数年に一度の外壁塗装や屋根の塗装は、メンテナンスとしてもちろん行っておくべきだ、とはマイホームを持つ人の大多数が思っていることでしょう。しかし、外壁塗装時に「ベランダのメンテナンスも一緒に」と考えている方は、意外と少ないようです。
外壁や屋根同様に、何かあってからの補修となると、ある程度まとまった金額が必要となるため、ベランダについてもきちんと定期的に補修を行っておくことをおすすめします。
専有面積に入らない区分所有のマンションなら、ベランダの補修は必ずしもその区分所有者が行うとは限りません。しかし、マイホームの一軒家のベランダとなるとそういうわけにはいかないでしょう。
ほぼ同じ周期でやってくる外壁、屋根の塗装、ベランダの防水工事は一緒にする方がさまざまなお得があるかもしれない、今回はそんなお話です。
ベランダの塗装の種類
ベランダの塗装には、ベランダ外壁の塗装と床部分を覆う防水塗装とがあります。
ベランダ外壁塗装は、外壁材を太陽光や風雨から保護し、美しさを維持する働きがあります。一方で、床部分の防水塗装は、ベランダの床部分の水の侵入を防ぎ、床材の保護をしています。
ベランダの塗装(外壁部分)
ベランダ外壁の塗装には、一般的には建物の外壁塗装と同じ塗料を使用しますが、中には、色味を変え、全体のデザインに変化をつけるケースもあります。ただし、この際には外壁材の素材に合った塗料を使用します。
・アクリル塗料
・ウレタン塗料
・シリコン塗料
・フッ素塗料
以上のような種類があります。
アクリル塗料
アクリル塗料の1番の特色は、種類が豊富にあることです。昨今ではあまり採用されなくなりましたが、中には今でもアクリル塗料を好む方もいるようで、まだまだ需要がある商品です。
塗料の中では一番安いことで、以前は採用されることが多かったのですが、最近では他の塗料も安くなってきていることで、現場での採用が減少していると思われます。
現在普及しているシリコン塗料の約70パーセントのコストで塗装工事ができるのが最大の売りですが、寿命は短く、5年から7年とされています。劣化すると剥がれてくる、という特性を持ちます。安いけれども、メンテナンスの必要頻度は比較的高くなるでしょう。
塗り替えをする際にすでに塗膜が剥がれていたら、きれいに除去してから上塗りをしなければ仕上がりが汚くなってしまいますが、きちんと施工するとツヤが出て、目立った色合いになります。
ウレタン塗料
ウレタン塗料は、アクリル塗料に次いで安価な塗料です。耐用年数は6年から8年程度とされています。
ウレタン塗料は光沢があり、少し高級感の出る塗料です。柔らかく弾力性があるのでヒビが入りにくいのも特徴です。
よく流通している塗料なので種類も豊富で、日本だけにとどまらず、海外でも多くのウレタン塗装の種類があります。
普及品のシリコン塗料よりやや安価なのもメリットにはなるでしょう。外壁に使用するのであれば少しでも安価な方がいいといった方におすすめです。
ただし、配合成分に強い毒性を持つイソシアネートというものがあり、取り扱いに注意が必要です。
作業手順も、アクリル塗装の1液タイプとは違い、少し複雑になります。ウレタン塗料のような2液タイプの場合は硬化剤を使用するのですが、正確に攪拌しなければ硬化不良をおこしたり、硬化剤の量もしっかりと適量を入れなければ固まりにくかったりと、非常に扱いにくいものになります。
とはいえ、しっかりとした知識のある塗装業者が扱うのであれば、まず問題はありません。危険性と複雑な作業が必要になることから、もしDIYで使用するとなると、ハードルが高くなります。
シリコン塗料
シリコン塗料とは、シリコン樹脂を主成分とした塗料です。
外壁や屋根などに使われる塗料の中では、対応年数やコストから見ると総合的にバランスが良く、最も人気のある塗料のひとつです。
塗装業界でも長く使われており、信頼性も高く、「塗料に困ればシリコン塗料」といった感じでおすすめされている塗料です。
シリコン塗料の特徴としては、水に馴染む性質があるため、アクリル塗料と違い塗料の表面に汚れが付きにくい点です。チョーキング現象(手で触ると白くなる)が起きにくいという性質もあり、高温や紫外線・太陽光にも強い塗料です。
