家を買いたい、と思ったときのメインイベントとして、ほとんどの方は「内覧」を挙げるのではないでしょうか。インターネットで確認できる情報には限りがあり、実際に現地で実物を見て決めたいと思うのは、大金が動く買い物である以上、当然のことです。
では、それを売主の立場で考えたときに不安になるのは、「内覧が決め手になるなら、現在住んでいる家を居住中の状態で見てもらってもいいのだろうか」という点です。見られたくないという方もいるでしょうし、そもそも空き家でなければ家は売れないのではないか、と思っている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、居住中の家の売却について、「そもそも可能なのか」「内覧なしでも売れるのか」という点を解説していきます。
そもそも、居住中の家でも売れるのか
結論からいうと、現在住んでいても売却は可能
住替えなどを考えていて、現在住んでいる家を売却して新しい家を購入しようというとき、新居の準備ができていなければ仮住まいを用意しなければいけない、と考えますよね。「空き家にしなければ、現在の家は売れないのではないか」というイメージがあるからです。
しかし、結論からいうと実際には居住中の家でも売ることは可能です。ある調査によると、エリアにも寄りますが、売却の成約は居住中の場合が4~6割を占めています。半分前後は、空き家でなくても売れているということになるのです。
というのも、先述したように、もし居住しながらだと家が売れないというのならば、必ず新居や仮住まいを先に用意しなければならなくなり、二重ローンや仮住まいの諸経費、引越し代が余計にかかるというデメリットがたくさん出てきてしまいます。
そのため、住みながら売却活動を行うというのは、意外にも一般的ともいえるのです。
ただし、居住中の家を売る際には、メリット・デメリットやいくつかのポイントがあります。順に見ていきましょう。
居住中の住宅を売却するメリット
まずは前述した通り、余計なお金をかけずに住替えを実行できるという点です。また、新居購入の前に売却活動を行うことで、売却金額がどれくらいになるかということも把握でき、新居の購入費用の予算を立てやすくなるでしょう。
売却益が出れば、新居購入の頭金に充てることもできます。資金計画がぐっと立てやすくなる、というメリットがあるわけです。
居住中の住宅を売却するデメリット
大きな難点は、「内覧のときどうするか」という点でしょう。居住中の家の内覧時は、今まさに生活している家を、購入希望者に見てもらうことになります。家具も家電もあり、現在進行形で住人がいる状態の家は、空き家と違って生活感がどうしても濃厚に漂います。購入希望者が自分たちの新しい生活をなかなかイメージできない、というデメリットにつながることは否めないでしょう。
この「内覧をどうするか」という点が、居住中の家を売却する際の最大のポイントになるため、次項からはこの点にスポットを当てて見ていきましょう。
居住中の家の内覧時におけるポイント
基本的には売主立ち合いのもとに行われる
購入希望者が現れたら、仲介をまかされている不動産会社の担当者が売主と希望者のスケジュールを調整し、物件を訪れます。アポなしで内覧、ということはありませんが、このとき居住者である売主は基本的に立ち合いすることになります。
できるだけ購入希望者のスケジュールに合わせることが大事なので、売却活動中は売主の行動も少し制限されることがあるかもしれません。特に内覧希望は週末であることが多いと考えられるため、週末はなるべく予定を空けておく必要があるのです。この時間的拘束が、居住中の住宅を売却する際のもっとも大きなデメリットと感じる人も多いでしょう。
売主の印象も大事
物件の案内や説明も、基本的には不動産会社の担当者が行います。
しかし、できれば売主も積極的に物件の良いところを伝えたいところです。特に住人ならではの情報(日当たりや周辺環境の詳細、ご近所との関係など)は、購入希望者にとっても非常にありがたいでしょう。もちろん、求められてもいないアピールのしすぎは禁物ですし、少々答えにくい質問をされたとしても(短所や不具合についてなど)、誠実に答え、伝えることが重要です。
また、売主の印象自体も大事な点です。感じの悪い売主からよりも、感じの良い売主から買いたい、と思うのは人として当然の感情ですよね。ましてや住宅は大きな買い物です。「この人からならぜひ買いたい」と思ってもらえるような対応を心がけましょう。
家の片づけや掃除はしっかりと
購入希望者が内覧にまで至るのは、かなり購入意欲が高まっている状態まで来ているからです。「あと一押し」の決め手が、内覧といえます。
だからこそ、内覧の準備には手を抜けません。不要なものは片付け、特に水回りを中心に徹底的に掃除しておきましょう。生活感を完全になくすことは不可能ですが、できるだけそれに近い状態にするつもりで準備しましょう。
特に盲点になるのは、「におい」です。たばこやペットのにおいは、住んでいる人にはなかなか感じられないものですが、初めて訪れる、加えてその家にこれから住むかもしれないという人にとっては、敏感になる部分です。換気や消臭にもしっかり力を入れましょう。
「見ないでほしい箇所」を作らない
