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放置された空き家が増加した背景4つ
令和元年9月に総務省がまとめた「平成30年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」によると、2018年の空き家は848万9千戸で、2013年と比べて3.6%増加しています。また、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%と過去最高になりました。
近年、空き家に関する問題が深刻化しています。空き家問題は地域性や社会背景によって、さまざまな課題を発生させ、それぞれ対処法が異なります。
ここでは、放置された空き家が増加した背景について紹介します。
出典:「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」|総務省
- 高齢者の死亡後も家が放置されることがあるため
- 固定資産税の軽減措置があったため
- 子供が実家を継ぐことが稀になったため
- 空き家相続の結果放置されることが多いため
1:高齢者の死亡後も家が放置されることがあるため
国土交通省が調べた「令和元年空き家所有者実態調査」によると、空き家について「人が住まなくなった理由」は、「別の住宅へ転居」が 41.9%ともっとも多く、次いで持ち主の「死亡」が 40.1%でした。
高齢者が死亡し、その持ち家が空き家となって放置されるケースが約4割を占めています。持ち主の死亡後、相続人が見つからない、相続人が放置しているなど、さまざまな理由によって空き家が放置されています。
2:固定資産税の軽減措置があったため
住宅用地は課税標準の特例措置が設けられており、固定資産税が小規模住宅用地は1/6に、一般住宅用地は1/3に減免されます。
この特例措置により、家屋を解体して更地した場合、空き家のまま所有するより固定資産税が高くなります。そのため、有効利用されない空き家が増加し、放置されていたと言われています。
ただし、平成26年度に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、「特定空き家」と認定された空き家は、この固定資産税の特例措置の対象から除外されました。
3:子供が実家を継ぐことが稀になったため
前出の「令和元年空き家所有者実態調査」によると、「空き家の取得方法」は、「相続」が 54.6%ともっとも多く、次いで「新築・建て替え」、「中古住宅を購入」と続いています。
近年、日本は人口が減少しており、今後は少子高齢化が進行していくでしょう。核家族化も進むことで、子供世帯が実家を継ぐことなく、1世代で1軒の住宅を持つ状況が一般的になり、実家が空き家になっていくというケースが増えています。
4:空き家相続の結果放置されることが多いため
前述したとおり、空き家の半分以上が相続によって取得されているのが現状です。
相続人が複数いる場合、家屋解体や土地売却には相続人全員の同意が必要であるため、未交渉・未決着のまま放置されることがあります。また、空き家の相続人がすでに別の生活圏で暮らしていたり、意にそわない相続であったりして、手入れや売却手続きをしないケースもあります。
このように、相続人などの所有者が存在する場合、行政による処分ができず、長期間空き家の状態で放置されやすくなります。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」による空き家放置のリスク
空き家を放置すると、老朽化によって倒壊の危険があったり、治安が悪くなるなど、周辺地域に悪影響を及ぼす可能性があります。また、放置する期間が長いほど家屋の価値は低下するでしょう。
一方で、「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、「特定空き家」の条件が記されており、特定空き家に指定されると過料など所有者に法律上の不利益が発生します。
空き家を放置した所有者側のリスクについて解説します。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(概要)|国土交通省
- 過料の対象となるリスク
- 固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなるリスク
過料の対象となるリスク
前述した国土交通省による「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって、特定空き家の所有者は自治体から修繕や撤去の助言・指導・勧告・命令を受けることになります。
命令に違反した者は50万円以下、立入調査を拒んで妨いだものは20万円以下の過料を支払う必要があります。
さらに、修繕や撤去の指導・勧告に従わない場合は、行政が強制的に空き家を撤去する「行政代執行」に移行する場合があり、それに生じた費用は所有者に請求されることがあります。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法 第十六条|e-GOV 法令検索
固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなるリスク
前述したとおり、特定空き家に指定されて自治体から修繕・撤去などの勧告を受けると、固定資産税の特例措置(課税標準額が1/6もしくは1/3で算出される)を受けられなくなり、固定資産税は6倍もしくは3倍になります。
