空き家となった実家を放置しておく6つのリスクとは?空き家の活用方法、そもそも相続すべきかどうかも解説

解体工事

少子高齢化や地方の人口減少の影響などにより、実家が空き家になってしまうケースが年々増加しています。実家をどのように管理すればよいか考えている間にも、老朽化は進み資産価値はどんどん下がっていき、売却できるタイミングも逃してしまい、結局そのまま空き家として放置している、というケースも多く、この問題はどんどん深刻化してしまっています。

空き家となってしまった実家をどうしたらいいか、という問題に直面するのは、主に「相続」が発生したときでしょう。では、そもそも住むつもりのない実家は相続さえするべきではないのでしょうか。

今回は空き家となってしまった実家をどうしたらいいのか、放置することによるリスクにはどのようなものがあるのかなど、相続も絡めてお話していきます。

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実家が空き家になったら?維持するのにかかる費用や活用方法を紹介
実家が空き家になった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。本記事では、実家を空き家にしておくメリットとデメリット、空き家になった実家を維持するのにかかる費用や空き家になった実家の活用方法などを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

実家を空き家のまま放置しておく6つのリスクとは

実家を空き家として放っておくと、さまざまな困りごとが発生します。まずはどのようなリスクが生じうるのか、把握しておきましょう。

1:「特定空家」に指定されてしまう恐れがある
2:近隣住民に大きな迷惑がかかる
3:経済的負担がかかる
4:老朽化が急速に進んで売却が不可能になる
5:税制面の優遇措置が受けられなくなる恐れがある
6:自分の子孫に負の財産を残すことになる

1:「特定空家」に指定されてしまう恐れがある

「特定空家」とは、そのまま放置したときに倒壊する恐れがある状態、衛生上問題があるとされる状態、景観に極端な悪影響を及ぼしている状態など、放置することが不適切である空き家のことです。

この特定空家は「空家対策特別措置法」に基づいて、自治体から指定されてしまうものです。特定空家とされてしまうと、行政から助言や指導が入り、それに従わなければ勧告・命令という手順を踏んで、最終的に強制解体されてしまうこともあります。もちろん、強制解体といっても解体費用は所有者に請求されます。さらに、指導に従わないと50万円以下の過料が科せられることもあるのです。

また、もっとも大きなデメリットは、特定空家は固定資産税や都市計画税の軽減措置の対象にならないため、これらの税負担が非常に大きくなってしまうという危険をはらんでいる点です。

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法 第一条|e-Gov法令検索

2:近隣住民に大きな迷惑がかかる

人が住んでいない空き家は、老朽化が加速するものです。壁が崩れ落ちたり、塀が倒れたり、倒壊してしまったりする恐れまで出てきます。万が一それで近隣の住民や通行人に被害があれば、責任は空き家の持ち主です。

また、管理されないことで野生動物や害虫、さらには犯罪者が棲みついてしまう可能性もあります。不法投棄や放火のターゲットになることも考えられるでしょう。そうなると衛生面・景観面・治安面においても近隣住民に多大な迷惑をかけてしまいます。

3:経済的負担がかかる

実家を相続した際、すでに自分の住まいを持っていれば、実家には当然住まないわけですが、家というものは住んでいなくても固定資産税が課税されます。

自分の住まいの固定資産税に加え、空き家の固定資産税も、ということになるのは、かなり負担が大きくなるでしょう。さらに前述した特定空家に指定されようものなら、増額した税額を払うことになるため、負担はさらに増してしまいます。

また、経済的負担は税金面におけるものだけではありません。火災保険料や光熱費の基本料金もかかり続けますし、維持管理のための費用も大きくなります。

前述したように、空き家は放置しておくことによって、近隣住民に対してもさまざまな危険をおよぼす要因を多く含んでいます。こうしたことを回避するためには、維持管理の手間や金銭的負担が発生するのです。

定期的に空き家に通い、換気や掃除を行い、庭の草むしりを行うなど、治安や衛生上問題のないように保つのは、もし現在住んでいるところと空き家になった実家との距離が大きければ大きいほど、負担は増大していくでしょう。

4:老朽化が急速に進んで売却が不可能になる

何度か触れた通り、人が住んでいない家屋というものは急速に劣化が進むものです。掃除がされずチリやホコリがたまると、それをエサにする害虫や害獣が棲みつき、また定期的に換気が行われないと湿気がたまってしまって、木材の腐食が進行します。

