浄化槽は、自然環境を安全に維持するために重要な役割を持っています。解体工事をする際には、全撤去や埋め戻しなど、撤去方法によって費用が変わってきます。汚水処理などに関しても注意すべき点がいくつかあるため、順番に見ていきましょう。
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浄化槽とは?
浄化槽とは、トイレや風呂、台所などの生活排水を浄化するために使用する装置のことです。
生活排水はいずれ河川に放流されるため、自然環境を維持するためには事前に浄化する必要があります。浄化槽はさまざまな種類の微生物を利用し、生活用水に含まれる汚れを分解して再びきれいな水へと生まれ変わらせる役目を持っているのです。
浄化槽を設置・使用・撤去するには、浄化槽法のルールに従わなければなりません。
浄化槽法は、浄化槽の設置の仕方や管理方法、掃除や製造についての規制などが定められているものです。
浄化槽の所有者や使用者が担う義務も決められているため、所有者および使用者は、浄化槽法を把握しておくことが必要です。
浄化槽の種類
浄化槽の種類は、主に「単独浄化槽」と「合併処理浄化槽」の2つがあり、それぞれ浄化対象となる生活用水や処理能力が異なります。
処理能力は単独浄化槽よりも合併浄化槽の方が高く、より自然に近い状態で河川に戻すことが可能です。
ここからは、単独浄化槽と合併処理浄化槽の概要を詳しく紹介していきます。
浄化槽の種類1:単独処理浄化槽
「単独処理浄化槽」はトイレの汚水を対象にした浄化槽です。
浄化できるのはトイレの汚水に限定されているので、「みなし浄化槽」と呼ばれることもあります。
しかし、時代の流れとともに、河川や海を汚す原因はトイレの汚水だけでなく、他の生活用水も多くなりました。その結果、トイレの汚水のみを処理する単独浄化槽の需要は薄れ、浄化槽法の改正によって2001年4月1日からは製造や販売が禁止されています。
単独浄化槽の新設は物理的に困難になり、現在設置されているものも合併処理浄化槽への切り替えが求められています。
浄化槽の種類2:合併処理浄化槽
トイレの汚水のみを処理する単独浄化槽に対し、合併処理浄化槽はお風呂やキッチンといったさまざまな場所から排出される生活用水の処理が可能です。
浄化槽法が改正されて以降は、合併処理浄化槽しか新設できなくなったため、現在は一般的な浄化槽として普及しています。
単独浄化槽に比べて処理能力が高く、生活用水の汚れを10分の1程度に減らすことが可能です。
ただし、単独から合併処理に交換する場合は費用がかかるため、現在の合併処理の普及率は40%程度にとどまっています。
浄化槽の撤去方法3選
浄化槽を撤去する方法には、埋め戻し・埋め殺し・全撤去の3種類があります。
一度設置すると定期的なメンテナンスが必要なので、多くの場合、下水道に切り替える際や建物を解体する際に撤去されます。
ここでは、浄化槽の撤去方法を詳しく見ていきましょう。
①埋め戻し
「埋め戻し」とは、本体の3分の1にあたる部分を解体して、残りの部分は地中に埋めてしまう撤去方法です。
作業の際には浄化槽内にある汚水はもちろんのこと、不要な部材や装置も取り除かれます。全撤去に比べるとコストを抑えやすく、作業がしやすい点がメリットです。しかし、本体の一部は地中に残ったままになるので、一時的な解決策にしかなりません。
また、土地を売却する際には全撤去が必要なので、コストも作業も二度手間になってしまいます。万が一汚水を残したまま地中に埋めた場合は、不法投棄と見なされる可能性があるので注意が必要です。
②埋め殺し(砂埋め)
「埋め殺し」とは、埋め戻しや全撤去と同様に浄化槽内にある汚水は取り除きますが、部材や装置はそのまま地中に埋めてしまう撤去方法です。
埋め戻しよりもさらに作業量が少なくコストが抑えられる一方で、本体がそのまま地中に残ったままになるので、将来的に土地を売却する場合は、埋め戻しと同様に全撤去が必要です。
また、汚水を残したまま地中に埋めた場合は、こちらも埋め戻しと同様、不法投棄と判断される可能性があるので注意しましょう。
③全撤去
「全撤去」とは、浄化槽内にある汚水はもちろんのこと、部材や装置といったすべてを撤去する方法です。
汚水や本体の一部が地中に残らないため、埋め戻しや埋め殺しのように不法投棄と見なされる心配はなく、撤去後はいつでも土地の売却が可能になります。
必然的に作業量が増えるため、埋め戻しや埋め殺しに比べてコストは高くなりますが、将来的に土地の売却を検討している場合は、多少コストがかかっても全撤去しておくと安心でしょう。
浄化槽の解体・撤去の手順
①浄化槽を清掃
浄化槽の解体や撤去をする前に、浄化槽内の汚泥の引き抜き・洗浄・消毒などの清掃を行います。適切に清掃しないまま浄化槽を処分し、汚泥などを地中に埋めたり浸透させたりすることは不法投棄となるため注意しましょう。
基本的に、自治体の許可を受けた浄化槽清掃業者に依頼します。
②浄化槽の撤去工事
清掃が完了したら、浄化槽の撤去工事を行います。
③浄化槽使用廃止届書を出す
浄化槽の撤去完了後は、30日以内に浄化槽使用廃止届出書を提出しなければなりません。届出をしなかった場合は、浄化槽法違反となり5万円以下の過料が科せられるので注意が必要です。
なお、届出の様式等は各自治体によって異なるため、公式HPなどでしっかり確認するようにしましょう。
浄化槽の解体・撤去にかかる費用
浄化槽を解体・撤去する際には、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。補助金制度も併せて、確認しておきましょう。
