解体工事で使用する重機の種類についてまとめました。解体工事で使用される重機は、解体する建物の大きさや構造などによっても異なり、さまざまな種類のものがあります。ある程度カテゴリーに分けて解説していき、重機だけではなくアタッチメントの種類にも触れていきます。
また、道路幅などが狭くて重機が解体工事現場に入れないときの対処法や、重機を扱うのに必要な免許・資格についても紹介しますので、参考にしてください。
解体工事で使われる重機の構造
解体工事現場では、主に「油圧ショベル」という重機が使われています。油圧ショベルの構造は主に3つの部位から成っています。
ベースマシン(本体)
自動車でいえば「車体」にあたり、まさに重機の中心といえる部分です。「上部旋回体」には運転席があり、操作パネルや運転レバーが設置されていて、その下には移動するための「下部走行体」があります。
アーム・ブーム(作業装置)
人間の体でいうとアームは肘から手首前、ブームは肩から肘までとイメージするとわかりやすでしょう。オペレーターが運転席で操作をすることで曲げたり伸ばしたりしながら、作業箇所までアタッチメント(次項で説明)が届くように動かします。
アタッチメント(作業具)
こちらは人間の体でいうと手首から先、特に指先の部分です。オペレーターの操作によって目的に応じた細かい動きが可能となっています。また、さまざまなアタッチメントをアームに付け替えることによって、切断・粉砕・運搬・分別など多種の作業ができるようになります。
解体工事の重機(油圧ショベル)のサイズ
解体工事に使用される重機は「油圧ショベル」と呼ばれ、サイズが豊富に展開されています。解体を行なう建物の大きさや立地条件によって、使用する油圧ショベルのサイズは変わってきます。
ここでは、解体工事に使用する重機のサイズについて紹介します。
ミニサイズ
解体工事に使用されている重機の中で最も小さいとされるのが、ミニサイズです。油圧ショベルの中で0.1が小さいサイズと言われていますが、0.1のサイズよりも小さいのが特徴です。
解体をする建物前の道路幅、入口付近が狭く大型重機が入れない場合は、ミニサイズを使用することで解体がスムーズに行なえます。小回りが利いて、メーカーによっては後方を気にすることなく旋回できるタイプもあります。多彩な現場で活躍するサイズ感なので、使い勝手が良いといえます。
全幅 | 約1m |
---|---|
全長 | 約4m |
0.1㎥サイズ
コンマイチと呼ばれる0.1㎥サイズは、ミニサイズの次に小さい重機です。ミニサイズ同様に狭い現場で活躍し、大きな重機の侵入が難しい場所に適しています。通称「ミニユンボ」と呼ばれる重機になり、重宝するサイズ感として多くの業者が所持しています。
ミニサイズとコンマイチを所持していない業者の場合、狭い現場は手作業になることもあります。ミニサイズに比べると大きさは少しの差になるので、どちらも小回りが利く優秀な重機といえます。
0.15㎥サイズ
コンマイチゴーと呼ばれる0.15㎥サイズは、スタンダードな油圧ショベルよりも少し小さいサイズです。コンマイチよりも全長が大きく、使い勝手も良い重機です。4トントラックに乗せて走ることもできるとされています。
そのため、現場付近の道路で4トントラックまでしか走れない場合、コンマイチゴーを使用することが多いです。スタンダードな油圧ショベルよりも小回りが利くので、作業がしやすいというメリットもあります。
0.2㎥サイズ
コンマニと呼ばれる0.2㎥サイズも、ここまで紹介したコンマイチやコンマイチゴーと同様に小さいサイズ感が特徴です。小回りも利きますし、使い勝手が良いでしょう。コンマニは、主に木造住宅の解体工事で使用されることが多いタイプです。
0.25㎥サイズ
コンマニーゴーは解体作業時に一番多く使用されている重機で、スタンダードなサイズです。コンマニと全幅がそこまで変わらないですが、全長はコンマニよりも長いためコンマニーゴーの方が購入する業者が多いです。
コンマニ同様に木造住宅の解体工事に向いています。ただし、コンマニーゴーの移動には大きめのトラックが必要です。そのため、狭い道路幅や近隣の家が密集している場所の解体には不向きです。
0.45㎥サイズ
コンマヨンゴーと呼ばれる0.45㎥サイズは、やや大ぶりなサイズ感の重機です。全幅もコンマニーゴーと比較すると、1m以上も大きいのが特徴です。
一般的な木造住宅の解体でコンマヨンゴーは使用しません。アパートや工場などの解体に使用されるのが一般的です。パワーの必要な、鉄筋コンクリート造などの建物の解体で活躍します。
0.7㎥サイズ
コンマナナと呼ばれる0.7㎥サイズは、解体工事に使用される油圧ショベルの中では最大の大きさともいわれています。全長は10mほどなので、高さのある建物の解体にも活躍します。
コンマヨンゴーと同様に一般的な木造住宅の解体には使用されず、主にアパートや工場といった鉄筋コンクリート造や鉄骨造の解体で使用します。
