「リビ充」という言葉を初めて聞く方は、何のことだかさっぱりわからないかもしれませんね。一昔前に流行った「リア充」の仲間かな?と一瞬思ってしまいますよね。
リビ充とは、「リビング充実」の略で、リビングルームの新しい使い方のスタイルです。時代とともに、住まいにおいてのリビングの役割は少しずつ形を変えてきました。リビ充はそのひとつ。
今回は、リビ充についてその魅力や機能について、詳しく見ていきましょう。
リビ充とは
多機能で、充実したリビングへ
リビ充とは、「リビング充実」の略です。リビングルームでの充実した生活を実現させる、という意味が込められています。
広々としたリビングに、これまでのリビングの使い方だけではない多機能を持たせることで充実した生活にしよう、という考えを持つ人が、近年増えているのです。
かつてリビングルームは、単に「家族がくつろぐために集まる」部屋でした。みんなで食事をし、テレビを観る。ひとつの目的を家族で共有し、それが済んだら長居はせず、それぞれが自室にこもる。そういった生活スタイルが主でした。
核家族化が進み、家の中に家族がいるにも関わらず、大体の時間はそれぞれが自分の部屋でバラバラに過ごす。それが当たり前になっていたなか、コロナ禍によって家で過ごす時間が大幅に増えました。その結果、一家団らんについて見直す人が多く出てきたのです。
リビングが「みんなでくつろぐ、時間を共有する」のではなく、「空間を共有しながら、それぞれが違うことをしている」場所になりつつあるのです。
食事やテレビの時間が終わっても、みんなリビングにいたまま、誰かはテレビを観ている、誰かは仕事をしている、本を読んでいる、ゲームをしている…
同じ空間にいて、お互いの存在を感じながらもそれぞれが好きなことをして充実した時間にしている。それが「リビ充」の考え方です。
時代に沿って形を変えていくリビング
リビ充はごく最近になって流行り始めた考え方ではありません。共働きで、家族で一緒に過ごせる時間が少なくなったことに悩み始めた家庭が増えた頃から、少しでも家族団らんの時間を持ちたいという希望がだんだん形になっていきました。
独立キッチンではなく、調理中も家族の様子が見られる「カウンターキッチン」や、家族の見守るなかで子どもたちが勉強する場所を確保する「リビング学習」の考え方も、その一環だといっていいでしょう。
また、スマートフォンやタブレット、パソコン、携帯ゲーム機の普及によって、自室にこもらなくても映画や音楽を楽しめたり、ゲームができるようになったりしました。みんながリビングにいながらにして、自分の時間も確保できるようになったのです。
その結果、リビングという空間を共有してコミュニケーションが取れて、仲良く会話をしながらでも自分の好きなことができる。そんな充実空間が可能となりました。
「リビ充」を実現するアイディア6選!
リビ充とは、「多機能なリビング空間」です。では充実したリビングにするためには、どんな機能があるといいのでしょうか?ヒントをいくつか挙げていきましょう。
①広々としたリビング
リビ充スタイルは、ひとつの部屋に家族みんなが集まるため、できればリビングは広めに、具体的には20帖以上がいいとされています。
通常であれば、リビングの隣に設ける和室や寝室とひと続きにするなどの方法でリビングを広げることはできます。しかしそれだけでなく、可動式ロフトや後述する「ヌック」という空間を利用して、リビングの床面積自体を広げるのではなく、縦方向の活用やゆるく区切られたスペースをうまく使うという工夫もできるでしょう。
開放感を演出するのであれば、インテリアにもこだわるといいですね。背の低い家具を置いて空間を広く見せるなどの視覚的効果を得ることも可能です。
②リビングを2階に設ける
最近は、階段をのぼった先の2階にリビングを設ける家も多くあります。
2階リビングのいいところは、日差しが入りやすくなり、明るく開放的な印象のリビングが作りやすいという点です。
快適なリビングが不可欠であるリビ充スタイルには、日当たりの良さは必要不可欠。2階にみんなが集まれる空間があるというのもいいですね。
③リビングにワークスペースを作る
リビングにカウンターテーブルや、ちょっとしたデスクと椅子を置いたスペースを作ると、子どもが勉強したり、作業をしたりするときに大いに役立ちます。家事の合間に腰かけて、新聞を広げてお茶を飲むのもいいですね。
④ヌックを設ける
最近注目を集めている「ヌック」という空間をご存知でしょうか?
