建物の解体工事を行う前の準備として、欠かせないのはまず建物内部の片付けおよび不用品の処分ですよね。
自分で行うべきなのか、業者にまかせてもいいものなのか、また自分で行うときに気をつけなければならないポイントはあるのか。今回はこれらの点について「家電リサイクル法」という法律の中身を中心に、見ていきましょう。
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家電リサイクル法
解体工事を行う前の不用品処理の際に、ぜひ知っておきたい知識として挙げられるのが「家電リサイクル法」という法律です。まずはこれについて詳細を確認しておきましょう。
家電リサイクル法の概要
今でこそ家電をはじめとした多くのものは、使えなくなったり買い換えたりする際にはリサイクルが当たり前となっていますが、以前は鉄など一部の金属のみを回収するだけにとどまり、なんと廃家電の約半数はそのまま埋め立てられていたそうです。
当然埋め立て地が足りなくなる危機に陥り、廃棄物の減量が課題になると同時に、使われている有用な部品や材料を資源としてリサイクルすることも重要だと考えられ始めました。
そこで平成13年4月から、家電をリサイクルする仕組みを定めた「特定家庭用機器再商品化法」、通称・家電リサイクル法が施行されることとなりました。
この法律により、家電メーカーには「リサイクルの義務」、小売業者には「引取り・運搬の義務」、そして消費者には「リサイクル料金支払いの義務」が課され、製造・販売・消費のどの立場においてもリサイクルに対する義務を負うこととなったのです。
家電リサイクル法の対象製品
家電リサイクル法の対象となるのは、以下のいわゆる「家電四品目」と呼ばれるものです。
・エアコン
家庭用のものほとんどのものが対象となります。室外機やリモコン・据付部材・工事具材なども一緒に回収してもらえます。
・テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
ラジカセ一体型・チューナー分離型も対象です。また、こちらもリモコンや付属されている着脱式のスピーカーも一緒に回収してもらえます。エアコンと同様家庭用のものが対象となっていて、ディスプレイモニターやプロジェクションテレビなどの業務用のものや、車載用テレビ・ワンセグなどは対象外です。
・冷蔵庫・冷凍庫
ワインセラーや保冷庫・冷温庫も対象です。エアコンやテレビ同様家庭用のものはほとんど回収してもらえますが、業務用保冷庫やおしぼりクーラー・ショーケースなどは対象外です。
・洗濯機・衣類乾燥機
やはり冷蔵庫もほぼ家庭用のものだけが対象となります。家庭用であれば、乾燥機つきや全自動・二槽式問わず引き取ってくれます。
リサイクルの方法
実際の処分方法にはいくつかあります。ポイントは、自治体のゴミの日に粗大ゴミなどとして出すことはできないという点です。
家電販売店に引取りを依頼する
故障や買換えで新しい家電を購入する場合には、今まで使っていた古いものはその購入店に引き取ってもらうことができます。
ただし、買換えではなく古いものの処分のみの場合には、その製品を購入したお店に依頼することになるのですが、「どこで買ったか忘れた」「通販だった」などのケースではこの方法は使えないため、後述する別の方法で処分することになります。
また店ごとに引取りの方法は異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
お住まいの自治体が定めている方法をとる
家電販売店で引き取ってもらうことができない場合は、お住まいの市町村など自治体に問い合わせてみましょう。
市町村やその提携店舗・提携業者が引取りに来てくれるということもあれば、その他の正しい回収方法を提示されることもあります。これは自治体によってさまざまであるため、まずはしっかり確認から行うことが大事です。
指定の引取り場所に自分で持ち込む
処分予定の家電品を、自ら決められた引取り場所に運ぶという方法もあります。この場合は郵便局振込で先にリサイクル料金を支払い、それから運搬します。
詳しくは次項で述べますが、収集や運搬料金がかからないため、リサイクル料だけで済むというメリットがあります。
支払う料金