売主としては現在も住んでいるので、たとえば散らかった子ども部屋や、収納スペースなどは購入希望者にもあまり見てほしくない…と思うものですよね。しかし購入希望者としても、内覧ではすべての部屋をしっかり確認したいものですし、収納スペースの寸法を測りたいとも思うものです。
ですから、「そこはちょっと見ないでほしい」という空間を作らないことも重要です。隠してしまうと「何か不都合や不具合があるのかな」という、不要な誤解を招くことにもなり得るからです。繰り返しになりますが、住宅は大きな買い物です。購入希望者の立場になって、どうしたら「購入の一押し」になるかをよく考えて、内覧の準備を行わなければなりません。
内覧なしでも家を売る方法
ここまで居住中の内覧について見てきて、「やっぱり住んでいる間に他人を何度も家に上げるのは嫌だ」「なんとか内覧なしで家を売る方法はないものだろうか」と考えた方もいらっしゃるかもしれませんね。
こちらも、結論を先にいうと「内覧なしでも売却は可能」です。方法はいくつかあり、また内覧なしでの売却のデメリットももちろんあるため、それも見ていきましょう。
内覧なしで売却する方法その1「web内覧をしてもらう」
コロナ禍でかなり一般的になった方法といえるものが、web内覧です。360度パノラマカメラなどを使って、インターネットを介して実際に物件内部に入ることなく内覧してもらう方法です。
臨場感にはもちろん欠けてしまうため、購入希望者にとってはいまいち実感がつかめず、購入には至らないことももちろんありますが、webカメラの映像だけでも部屋の様子や雰囲気を感じ取って購入を決めてくれる人もいます。web内覧に対応している不動産会社があれば、相談してみるのもよいでしょう。
内覧なしで売却する方法その2「不動産会社買取を利用する」
不動産売却の際、多くの場合は不動産会社の役割は「仲介」です。不動産を売りたい人と買いたい人をマッチングし、それぞれの希望をうまくすり合わせて売買につなげるという仕事をしてくれます。
しかし、中には売主から「直接買取」を行っている不動産会社もあるのです。売主にとってのデメリットを先にいうと、直接買取では「相場よりも売却価格が安くなる」という点です。
これは、不動産会社は売主から少し低価格で物件を買い取り、リフォームをして付加価値をつけ、自社のノウハウで買主を探すというビジネススタイルを取っているからです。
売主にとってのメリットは、物件売却まで短期間で済むという点がまず挙げられます。仲介による売買であれば、購入希望者が現れるたびに内覧に時間を取られるうえ、契約が成立して売却が完了するまで数か月~半年かかることが一般的ですが、業者買取であれば非常にスピーディーに話が進み、即日売却が可能になることもあるほどです。
しかも買取の場合、内覧は売却価格を決めるために1回は必要ではありますが(不要というケースもあるほどです)、相手は一般の購入希望者ではなく業者という専門家であるため、極端な話片付けや掃除もしないありのままの状態を見てもらってもかまわない、ということが最大のメリットといえるでしょう。専門家の内覧なので、査定のポイントは根本的に「これから住むかもしれない」という購入希望者とは違うからです。
メリットとデメリットを比較して、「多少安くてもいいから早く売りたい、内覧は避けたい」という希望がある売主にとっては、この業者買取という方法も十分検討の余地があるといえるでしょう。
内覧なしで売却するデメリット
業者買取では相場よりも売却価格が安くなってしまう、というデメリットについては前述した通りですが、仲介による売買であっても、やはり内覧なしでは売却価格が下がってしまう恐れは十分に考えられます。
内覧なしで購入を決めるというのはなかなか勇気がいることであり、ほとんどの人は敬遠してしまうでしょう。ですから、内覧不可の物件を購入につなげるためには「価格が相場よりも安い」という別の決め手が必要になるのです。
また、このように内覧ができない物件はそもそも購入の候補から外す、という人が多い以上、売却に至るまで相当時間がかかることでしょう。長期戦の覚悟ができない状況であれば、これも大きなデメリットになるといえます。
内覧が負担なのであれば
内覧なしで売却する方法やそのデメリットを知って、また迷う方もいらっしゃるかもしれませんね。
もし、内覧されるのを避けたい理由が「スケジュール調整が難しい」「対応が負担」ということであれば、ひとつ解決方法があります。「不動産会社に内覧対応を全部依頼する」というものです。
この方法なら、合鍵さえ不動産会社に預けておけば、売主が不在であっても対応をお願いできます。内覧の予定に合わせて外出してしまうことも可能です。
売主の立ち合いのもとでの内覧にはメリットがたくさんあることは前述した通りですが、背に腹を替えられないのであれば、不動産会社に全部依頼してしまうことも検討してみましょう。その際には、もちろん全幅の信頼を寄せられる不動産会社を選ぶことが、第一の条件となります。
まとめ
意外にも、居住中の家でも売れる、むしろそちらの方が一般的ともいえる、ということがおわかりいただけたでしょうか。ポイントになるのは「内覧をどうするか」。これについても、自分の希望に沿っていくつかの手段から最適なものを選べます。
ストレスなく、また最善の状態で売買契約まで行きつけるよう、方法をよく検討してみるとよいでしょう。