コンマナナは重機自体の大きさがあるので、解体現場の立地条件のハードルが少々高いです。場所を確保できないと、コンマナナの使用は難しいでしょう。
大型解体工事で使う重機の種類
油圧ショベルの中には、大型の解体工事に使用する重機も存在しています。コンマナナ以上の大きさの重機になり、大型のビルやマンションなど階数のある建物を取り壊すのに使用されます。
大型の重機には、どのような種類があるのか紹介します。
ロングアーム
ロングアームは名前の通り、アームが長いタイプの重機です。従来の油圧ショベルよりもアームが長いことで、高さのある建物の解体に活躍します。
呼び方として「ロングブーム」や「ロングリーチ」、「スーパーロングリーチ」と呼ばれることもあります。
ツーピースアーム
ツーピースアームはアーム部分が通常の油圧ショベルよりも一つ多く、その分高さが出せます。別名「ツーピースブーム」とも呼ばれています。
ロングアームよりも高い場所の解体が可能で、15mほどの高さまで伸ばせます。ツーピースアームが届く建物の高さとして、5階建て程度であれば十分に解体ができるでしょう。
マルチブーム
マルチブームは別名「ロングフロント」とも呼ばれ、ツーピースアームでは届かない建物の解体に使用されます。アームの接合部分が複数箇所あり、腕を伸ばすことが可能です。腕を伸ばすことにより40~50mほどの高さまで届き、10~17階建ての高層ビルなど高い建物の解体に活躍します。
また、マルチブームはアタッチメントを変えることで、さまざまな役割を果たします。ハサミ状のものから油圧ブレーカー、クラッシャーなど用途に合わせてアタッチメントを変えて使用してください。
解体重機のアタッチメントの名前
解体重機に使用される油圧ショベルは、アームの先端にあるアタッチメントを変えられます。アタッチメントを変えることで、さまざまな用途に使用ができるのがメリットです。多種多様のアタッチメントがあり、作業・仕事の幅を広げることが可能です。
油圧ショベルに使用できるアタッチメントには、どのような種類があるのかを紹介します。どのような用途に使用するのかも解説するので、参考にしてください。
カッター
カッターはペンチのような構造が取り入れられており、挟むタイプのアタッチメントです。ハサミのような刃が付いているので、鉄筋やコンクリートなどを挟んで切断できます。カッターは木造住宅の解体にはあまり使用されず、主に鉄筋造やRC造の解体に使用されます。
メーカーによって重点が違い、挟むスピード、特殊形状の刃を使用したりなどカッターの中でも種類が豊富です。
フォーク
フォークは別名「グラップル」とも呼ばれ、挟むタイプのアタッチメントです。家屋の解体に使用されるのはもちろんのこと、建具などの移動や選別作業にも使用されます。
油圧ショベルは主にバケットが標準装備ですが、バケットがすくう作業に対してフォークは挟む作業を得意とします。バケットとフォークを使い分けることも多く、細かい作業にはフォークが使用されることが多いです。
ブレーカー
ブレーカーは別名「ハンマー」と呼ばれ、名前の通りハンマーのように素材を粉砕することが可能です。巨大な筒状の金属でできているので、鉄筋や岩石をも簡単に粉砕します。
主にコンクリート造の解体や基礎部分の粉砕に使用されています。解体工事以外にも道路工事や採石場でも使用されており、幅広い活躍の場があるのがブレーカーです。
スケルトンバケット
スケルトンバケットは、別名「ふるいバスケット」とも呼ばれています。通常のバケットに対して網目が作られているので、土とコンクリートをふるいにかけて分別するのが主な使用方法です。
多くのメーカーでは網目のサイズ違いが展開されているので、使用用途に合わせた網目のスケルトンバスケットの使用がおすすめです。
大割・小割圧砕機
大割・小割圧砕機はコンクリートなどの粉砕に使用されます。ブレーカーと同じ粉砕に使用されるアタッチメントですが、大割・小割圧砕機ははさんで砕くのが特徴です。
大割は通称「クラッシャー」と呼ばれ、コンクリートの柱などの粉砕に使用できるのでビルの解体で活躍します。小割は通称「パクラー」と呼ばれ、大きく粉砕のされたコンクリートなどを、さらに小さく粉砕します。
解体工事の重機の価格
解体工事に使用する重機はどれくらいの価格がするのか、分からない方も多いでしょう。重機の価格は新品か中古、どちらから選択するのかによっても大きく変わります。解体工事に使用する重機の価格を、新品と中古で見てみましょう。
新品の重機の価格
ミニサイズ | 約550万円 |
---|---|
0.15㎥サイズ | 約650万円 |
0.2㎥サイズ | 約750万円 |
0.45㎥サイズ | 約1,100万円 |
0.7㎥サイズ | 約2,000万円 |
新品の解体重機は、メーカーによって大きく価格に差が出ます。新品の重機を購入したい場合、メーカーに見積もりを取る必要がありますので注意しましょう。