費用相場1:建物と浄化槽を同時に解体する場合
家屋など、浄化槽を設置している建物を解体する際に同時に浄化槽を解体・撤去するのであれば、「建物の解体工事と併せて依頼すること」「浄化槽の消毒や掃除が完了していること」を前提として、費用の目安は建物の解体費用プラス3~6万円が相場になります。
建物の解体と同時に行う場合の費用を正確に知りたいならば、解体業者に見積もりを依頼するのがおすすめです。浄化槽がどこに設置されているのか把握していない場合も、その旨を伝えておく方が、安全に工事を進められます。
費用相場2:浄化槽のみ解体する場合
浄化槽を単独で解体する場合は、建物と同時に行う場合より高額になるのが一般的です。費用相場は、約5~10万円と考えておきましょう。
建物の解体とセットであれば、業者側の費用対効果があるため、割安になります。しかし、単独で行うと現場周りや地中の調査など、それだけに時間とコストを費やすので、割高になってしまうのです。
浄化槽解体の費用に関する注意点4選
①浄化槽のサイズが費用に影響する
設置する浄化槽の大きさは、家屋の延床面積に応じて規定されています。
- 130㎡以下の延床面積【5人槽】
- 130㎡を超える延床面積【7人槽】
- 2世帯住宅の場合【10人槽】
一般家庭の場合は、5人槽または7人槽、2世帯住宅の場合は10人槽が多く使用されています。
費用相場は、大きさに比例して当然高くなっていくことも覚えておきましょう。
②清掃や消毒には別途費用がかかる
解体や撤去をする前に、清掃や消毒を行う必要があります。全撤去する場合はそれほど重要な作業ではありませんが、埋め戻しあるいは埋め殺しで処理をする場合は必須です。
清掃や消毒を怠り汚物を放置しておくと不法投棄とみなされ、後で大きなトラブルになる可能性があります。
清掃と消毒の費用相場は3万円程度であり、浄化槽本体の解体や撤去費用とは別にかかることを、認識しておきましょう。
③汚物詰まりは追加料金が発生することもある
浄化槽内に汚物詰まりがある場合は、バキューム清掃が必要になるため、1万5千~3万円程度の追加料金が発生することもあります。
④費用を抑えるには…補助金制度も活用しよう
撤去する浄化槽が単独浄化槽の場合、補助金を設けている自治体もあります。
浄化水法の改正によって2001年4月1日からは単独浄化槽の製造や販売が禁止され、合併処理浄化槽への切り替えが推奨されています。そのため、単独浄化槽からの切り替えまたは下水道に切り替える場合は補助金の対象となります。
補助金が支給される要件や金額は自治体によって異なりますが、栃木県大田原市の場合は33万2千円~54万8千円までが補助されます。
ただし、補助金を利用するためには各自治体が設けている要件を満たしたうえで、書類の提出が必要です。予算がなくなり次第補助金の支給を終了する場合も多いため、早めに手続きすることをおすすめします。
撤去費用を抑えるためにも、まずは自治体の窓口や公式サイトなどで補助金が設けられているかどうかを確認してみましょう。
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浄化槽を解体・撤去する際の注意点
解体および撤去をする際に、注意する点がいくつかあります。費用を抑えることだけに意識を向けてしまうと、後でトラブルになりかねません。ここでは、注意しておくべきポイントを解説します。
①汚水の処理は施主の責任
浄化槽の撤去作業は専門業者に依頼するのが一般的ですが、汚水が適切に処理されていなかった場合は家主の責任になるので注意しましょう。
汚水が適切に処理されないまま撤去作業が行われると、地下に流れ込んで、やがて河川の汚染に繋がりかねません。
トラブルを未然に防ぐためには、汚水を取り除くとともに清掃や消毒が適切に行われているかを専門業者に確認することが大切です。
②浄化槽廃止届出書を提出する
浄化槽の撤去後は、都道府県知事に対して浄化槽廃止届出書を提出しましょう。
浄化槽廃止届出書の提出は浄化槽法で定められており、撤去工事の完了日から30日以内の提出が必要です。
様式は各都道府県の窓口でも受け取れますが、公式サイトからダウンロードできるケースも多くあります。
提出期限があるため、撤去工事完了後は速やかに浄化槽廃止届出書を提出しましょう。
出典:浄化槽法
③埋め殺しや放置は違法になる場合がある
前述したように、浄化槽の撤去方法のうち、部材や装置をそのまま地中に埋めてしまう「埋め殺し」は、不法投棄と見なされて違法になる可能性があるので注意しましょう。
埋め殺しは全撤去よりも費用が抑えられるというメリットがありますが、そもそも埋め殺しは「一時的な対処法」にしかならないものです。
いずれ土地を売却する際には全撤去が必要であり、また長い期間放置すると行政指導が入り、勧告に従わない場合は不法投棄と見なされて罰金が科せられることもあります。
浄化槽の解体・撤去の費用は工事方法によって異なる
浄化槽の種類や解体および撤去費用などを、詳しく解説してきました。現在は合併処理タイプのものを設置することが、法で定められています。
古い浄化槽を解体および撤去する場合は、いくつかの方法から選ぶことができ、その方法によって費用も異なることがポイントです。本記事を参考にして、状況に合った適切な撤去方法を選択してください。
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