度まとまった金額を用意しておきたいですね。
税額の計算方法
不動産取得税額の計算方法は、まず基本の計算式として、
不動産取得税額=不動産の固定資産税評価額×4%
これにあてはめて算出します。ただし、2024(令和6)年3月31日までは、特例として税率が3%となっています。また、課税対象額が「固定資産税評価額」であることにも注意が必要で、「実際に不動産購入時に支払った金額」ではないという点がポイントになります。
建物と土地、それぞれにかかるものなので、マンションの場合は敷地全体の面積に対する専有面積の割合で計算します。
また。病院など住宅以外の建物は現在のところ期限なしで税率が4%です。
その他にも、不動産取得税には場合に応じて軽減措置が用意されているので、要件にあてはまれば大きな助けになるでしょう。次項で詳しく見ていきます。
不動産取得税の軽減措置
不動産取得税に対する軽減措置は、大きく分けて3つのカテゴリーで用意されています。
宅地に関する特例措置
「宅地」とは、「現在建物が立っている土地、もしくは建物の敷地のために使われる土地」を指します。
不動産取得税は建物だけではなく土地にも課税されるものであるため、宅地における税金額も算出しなければなりませんが、2024(令和6)年3月31日までの取得であれば固定資産税評価額を1/2とする軽減措置があります。
したがってこの期間の宅地に対する不動産取得税額の算出式は、
宅地の課税標準額=固定資産税評価額×1/2
となります。
新築住宅とその土地の軽減措置
住宅が新築か中古かによって、またそれぞれの「建物」か「土地」に対してでも、軽減措置の内容が変わります。
新築住宅の建物に対して
まずは新築住宅の「建物」に対しての軽減措置について。適用される要件は、
・床面積が50㎡(戸建て以外の賃貸住宅の場合は40㎡、共用住宅の場合は共用部を所有者で按分した面積も含む)以上240㎡以下であること
・個人の居住を目的とした住宅であること(セカンドハウスも含む)
以上の2点です。
これらを満たした場合、「固定資産税評価額から1,200万円控除」という軽減措置が受けられるため、算出式は、
新築建物の不動産取得税額=(固定資産税評価額-1,200万円)×税率3%
となります。
新築物件であればなかなかないことかもしれませんが、固定資産税評価額が1,200万円に満たなければ、不動産取得税はかからない、ということになるのです。
また、「長期優良住宅」の認定を受ければ、さらに100万円上乗せされた1,300万円の控除が受けられます。こちらも2024年まで措置が延長されています。
新築建物(かつ長期優良住宅)の不動産取得税額=(固定資産税評価額-1,300万円)×税率3%
新築住宅の土地に対して
次に、新築住宅の「土地」に対する軽減措置です。要件は、
・その土地に新築する住宅が軽減措置の要件を満たしていること
・住宅を新築する場合、土地を取得してから3年以内であること
・住宅を先に建築していた場合、新築1年以内に土地を取得すること
上記の要件を満たしている場合、「以下のどちらか多い額が不動産取得税の税額から控除」されます
(1)4万5,000円
(2)土地1㎡当たりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(限度面積200㎡)×税率3%
したがって、算出式は、
新築住宅の土地の不動産取得税額=(固定資産税評価額×1/2×3%)-控除額(上記(1)か(2)のどちらか多い金額)
となります。
中古住宅とその土地の軽減措置
中古住宅の場合は、新築住宅よりも多少軽減措置が厳しくなります。
中古住宅の建物に対して
新築の建物と比べて大きく異なるのは、「耐震基準を満たしているかどうか」ということにも大きく焦点が当てられている点です。要件は、
・床面積が50㎡以上240㎡以下であること
・個人の居住を目的とした住宅であること(セカンドハウスも含む)
・耐震基準に関して、以下のいずれかに該当するものであること
- 昭和57年1月1日以降に新築されたもの
- 昭和56年12月31日以前に新築されてはいるが、建築士などが行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることが証明されている(ただし診断が取得日前2年以内に終了している)もの、既存住宅売買瑕疵保険に加入しているもの
- 新耐震基準には適合していないが、入居前に新耐震基準に適合するための改修を行う住宅