つまり、維持管理がなされない空き家というものは、人が住んでいる家屋と比べて老朽化のスピードが非常に速くなってしまうのです。

老朽化が著しく進行した空き家は、資産価値がほとんどなくなってしまいます。ずっと放置していていざ売却しよう、と思い立っても、そのときには買い手がつくような状態ではない、ということも十分考えられるのです。

5:税制面の優遇措置が受けられなくなる恐れがある

空き家状態の実家を放置していると、「譲渡所得税」といって、空き家を売却した際に得た利益にかかる所得税に対しての優遇措置が受けられなくなる可能性が出てきます。

〇「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

譲渡所得税を計算する際に「相続税額の一部」を差し引けるようになる制度です。譲渡所得税額を抑えることができるのですが、利用するには「相続発生から3年10か月以内に売却する」ことが条件となっています。つまり、それ以上の期間、空き家のまま放置していると、この特例は使えなくなってしまいます。

〇被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

通称「空き家特例」といって、相続した居住用財産を売却した際に、いくつかの条件を満たすことで、譲渡所得税の計算過程で3,000万円を控除できる制度です。

こちらも「相続発生から3年以内に売却する」ことが条件なので、やはり売却活動もせずこの期間が過ぎてしまうと利用できなくなってしまいます。

6:自分の子孫に負の財産を残すことになる

いま現在、自分の親の残した実家に対してどのような対応をしたらよいかと頭を悩まされているのであれば、もしこれを放置してしまえば、自分の子や孫の世代にも同じ苦労をかけることになります

相続は、さまざまな手続きを怠ると世代を経るにつれどんどん複雑で大変なものになっていきます。リスクや面倒を自分の代で終わらせるためにも、ここでしっかりと向き合う必要があるといえるでしょう。

空き家となった実家は「住む」「売る」「貸す」「活用する」「相続放棄する」

空き家となってしまった実家は、そのまま放置しては多くのリスクがあるということがわかりました。では、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。方法は大きく分けて5つあります。

注意点としては、どの方法を取るにしても「相続開始を知ってから3か月以内」に方針を決めるべきである、という点です。というのも、「6:相続放棄する」にはこの期限内に手続きを行わなければいけないからです。

1:自分で住む
2:売却する
3:人に貸す
4:更地にして活用する
5:無償で譲渡する
6:相続放棄する(そもそも相続しない)

1:自分で住む

相続人のうちの誰かが、そのまま住むという方法です。もっともシンプルな手段であり、空き家とならずに実家を有効に使えます。

実家の住宅ローンが完済さえしていれば、家賃などの費用面でもかなり助けになるうえ、親とともに過ごした思い入れのある実家をそのまま維持できるというメリットもあります。また、このように相続した住宅にそのまま居住するような場合は、「小規模宅地等の特例」というものが利用できるため、相続税を大幅に抑えることもできます。

デメリットは、まず実家の老朽化の具合によってはその後の居住が難しくなる可能性がある点です。建物自体の劣化はもちろん、間取りや設備が現在の生活様式に合わないことも考えられるでしょう。リフォームをしてまで住む価値があるかという点に関しては、立地や周辺環境なども加味して検討しなければなりません。

また、相続人が複数いる場合、実家を相続した相続人がほかの相続人に対して、その代償分の財産を渡さなければならない可能性も出てきます。十分な現金資産などが手元にないと、実家を売却するしかない状況になってしまうこともあるでしょう。

2:売却する

実家を相続しても相続税を払えるほどの現金資産などがない場合は、売却を検討することになります。空き家となった実家に資産価値があれば、その売却で得た利益で相続税を納めたり、相続人全員で分配したりすることが可能になります。したがって、実家を相続した人とそうでない相続人との間で余計なトラブルが起きることを防ぐ方法ともなります。

当面住む予定のある相続人がおらず、活用方法も見いだせないということであれば、空き家として放置することで資産価値がどんどん下がってしまう前に、売却することを視野に入れるのがよいでしょう。

デメリットとしては、思い入れのある実家を手放すことに精神的なつらさを感じる可能性があることでしょう。また、そもそも売れない恐れも十分考えられます。すでに資産価値がほとんどなく、立地や周辺環境によって買い手が見つかりそうにない物件となってしまっていることもあるからです。

空き家の売却方法としては、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」が一般的ですが、会社によっては直接「買取」をしてくれるところもあります。相場よりは安価な売却価格となってしまいますが、早めに売ってしまいたいときにはこの手段も有効です。

さらに、自治体が運営する「空き家バンク」に登録してもよいでしょう。空き家を売りたい人と買いたい人、または貸したい人と借りたい人をマッチングしてくれる制度です。ただ、空き家バンクは買い手や借り手が現れた際に、すべて自分で対応や手続きを行わなければならないため、不動産業者に仲介を依頼する場合と比べると、少しハードルが高いと感じられるかもしれません。