リビングの一角や窓辺などに作られた、「ちょっと囲われた、ゆるく区切られた空間」のことで、床が一段上がっている・天井が一段下がっている、などのちょっとしたアクセントで「こぢんまり」を演出、まるで秘密基地のようになっている場所です。
大きなスペースである必要は全くなく、ひとりかふたりで「ゆるくこもれる」ような空間なので、同じリビングにいて存在を感じ合いながらも好きなことをマイペースでしていられます。
前項で「ワークスペースを」とお話しましたが、ヌックはそれをさらに多目的・多機能にしたような場所といえます。
机や椅子を置いてももちろんいいですし、ラグを敷いてごろんと寝転んでもいいでしょう。本棚を造作して読書スペース、おもちゃを置いたキッズスペース。使い方はライフスタイルに合わせて無限大です。
ヌックは、まさにリビ充を叶えるためにぴったりの要素のひとつだといえるでしょう。ぜひ詳しく調べて、導入を検討してみてくださいね。
⑤大きめのリビング収納を
家族全員が気持ちよく過ごせるリビングにするためには、まずすっきりと片付いている状態を維持しておくことが大事です。
しかし、人が集まればその分散らかるのは、ある程度仕方のないこと。特にリビ充は「自分の好きなことをしている」のがコンセプトであるため、各々の私物がリビングにたまりやすくなるということもあるでしょう。
そこでおすすめなのが、リビング収納をしっかりと設けておくということ。広々とした開放感を求めるあまり、リビングにはあまり本格的な収納を置かないという方も多いようですが、リビ充家族に関してはしっかりとリビング収納についても検討しておいた方がいいでしょう。
しまい込むような収納ではなく、さっと片付けてさっと取り出せる。そのような作りのリビング収納が理想的といえるかもしれません。
⑥アウトドアリビングにする
リビングの窓を大きくして直接庭に出られるようにしたり、そこにウッドデッキを置いたり。リビングから屋外にも空間を広げられるようにしておくと、さらに家族がそれぞれの趣味を追求していくことができるでしょう。
リビ充のメリット
家族のコミュニケーションがゆるく増える
それぞれが好きなことをしながらも、空間は共有していることで視界の中ではお互いの存在が確認できます。
干渉しすぎず、思い思いに過ごしながらもときどき会話が始まり、コミュニケーションが増えます。それぞれが自室にこもってしまっていれば生まれることのない時間が、リビ充スタイルであれば可能になるのです。
光熱費が節約できる
ちょっと現実的なメリットですが、一室に家族みんなが集まることで、エアコンや電気をつけるのはリビングだけ、という状態ができあがります。
それぞれが自室にいれば、それぞれがエアコンや電気を使うかもしれません。それが一室集中になることで、結果的に光熱費の節約にもつながります。
リビ充のデメリット
プライベート空間がない・少ない
リビ充のためにリビングを広くしすぎたり快適度を上げすぎたりすると、他の個室が必要以上に狭くなったり、なくしてしまわなければいけなくなったりします。
人によってはそれが「プライベート空間があまりにもなくなる」と感じることもあるでしょう。
私物が多い人、思春期の子どもなどは、自分だけの空間がないということでかえってストレスになってしまうことも考えられます。
いくら思い思いのことをして過ごせるリビングを作るといっても、完全にプライベート空間がなくなってしまうことにはリスクがある家族がいる場合には、注意が必要です。大人の都合だけではなく、家族全員の意見や希望をきちんと叶えられる形で、リビ充を導入することを考えなければならないでしょう。
将来のこともよく考えての検討が必要
前項で思春期の子どものプライベートについて少し触れた通り、子どもが小さいうちはリビ充スタイルが合っていたとしても、成長につれてどうなっていくかはわからないものです。いずれ個室を欲しがるということも十分ありえるでしょう。
将来のことも考えて、間仕切りや可動式の家具の設置を検討したり、リノベーションも視野に入れておいたりすることも必要といえます。
「リビ充」で家族の時間をもっと充実!
時代とともに、家族のありかたの変化とともに、住まいもどんどん形を変えていきます。リビ充のスタイルは、そのひとつの選択肢。これが唯一の正解というわけではもちろんありません。こんなリビングのスタイルを参考にして、ご自分の家庭にぴったり合った「リビング充実」の形を模索してみてくださいね。