先述した「家電販売店で引き取ってもらう」「自治体やその提携業者に引き取ってもらう」などの場合は、処分する側としては「収集運搬料金+リサイクル料」を支払う必要があります。
この「リサイクル料」は、製品の大きさなどやメーカーによって異なるため、大体どのくらいの費用になるかということはあらかじめ調べておくといいでしょう。
「指定場所に自分で持ち込む」という方法を選んだ場合は、第三者に運搬してもらうという手間がないため、その分の料金はかかりません。ただし家電四品目はそれなりに大きさも重さもある大型家電ばかりなので、その分の労力は計算に入れておかなければならないですね。
どうして適正にリサイクルしなければいけないのか
リサイクルの方法は、前述のようにしっかりと定められた通りに行わなければいけません。きちんと法にのっとった処分を行わず、たとえば「一般廃棄物処理業」などの許可を得ないいわゆる無許可業者や悪徳企業に回収を依頼してしまうと、不法投棄や不適正処理(環境汚染などにつながる処理を行う)・不適正管理(発火や延焼のおそれがあるものも分別しないなど)のもとでの廃棄につながる恐れがあるからです。
また、無料といわれて回収をお願いしたところ、後になってから何かと理由をつけて高額な請求をされるという事例もあります。
正しい方法でのリサイクルは、環境だけではなく消費者(家電の購入者)も守ることになるのです。法律にのっとったやり方で、きちんとした処理を行うようにしましょう。
不用品の処分方法
家電リサイクル法について理解を深めたところで、次は具体的に解体工事前の不用品処分方法を確認します。
解体工事前の残置物の処理は自分でするもの、とたいていは考えるものですが、意外にも「そのままにしておいて、解体業者に処分をお願いする」方がいいものも存在します。
詳しく見ていきましょう。
自分で処分する
もう使わない家電や家具のほかにも、衣服や細々とした生活雑貨など、解体工事前に処分したいものは人それぞれさまざまなものが出てくるでしょう。
基本的には、これらの処分は自分で行った方がいい場合が多いのです。その理由は「処分費用を安く済ませられるから」。
自分で処分すれば「一般廃棄物」という扱いになるため、普段のゴミの日に分別して、無料で捨てられるものや有料でも比較的低額で捨てられるものとして廃棄することが可能なのです。
しかし解体業者に残置物の処分を丸ごとお願いしてしまうと、それは「産業廃棄物」扱いになってしまいます。こうなると、解体費用だけではなく残置物処分費用として、それなりの金額になってくる場合がほとんどです。だからこそ基本的には自分で処分することを推奨されるのです。
もちろん、家電四品目に関しては前述したように定められた方法でリサイクルに出し、それに該当しない家電や家具などもまずはリサイクルショップに持ち込んでみましょう。高額で買い取ってもらえることはまれですが、廃棄物として処分するよりは確実に得、ということもあります。
解体業者に処分を頼む
「基本的には自分で処分を」ということは、「例外的に解体業者に依頼する方が安く処分できる」ものも、実はあります。
・タンスなどの木製家具
・スチールなどの金属類
・プラスチック製品
これらは解体工事の際に出る産業廃棄物と一緒に処分してもらうことで、費用を安く抑えられることがあります。業者が処分する際には廃棄物の重量で処分価格が決まるため、自分でひとつひとつ粗大ゴミなどとして処理するよりも安くつく可能性があるからです。
ただし解体業者に残置物の処分もお願いする場合は、あらかじめ相談したうえで、見積をきちんと確認しておくようにしましょう。思ったよりも高額になってしまって、やっぱり自分で処分しておけばよかった…というケースもありえるからです。まずは事前の相談と確認をお忘れなく。
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まとめ
解体工事前に処分する不用品には、自分で処分を行うべきものと解体業者に依頼してもいいものがあります。その際にポイントとなるのが「家電リサイクル法」という法律です。概要をきちんと押さえて、それぞれの立場での義務を理解し、適正な処理を行えるようにしましょう。
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