メーカーの公式サイトより、重機に関する見積もりや相談が可能です。何社かのメーカー商品を比較するためにも、気になるメーカーの重機で見積もりを取ってみましょう。掲載している価格はあくまでも目安になるので、必ずメーカーの指示を仰いでください。
中古の重機の価格
ミニサイズ | 約250万円 |
---|---|
0.15㎥サイズ | 約400万円 |
0.2㎥サイズ | 約500万円 |
0.45㎥サイズ | 約700万円 |
0.7㎥サイズ | 約1,000万円 |
解体重機は新品で購入するとかなり価格が高いため、中古の購入を検討する業者も少なくありません。新品に比べると比較的手の出しやすい価格帯になるので、中古でも問題ない方は視野に入れてみてはいかがでしょうか。
中古重機はメーカーではなく、扱っているお店があります。近隣で取り扱いのある店舗があるか確認をして、問い合わせるのが良いでしょう。また、掲載している価格はあくまでも目安になります。メーカーや年数などによって価格は変動するので注意してください。
新しい解体重機とは?
解体重機は日々進化を遂げており、新しい重機は機能面も充実しています。では、最近の重機にはどのような機能が備わっているのでしょうか。最近の解体重機を一つ紹介します。
0.1+ツーピースアーム
0.1+ツーピースアームは0.1㎥サイズの重機です。狭い解体場所で使用される0.1㎥サイズですが、どのような特徴があるのでしょうか?
これまでの0.1㎥サイズでは2階部分にアームが届かないため、2階部分は手作業をしてから重機を使用して解体をしていました。通常のツーピースアームは重機サイズが大きいので、狭い現場に入ることはできません。
しかし、0.1+ツーピースアームは0.1㎥サイズに対してツーピースアームが付いています。そのため、狭い現場であっても2階までアームを伸ばすことができ、効率的に解体作業を進めることができるのです。
0.1㎥サイズの油圧ショベルとツーピースアームの両方を備えた、いわばハイブリット型と呼ばれています。
解体重機のメーカー一覧
日本の解体重機メーカー
- 日立建機日本
- 小松製作所
- クボタ
- ヤンマー
- コベルコ建機
- 住友建機
- IHI建機
- 川崎重工
- タダノ
各会社で主力の商品があるので、比較するのもおすすめです。
世界各国の解体重機メーカー
日本でも重機を扱うメーカーがありますが、世界でも重機を扱っているメーカーが多数あります。世界に目を向けることで、選択の幅が広がりますが、それぞれのメーカーが持つ特徴を捉えるのがポイントです。
また、世界のメーカーでは車好きの方であれば、名前を聞いたことがある会社も多いでしょう。
国名 | メーカー名 |
中国 | XCMG Changsha Zoomlion SANY Shantui Liugong |
ドイツ | Liebherr Wirtgen Group Putzmeister BAUER OMAG |
アメリカ | Caterpillar Terex Ingersoll Rand JLG |
フランス | Manitou Haulotte Fayat |
韓国 | Hyundai Doosan Infracore |
スウェーデン | Volvo Sandvik Atlas Copco |
解体重機が家に入れないときの対処法
家屋の解体作業時、家屋までの道や周りの環境によっては重機が入れないことがあります。また、解体をする建物と道路の間に段差があると、重機の使用ができません。
しかし、解体を行なわなければいけない状況下に立たされた場合、どのような方法を取るのでしょうか。重機を使用しない解体方法を紹介します。
手壊し解体をする
重機が使用できない場合の解体は、基本的に人の手で行います。人の手を使って解体を進めていくので、重機よりも時間はかかるでしょう。重機を使用せずに人の手で解体を行なう際は、人の手で使用できるアイテムを使用することが多いです。
まず柱などの解体に使用するのがチェーンソーです。チェーンソーで柱などを切断し、取り壊しを行いましょう。その他にも壁の解体には解体バチの使用がおすすめです。
また、解体後の産業廃棄物の処理時、トラックが入れない場合は手作業でトラックのある場所まで運ばなければいけません。手壊し解体は人員も必要ですし、時間もかかります。施主にとっては費用が上がる可能性があることも覚えておきましょう。
重機が入れる場所でも手壊し解体の対象になることがあります。それが、長屋の解体です。長屋の一部のみを解体する場合は、隣の住民に重機の音が響いてしまうことから、手壊し解体を行なう必要があります。長屋の一部解体でも重機の使用は難しいと考えて良いでしょう。
小さな重機を使う
道幅が狭いことから重機が入れない場合でも、小さいサイズの油圧ショベルであれば使用できることがあります。大きい重機よりも解体に時間がかかるので、手壊し解体と併用することで効率がアップするでしょう。
しかし、建物付近に階段などがある場合は、小さいサイズの重機も入ることができません。その場合は、手壊し解体一択になります。
解体重機による事故の原因と予防法!