前段の過料や行政代執行の費用と合わせて、空き家を放置しておくことで所有者の経済的な負担のリスクは大きいと言えるでしょう。
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特定空き家と見なされる条件4つ
行政から指定される特定空き家は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」において判断されます。具体的にどのような空き家が特定空き家とみなされるのかを見ていきましょう。
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)|国土交通省
- 周囲の景観を損なう可能性のある空き家
- 衛生の問題を引き起こす可能性のある空き家
- 劣化による倒壊などの危険がある空き家
- 周囲の治安を乱す可能性がある空き家
1:周囲の景観を損なう可能性のある空き家
不適切な管理で景観を著しく損なっている空き家は、特定空き家と指定されやすくなります。
具体的には、屋根・外壁が汚物や落書きなどで大きく傷んだり、汚れている状態、窓ガラスが割れた状態、草木が建物を覆うほど繁茂した状態などを放置している空き家などを指します。
2:衛生の問題を引き起こす可能性のある空き家
衛生的に著しく有害と考えられる空き家は、特定空き家に指定されるでしょう。
たとえば、アスベストなどが飛散する可能性が高い、浄化槽の放置、破損による汚物の流出、悪臭の発生、ごみの放置や不法投棄による悪臭、および害虫・害獣の発生があるなどの状態を指します。
3:劣化による倒壊などの危険がある空き家
劣化によって倒壊などの危険性がある空き家は、特定空き家に指定される可能性があります。建物が倒壊する、屋根や外壁が脱落する、擁壁の崩落などの危険性が高いと判断された空き家です。
建築物が傾いていたり、基礎部分が破損していたり、擁壁から水がしみ出し、流出していたりすると、建物の倒壊や擁壁の崩落などの危険性が高いと判断されるでしょう。
4:周囲の治安を乱す可能性がある空き家
周辺地域の生活環境の治安が悪化するような空き家は、特定空き家に指定されやすいでしょう。
たとえば、立木の繁殖や倒壊によって敷地外に影響を及ぼしたり、動物が棲みつき、鳴き声や糞尿などの被害が発生したり、不審者が侵入したりするケースに該当します。
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空き家の過料を回避する対策方法5選
特定空き家に指定されると、行政から修繕や撤去の勧告・命令などを受けるほか、過料など経済的なダメージを伴う可能性があります。そのため、空き家の所有者は、特定空き家にしないように対策をする必要があります。
ここでは、過料などを回避するための対策を紹介します。
- 賃貸物件として貸し出す
- 売却する
- ガスや水道の契約を続けメンテナンスする
- 別荘として活用する
- 土地のみを駐車場として活用する
1:賃貸物件として貸し出す
居住用の賃貸物件として貸し出す方法があります。戸建て住宅には一定のニーズがあるため、条件によっては入居者が見つかる可能性は高いでしょう。自治体が運営する「空き家バンク」を利用することもできます。
賃貸物件として貸し出すのは、空き家の状態が良好であることやその物件を手放したくない場合に適しているでしょう。また、複数の人が住むシェアハウス、ビジネスオフィスなどシェアスペースとしての貸し出しも含めて検討すると、選択肢が増えるでしょう。
2:売却する
今後所有者が移り住む予定がない場合は、そのまま売却すると良いでしょう。
空き家は放置するほど資産価値が低下し、さらに毎年固定資産税を納める必要があります。売却するなら、できるだけ早いほうが良いでしょう。
3:ガスや水道の契約を続けメンテナンスする
いずれ所有者自身が空き家に移り住む予定があり、資産を売却したくない場合、特例空き家の指定を回避するため、適切なメンテナンスを行う必要があります。
電気やガス、水道の契約を続けて、定期的に室内の換気や通水、室内や庭の清掃、ポストの整理、外壁の確認などをしましょう。
また、遠方で所有者自身が十分に管理できない場合は、不動産会社やNPO法人などの空き家管理サービスも検討しましょう。
4:別荘として活用する
空き家が自分の生活圏からときどき訪れることが可能な距離にある、将来定住するまで管理したい、家屋が良好な状態である、もしくはリフォームできる経済的余裕がある、などの状況であれば、別荘として活用しても良いでしょう。
適切に管理し、ときどき所有者が訪れていれば、空き家と判断されにくくなります。
5:土地のみを駐車場として活用する
建築物の老朽化がひどく、所有者が移り住む予定もなければ、家屋を取り壊して駐車場として活用するのも選択肢の一つです。ただし、家屋がなければ住宅用地の特例対象ではなくなり、固定資産税が高くなります。
自治体によっては空き家の解体費用の一部が補助される場合があるため、該当する自治体に相談してみましょう。
空き家が過料対象にならないよう有効活用を検討しよう
空き家を放置すると、周辺住民の安全性や衛生、治安に悪影響を及ぼすだけでなく、所有者にも不利益があるでしょう。そして、自分の世代だけでなく、それを相続する子世代、孫世代にまで迷惑をかける可能性もあるため、できるだけ早く対策を講じましょう。
空き家を活用するためには、所有者の希望だけでなく、地域の特性に応じた用途を選定する必要があります。空き家の取得後は、過料対象とならないように有効活用できる方法を模索しましょう。
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