3:人に貸す

住む予定のある相続人がおらず、売却もしたくない。そのような場合は、賃貸住宅として人に貸すという方法も考えられます。家賃収入を得られるうえ、誰か人が住んでくれることで実家を維持できるというメリットがあります。

ただ、これはなかなか現実的ではない方法だともいわれています。人に貸すからにはある程度きれいに保ち、設備を整え、入居者にとって魅力的だと思われる物件にしなければならず、そのためのリフォーム費用などもかかるからです。また、立地によっては売却同様、借り手がつかないこともあるでしょう。賃貸経営の素人が中途半端に始めると、思わぬ損害を被る可能性が大きいものです。

賃貸物件や民泊として貸し出す、という手段を検討する際には、ほかの手段以上に十分な検討と準備が必要になることを覚えておきましょう。

4:更地にして活用する

家屋は人に貸せるような状態ではない、という場合には、建物を解体して更地にし、それを活用するという方法もあります。

たとえば、駐車場やトランクルームとしての活用です。家屋を残したままの賃貸経営よりはハードルが低く、それでいて土地利用によっての収入が得られる点がメリットといえます。

ただしこちらも立地条件などによっては、集客が難しいこともあるでしょう。さらに更地にすることで固定資産税や都市計画税の軽減措置が受けられなくなるため、これらの税金の負担が増すことも、デメリットとして挙げられます。

また、「更地にしてから売却する」という手段もあります。古くて資産価値のない建物があるよりも、新築物件を建てるために土地を探している買い手に焦点を絞ることで、家屋がある状態よりも売却しやすくなる可能性がある一方で、建物を解体するためのまとまった費用を先に用意しなければいけない、というデメリットにも注意が必要です。

更地にしたのになかなか買い手がつかない、という状態になると、前述したように軽減措置がなくなった固定資産税や都市計画税を支払わなければならないという事態にもつながります。

更地にする際には、事前に十分な検討が必要です。

5:無償で譲渡する

どうしても売れない場合には、「無償で譲渡する」という手段もあります。

たとえば、「自治体に寄付する」。もちろんすべての空き家の寄付を受け付けているわけではなく、利用価値のある建物や土地でなければ、自治体も受け取ってはくれません。まずは相談してみるところから始めましょう。

「隣家に贈与する」。隣の土地が手に入ることにより、自分の土地が広くなるというメリットがあるため、意外にもらい手がつきやすい方法です。ただし、個人間の贈与となると受け取った側に贈与税の申告・納付義務が発生するため、その点にはあらかじめ注意が必要です。

それから「相続土地国庫帰属制度の適用を検討する」。この制度は2023年4月から開始されていて、一定の条件(建物は解体していなければならないなど)を満たしていれば国庫に帰属させられる、要するに国に「もらってもらえる」というものです。費用はかかりますが、どうしても不要な土地を持て余してしまうのであれば、この手段も有効であるといえます。

6:相続放棄する

相続放棄とは「そもそも初めから相続人ではなかった・相続権は持っていなかった」として扱われるもので、法的に相続人ではなくなるための手続きです。

つまり、住む予定のない実家を「初めから相続しない」ということにしてしまうのです。ただ相続放棄の注意点としては、「実家だけを相続放棄する」ということができないという点です。放棄するのであれば、相続予定だったすべて財産(借金などのマイナスの財産も含む)を受け取らないということになるので、本当に相続放棄すべきかはよく考えてから選択するべきでしょう。

また、自分が相続放棄することで相続順位が移り、もともと相続人ではなかった人に相続権が発生することがあります。マイナスの財産や税負担などが移ることで、トラブルになる可能性も出てくるため、ここも慎重に判断しなければなりません。

☆相続放棄しても「管理義務」は残る?

実は、2023年3月までは、たとえば「相続人が1人だけである」「相続人が全員相続放棄した」という場合、相続放棄をしても空き家などの管理義務責任は残ってしまう、というケースがありました。「相続財産管理人」を選任することで、管理義務責任をようやく免れることができたのですが、それもそれで非常に手間であり、制度が見直しされることとなったのです。

2023年4月の民法改正で見直されたのは、以下のような点です。

〇「管理義務」を「保存義務」という呼称に変更
〇「相続財産管理人」を「相続財産清算人」という呼称に変更
〇「現に占有している者に限り、相続放棄後の管理義務を負う」ことに変更