解体作業時、事故やトラブルが起きるのは珍しくありません。安全第一を心がけていても、起きてしまうことがあります。では、重機が関与した事故の原因にはどのようなことが挙げられるのでしょう。
予防法と合わせて紹介するので、参考にしてください。
解体重機による事故
重機は人間よりも遥かに大きい乗り物のため、事故の危険性も高いことを覚えておきましょう。重機を使用した解体作業時に壁が崩れて人間が下敷きになったり、近隣住宅を破壊してしまう恐れもあります。
また、重機の横転などにより通行人や車にぶつかるケースも少なくありません。最悪の場合、死に繋がることも懸念した上で作業に向き合うようにしましょう。近隣の住民や通行人を、解体作業をしている現場に近づかせない配慮も必要です。
解体重機の事故を予防する方法
事故やトラブルに繋がりやすい解体作業ですが、作業員が安全に対する意識を持つだけで予防できます。多くの解体業者では安全第一を心がけていることがほとんどですが、中にはずさんな業者も存在しています。
事故を予防する方法として、施主は大幅な値切りを求めたり、作業期間を短く依頼するのはやめましょう。施主からするとできるだけ早く、費用を抑えたいと思うのが普通です。しかし、過密なスケジュールにすることで、作業員にも焦りが出てきてしまいます。
その結果、事故やトラブルに繋がったという例も少なくありません。作業員だけではなく施主も同様に、安全対策に向けた意識が大切です。
安全な重機の使用が解体工事で一番大事
事故やトラブルを防ぐために一番大切なのは、やはり安全な重機の使用です。予防する方法でも述べたように、作業員だけではなく施主の安全意識も大切でしょう。業者と施主の両者が協力しあって、事故のない解体工事に努めてください。
解体重機はオペレーターが必要!必要な免許・資格は?
重機を動かすキーになるオペレーターには、どのようなスキルが求められるのか解説します。スキルが低いと重機の良さを引き出せないだけではなく、事故にも繋がりかねません。また、重機を扱うには特殊な免許・資格が必要なのかについてもまとめました。
解体工事はオペレーターの力量が大事!
重機を扱う解体工事では、オペレーターの力量に重要性が高まります。初めから上手く扱うことができる乗り物ではないので、熟練の作業員がおりなすオペレーターから技術を得ましょう。
重機が持つ機能や性能は、オペレーターの技量で引き出されるものです。オペレーターの育成に時間をかけることで、重機のクオリティーを超える技術を身に付けられます。
解体重機のオペレーターに求められる免許・スキル
解体重機を個人で使用する場合は、特殊な免許や資格は必要ありません。しかし、事業者が重機を扱う場合には、それぞれの重機に合わせた免許が必要になります。事業者として扱う重機にはどのような免許・資格が必要なのか、必ず確認しておきましょう。
また、個人で使用する場合、アスベストなどの除去作業は手を出せません。これらは専門的資格が必要になるので注意してください。出典:建設業の許可とは(国土交通省)出典:廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について(環境省)
解体重機まとめ
解体作業に使用される重機は、大きさからアタッチメントまでさまざまな種類が展開されています。日本のみならず世界のメーカーから多くの重機が展開されているので、購入時には見積もりを取って比較してみてください。
重機を使用する際は安全第一を心がけるようにして、事故やトラブルを起こさないよう注意してください。