そのため、人気はありますが、アクリル塗料やウレタン塗料に比べると少し単価は上がります。
注意点としては、シリコンの塗膜は非常に硬くひび割れに弱い性質があり、そのために伸縮するものには不向きです。たとえばモルタルやコンクリートのように伸縮性があるものとは、相性が悪いとされています。
ただ、シリコン塗料は広く普及していますので、弾性のあるタイプもあります。そちらを選択することによって、伸縮性のある下地に用いてもひび割れは大幅に減少されます。
もうひとつ、あえてデメリットとして挙げるならば、選択肢が多すぎて大変だということです。
人気の塗料であるため、多岐にわたり種類が豊富なこともあり、どの塗料にするか悩んでしまう方も少なくはありません。
それと、素人が取り扱うのは非常に困難です。DIYには不向きといえます。
フッ素塗料
フッ素塗料は、主成分は合成樹脂で、その樹脂にフッ素が含まれている塗料です。
外壁塗装の主流であるウレタン塗料やアクリル塗料に比べると、高価な類です。
耐用年数は12年から15年と長く、シリコン系の塗料より結合性が強いため、太陽光や紫外線に強いとされています。
防水性にも長けていて、外壁や屋根からの水の侵入を防ぐ効果があります。親水性があり、汚れにくい性質なうえ、防カビ、防藻性もあり、日当たりが悪い湿った場所でのカビなどから守る効果もあります。
そのため、一軒家の外壁塗装というよりも、商業施設や大きなビルなどの外壁に使われることが多くなっています。
物持ちもよく優れた製品です。耐用年数が長い分ランニングコストは下がりますが、長持ちするということは、こまめにイメージチェンジをしたい人には不向きかもしれません。
一般の住宅なら外壁よりも、むしろ屋根の方にその特性が生かされてきます。屋根は太陽光や紫外線を直に受け続けています。そのせいで塗膜の劣化も速いとされていて、その劣化が原因での雨漏りが発生する事例が多いためです。
ベランダの塗装(床部分)
ベランダの床や屋上などに使用する防水塗装は、水を通さない塗料で厚塗りをして、漏水防止を目的とします。
ウレタン防水
ウレタン防水とは、マンションや一軒家のベランダ、工場の陸屋根といった平らな屋上などに塗装する方法のひとつです。
液体状のウレタン樹脂を複数回塗ることで、ウレタン樹脂の防水材が厚くし、つなぎ目のない防水層を作り出して、雨水の侵入を防ぎます。
ウレタン防水は、施工が簡単で、防水工事の中では比較的安価なものとなっています。さらに、既存の防水材がウレタンではなく他の防水材を使用していても、そのまま上から重ね塗りができるといった利点もあり、もっともポピュラーな改修用防水材として使用されています。
さらに5~6年ごとにトップコート剤を再塗装することによって、15年程度の防水効果が期待できます。
作業のしやすい液状のタイプであるため、屋上はもちろん、ベランダなど、どんな形状であっても採用されています。
デメリットとしては、人の手で作業をするため、完全には均一な膜厚にはならない点が挙げられます。
もう一点は、乾燥に時間がかかることです。その間通行できないため、人通りの多いマンションの廊下などには不向きとされています。
最後に、デザイン性がないことです。とはいえ、機能性には特に大きなデメリットはないので、迷ったらウレタン防水、といっても言い過ぎではないでしょう。
密着工法
ウレタン防水には、さまざまな工法がありますが、施工の工法として密着工法というものがあります。
ウレタン防水材を下地に直接塗った後、メッシュのような補強布をその上から貼り付け、ウレタン防水材をさらに重ね塗りする工法です。所定の厚さになるまで繰り返し、最後に上塗材で仕上げます。
工期が比較的短く、工事費用も安く抑えることができます。短期間で防水工事を行いたいといった用途には最適といえます。
しかし、下地の影響を受けやすく、下地を乾燥させるなどの処理がきちんとされていなかった場合には、防水層のひび割れなどが発生しやすくなるので、注意が必要です。