これらの要件を満たしたうえで、さらに「新築された時期」によって、控除額が決定されるのですが、その金額は都道府県によって違いがあるため、お住まいの都道府県のホームページなどで確認が必要です。
控除額がわかれば、算出式は以下のようになります。
中古住宅の建物の不動産取得税額=(固定資産税評価額-控除額)×税率3%
中古住宅の土地に対して
最後に、中古住宅の「土地」に対しての軽減措置の要件は、
・その土地に建っている住宅が軽減措置の要件を満たしていること
・住宅を取得する場合、土地を取得してから1年以内であること
・住宅を先に取得していた場合、その1年以内に土地(敷地)を取得すること
であり、控除額は新築住宅の建物と同様、以下のうちどちらか多いほうの金額となります。
(1)4万5,000円
(2)土地1㎡当たりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(限度面積200㎡)×税率3%
したがって、算出式は、
中古住宅の土地の不動産取得税額=(固定資産税評価額×1/2×3%)-控除額(上記(1)か(2)のどちらか多い金額)
となります。
不動産取得税の軽減措置の受け方と還付申請
不動産取得税の軽減措置は、不動産取得税の申告をする際に「不動産取得税減額申請書」も一緒に添付することで受けられます。
また、納税後に軽減措置の対象であることがわかった場合には、還付申請をすることで、払い過ぎた分を返してもらうことが可能となっています。
不動産を手に入れてから5年以内であれば、還付申請は可能です。それを過ぎてしまうと戻ってくるものも戻ってこなくなるので、気がついたら早めに手続きを行うようにしましょう。
還付を受けるには、「不動産取得税減額申請書兼還付申請書(都道府県によって名称に若干の違いあり)」などの必要書類を再度用意し、申告する必要があります。やはり都道府県によって違いがあるため、事前に把握しておくようにしましょう。
不動産取得税の申請について
不動産取得税の申請は必要?不要?
原則として不動産取得税の申請は必要です。
しかし、不動産を取得した日から30日以内に登記を申請した場合には、申告は不要となります。
ただし、各自治体により条件が異なるため事前に確認してみてください。
不動産取得税の申告の流れ
まずは不動産を取得してから10~60日以内(都道府県によって違う)に、都道府県税事務所へ必要書類(下記)を提出します。
・不動産取得税申告書
・不動産取得税課税基準の特例適用申告書
・不動産取得税減額適用申請書(土地用)
・不動産取得税減税適用申請書(建物用)
・売買契約書(写し)
・登記事項証明書
・耐震基準を満たすことを証明する書類(旧耐震基準の中古住宅の場合)
ただし、こちらも都道府県によって必要書類に差が出ることがあるため、事前に確認は済ませておきましょう。
申告が済むと、4~12か月の範囲で納付書が送られてきます。期間があくため、すっかり忘れていた頃に届くこともあります。しっかり準備をお忘れなく。
納付の方法は、都道府県税事務所の窓口払いやコンビニ払い・クレジットカード払いなどさまざまです。ある程度まとまった金額になるため、支払い方法も考えておく必要があります。
不動産取得税が免除される場合とは
前述したように、不動産の取得の際にかかる税金といっても、相続による取得の場合は課税の対象外となります。
その他にも免除になるケースは、以下の通りです。
・価格が10万円未満の土地の取得
・新築や増築、改築に要した費用が23万円未満
・建築以外での購入の際、要した費用が12万円未満
しかし、例外として以下の場合は「一戸の家屋取得」とみなされ、そのうえで免除のケースに該当するかが判断されます。
・土地を手に入れ、1年以内にその土地に隣接する土地を取得したとき
・家屋を手に入れ、1年以内にその家屋と一構となるべき家屋を取得したとき
軽減措置を利用して賢く納税しよう
不動産取得税は、不動産の取得時に1回のみ課税されるものであり、固定資産税や都市計画税のように毎年納税しなければならないものではありません。とはいえ、不動産取得時には不動産そのものの代金以外にもたくさんの経費がかかるため、少しでも負担を軽くできるのであればそれに越したことはありませんよね。
軽減措置の要件を満たしているかどうかの判断は、一見難しそうに見えますが、ポイントをまとめて確認すれば要点はすぐに理解できます。
本記事が税金負担の軽減の一助になれば幸いです。