「現に占有している」とは、被相続人が亡くなるまで同居していたり、現在も住んでいたり、と「実際に支配・管理している」状態を指します。

つまり、たとえば遠く離れて暮らしていた親が亡くなり、その実家が空き家になった場合、子どもは「現に占有している」とは言えない状況であるため、保存義務(管理義務)は免れる、ということになるのです。

相続の手続きの流れ

上記で紹介したような、空き家となった実家をどう扱うかという方法は、どれを取るにしてもまずは「相続の手続きを行って相続登記をする」という過程が必要です。

なぜなら、所有者が被相続人(故人)のままだと、売却も賃貸もできず、その後のさまざまな手続きにも支障をきたすからです。

では、相続の手続きとは具体的にどのように進めていくのでしょうか。

1:相続人を調査する

被相続人の財産を相続する権利のある人たちは何人いて、誰なのかということをまずはっきりさせます。

2:財産内容を調査する

被相続人の財産の種類・内容・総額を調査し、確定させます。

預貯金などの現金は比較的わかりやすいのですが、不動産や有価証券、またゴルフ会員権や自動車といったものも財産に含まれ、調査時にわかりづらいこともあります。

また、借金や住宅ローンなどの「マイナスの財産」も相続の対象になるため、こちらも確認しておきます。

3:遺言書を確認する

被相続人が遺言書をのこしていないか確認します。遺言書がなければ法定相続分にしたがって分配しますが、遺言書がある場合はその内容に沿って分配するからです。

公正証書遺言書であれば、公証役場で検索することで見つけられますが、自筆証書遺言書である場合は自宅のどこかに保管されている可能性があります。

4:相続放棄

財産内訳や遺言書の内容を確認し、もし相続放棄を選択するのであれば、「相続を知った日から3か月以内」に手続きをしなければなりません。期限があるため、ここまでの手順は早めに踏んでおくことが重要です。

5:遺産分割協議

相続人全員で、財産をどのように分配するかを協議します。遺言書がある場合はその通りに分配する、法定相続分通りで分配する、といった場合は、必ずしも協議を行わなくてもよいのですが、のちのちのトラブル防止のためにもその旨を記した遺産分割協議書を作成しておくと安心です。

6:相続登記・名義変更

相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人に変更することです。これを行ってはじめて不動産の所有権が相続人に移り、売却などが可能になります。

これまでは相続登記に特に期限はありませんでしたが、2024年4月からは義務化されているため、必ず行わなければならないものとなりました。

期限がなかったとしても、繰り返しになりますが、相続登記を行わなければ不動産の処遇を決めることはできないため、早めに進めておくことが大事です。

不動産以外の財産についても、預貯金口座などの名義変更を行います。遺産分割協議書にまとめた配分通りに財産を分配し、相続人がそれぞれ名義変更を行うとよいでしょう。

7:相続税の申告・納付

相続税が発生する場合は、「相続を知った日から10か月以内」が申告・納付の期限となります。

実家を放置したままにしないためには?

ここまで見てきたように、空き家となった実家を放置することにはさまざまなデメリットがつきまといます。そのような事態に陥らないためには、どうすればよいのでしょうか。

被相続人の生前の内から実家の処遇を決める

相続が発生してから「実家をどうするか」と決めるのが大変なのであれば、被相続人(親)の生前の内から実家を売却するなどの方針を、家族で話し合っておくのがよいでしょう。

空き家となる前に売却すれば、分割が大変な不動産ではなく「現金」としての財産になるため、相続人同士で分配するのが容易になるというメリットもあります。

もちろん、その場合は親の今後の住まいをどうするかということも考えなければなりません。親本人はもちろん、相続人となる子どもとしても、さまざまな選択肢を考慮して検討しなければならないでしょう。

早めの方針決定を心がける

相続という局面では、ただでさえ面倒や手間が多く起こります。まして空き家となってしまった不動産を扱うとなると、相続の方針を決めるのが遅くなればなるほど相続人たちの負担が増えていってしまうでしょう。

「空き家をどうするか」ということにはさまざまな選択肢がありますが、どれを選ぶにせよ、それぞれのメリット・デメリットを理解して、とにかく早めの方針決定を目指すのがよいでしょう。

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実家を空き家として放置することにはさまざまなリスクがある

実家を空き家として放置しておくと、コスト面や安全面などでいろいろなリスクがあります。面倒だからと放置しておくと、リスクは増すばかりです。

活用するのか、処分するのか。どのような方針をとるにしても、メリットとデメリットの両方の側面があります。事前に被相続人も含めた家族全員で、実家の管理について話し合って、将来どうするべきか早いタイミングで決めておくのがよいといえるでしょう。

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