下地の乾燥を怠り、水分を含んだ状態のまま上からウレタン防水で蓋をしてしまうと、太陽熱などで蒸された水分が蒸気となり、膨張して逃げ場を失う「膨れ」と呼ばれる劣化現象も引き起こします。
すでに雨漏りしている建物や厚い保護コンクリートに覆われた屋上などは、中まで完全に乾燥させることが難しいため、密着工法より通気緩衝工法がいいでしょう。
通気緩衝工法
すでに雨水などを含んでしまっている下地に最適な工法として挙げられます。
既存の防水シートを剥がし、よく水分を切った後に、裏側に溝が空いている通気緩衡シートを貼り付けます。その上からウレタン防水材を塗布します。
初期費用は密着工法と比べて割高にはなりますが、傷みが激しく、雨漏りなどにより水分を含んでしまった下地には、最も効果的な工法です。
長年にわたって下地に浸入した水分が、やがて下地に染みこむことで雨漏りとなり、日にあたって湿気となって出ようとすれば、前述した膨れという劣化症状が発生します。
通気緩衝工法では、そのような劣化の原因となる下地に含まれた水分をシートの溝を通り道にして、脱気装置で外部に逃がすことができるのです。
湿気にさらされ続けている可能性が高い築年数が古い建物や、外気に触れにくいルーフバルコニー、陸屋根、マンションの屋上など面積が広い箇所に特におすすめといえます。
ベランダの防水の劣化サイン
新築から10年経過したもの、あるいは中古で購入して10年以上補修がされていないものは、防水工事のやり直しを。
5年ほどであれば、防水層を覆っているトップコート剤の塗り替えを、それぞれするとよいでしょう。
何事においてもメンテナンスは早めが大切です。工期にしても費用面にしても、さらにはマイホームの寿命の面でも、全てにおいて早い段階でやるに越したことはありません。
そのため、ベランダの目視できる箇所は日ごろからチェックをしておきましょう。
目視できない屋根などは、近くの高い建物から望遠鏡で確認したり、あるいは、ドローンによる空撮をしたりするなども一つの手段です。
補修が必要なサインは、以下を参考にしてください。
・表面が色あせている
・ひび割れが目視で確認できる
・雨上がり時、一部に水たまりが発生している
・コケや藻などが生えている
・室内に雨漏りが発生している
・防水層が膨らんでいる(中に水が溜まっている)
・ルーフドレンの周りにごみが詰まっている
防水を長持ちさせる秘訣
ルーフドレンの掃除
防水工事を施した屋根やベランダは、そこで受けた雨水をルーフドレンと呼ばれる排水溝に流れていくように設計されています。その排水溝がごみや落ち葉などで詰まってしまうと、雨水の逃げ場がなくなり、水が溜まってしまいます。
そこから徐々に防水層が劣化し、やがては浸水してしまうのです。
定期的にルーフドレンに詰まったごみを除去し、水の流れが滞らないようにすることで、防水の劣化は最小限に防ぐことができます。
色褪せたと感じたらトップコートを塗り替える
トップコートは、紫外線から防水層を守る役割を担っています。トップコートが劣化により剥がれてしまうと、紫外線や熱などにより、防水層に大きなダメージを与えます。
ウレタン防水は、黄色く色あせ、硬化してしまいます。そのため、雨水が侵入してしまうと膨れの原因となり、ひび割れ、またそこから雨水が侵入といった負のループになってしまいます。トップコートは5年をめどに塗り替えると劣化を防ぐ効果が持続します。
また、トップコートにも種類があり、フッ素などの塗料であれば、耐久年数も大幅に伸びて、10年が目安となるものもあります。
費用面では通常のトップコートに比べると割高にはなりますが、塗り替えの頻度や遮断効果などを加味し、光熱費の削減で考えると、総合的にはお得な場合もあります。
まとめ
今回は、ベランダの防水について深掘りしてお話ししました。
ベランダの床は地味で、しかもあまり気にかけられることがない場所ですが。人によってベランダの使い方は多種多様で、物置として利用していることも、ガーデニングをしていることもあり、本来は重要な部分のはずです。
放っておくと金銭面でも大きなダメージとなります。屋根、外壁と共に一度しっかりとチェックをしておきましょう。