古民家の解体費用について紹介します。古民家の定義や古家との違い、解体工事を行う際の費用相場や補助金などをまとめました。また、古材の買取を行う業者や解体費用が高くなる理由も掲載しているので、古民家を解体する際の参考にしてください。
古民家の解体費用が変動する理由を知る
古くなった古民家などは解体工事の対象になることが多いです。本記事では、古民家を解体する際の費用相場について紹介します。また、古民家の定義や古家との違い、古材の買取を行っている業者についても掲載しています。
さらに、家屋の解体費用相場が変動する理由や解体工事の手順なども掲載しているので、解体工事を行う際の参考にしてください。
古民家とは何か?
まずは、古民家について紹介します。古民家の定義や古家との違い、解体工事を行う際の大まかな期間などを掲載していきます。
古民家の定義
古民家とは、日本の住居のうち建築年数が長く経過した民家のことを指します。しかし、具体的な定義はありません。
国が制定する文化財登録制度では、釘などを使わず、伝統的な建築工法である木造軸組工法で建てられているものを指します。
また、茅葺屋根、草葺き屋根、日本瓦葺き屋根、土間、太い柱と梁を持つ建物であり、築年数が50年以上経っている建物を古民家としています。
さらに、古民家には農村民家・町民民家・武家民家・庄屋屋敷などのタイプがあり、近年ではリノベーションによって再利用されるケースも増えている建物です。出典:登録有形文化財建造物制度の御案内(文化庁)
古民家と古家との違い
一般的に建築年数がかなり経過している建物を古民家と呼びますが、古家との違いはどこなのでしょうか?実は、古民家の定義に当てはまらない建築物のことを古家と呼びます。
古民家は、釘を使わない建築方法で建てられ、建築年数が50年以上経過している家を指します。対して、古家はそれらの条件に当てはまらず、建築年数がかなり経過した建物です。
古民家の解体期間
古民家を解体する場合は、一般の家屋と同じ工事を行います。そのため、解体工事の期間は、普通の工事と同じように3~10日程度が目安です。
しかし、解体工事を行う前には、届出の提出や解体後の手続きを踏まえると、1~2ヶ月を目安にしておきましょう。ただし、古材買取を行う場合は、期間が長くなる可能性があります。
さらに、古材の買取をする場合は、工事期間が延びるだけでなく、手作業が多くなるため費用も高くなります。また、重機や作業者が入りづらい現場の場合も工事期間が延びる可能性が高いので注意しましょう。
古民家解体で出る古材の利用価値
次は、古民家の解体工事で出る古材について紹介います。古材の定義や古材の買取をしている業者なども掲載しているので、古材の利用価値を調べる際の参考にしてください。
古材の定義
古材にはさまざまな定義がありますが、一般的には戦前に建てられた家屋の木材を指します。また、建築年数が60年以上経過している家に使われている木材を古材と定義していることもあります。
なお、木材の種類によっては、年数が経過すればするほど強度が上がる種類もあり、その分古材としても価値が高いです。
古材が使われなくなった理由
戦前の日本では、物が少なかったこともあり、1つの物を大切にするという意識が国民の間にありました。そのため、木材に関しても長く使うように大切に扱われていました。
しかし、戦後になると古材や建材といった物が使われなくなっていきます。その理由の1つとしては、高度成長に伴って物が溢れるようになり、1つの古材などにこだわる必要がなくなったからです。
また、木材は海外からの輸入品が増えたことや、鉄骨造などの住宅が増えたことも古材が使われなくなった理由です。
古材を買い取る業者がいる
戦後以降の日本では、古材が使用されなくなってきていましたが、近年では古材の買取を行う業者が現れています。特に、最近では古民家再生ブームも相まって、古材に対する需要が一気に増えています。
中には、解体業者が直接古材の買取を行っている場合もあるので、業者に依頼する時に確認しておきましょう。
需要がある古材の種類
古材の持つ価値は、その年数にあります。50年や100年といった時間が経過している場合、それだけでも価値のある古材として重宝されます。
一定の年数が経過した古材は、色合いや風合い、強度や雰囲気など独特な魅力が詰まっており、古民家カフェや温泉旅館などの場所で再利用されることが多いです。
特に、ヒノキやケヤキ、柿ノ木などは需要が高く、高い値段で買取されます。古民家を解体する場合は、古材が使われている箇所に注意しつつ、業者と連携して古材を傷つけないように解体しましょう。
古材鑑定のメリット
古材の買取依頼をする際には、古材鑑定を行います。古材鑑定にもメリットが存在するので、売却予定がなくても鑑定はしてもらいましょう。古材鑑定とは、古民家に使われている古材の価値を鑑定士が専門的な立場から評価するものです。
そして、古材鑑定を行うことで古材鑑定書が発行できます。鑑定書には古材の状態が分かり、売却する時や再利用・再活用に向けた情報を入手できます。
さらに、鑑定することで古材を活かしたリフォームや循環型解体などの対策も取りやすいので、古民家の解体工事を行う際は、古材鑑定をするのがおすすめです。
古材はリサイクルされる
古材などの資源がもったいないという理由で買取を依頼する人も多いですが、古材は買い取られなかった場合にはリサイクルに回されます。
古民家や住宅を解体した際に出る、古材や廃材などはそのままゴミになってしまうと勘違いしている人も多いです。
しかし、実際には合板や燃料、ウッドチップなどに再加工されるケースが多いです。そのため、買取されない場合でも、処分されるわけではないので安心しましょう。
古民家の解体費用はさまざまな理由で変動する
次は、古民家の解体費用の相場について紹介します。古民家の解体費用の相場は変動しやすいため、その理由をしっかりと把握しておきましょう。
解体費用の相場
古民家や古家などの昔ながらの住宅は、木造建築が多いです。そのため、解体工事を行う際の相場も木造建築の家屋を解体する時と同じです。
木造家屋の解体費用の相場は、古民家の場合1坪あたり3万~5万円となっています。ただし、解体費用の相場は変動する可能性があるので、あくまで目安の金額と覚えておきましょう。
解体費用が変動する理由①古材買取の有無
古民家の解体費用の相場が変動する理由の1つが古材買取の有無です。古材の買取をお願いする場合は、解体作業に変更が生じる可能性があります。一般的な工事の場合、重機を使って建物を取り壊すのが基本です。
しかし、古民家から古材を取り出す場合は、重機を使用できません。重機を使ってしまうと買取予定の古材までも壊すことになってしまうからです。
そのため、古材の買取がある場合は、重機ではなく、古民家解体専門の職人によって手作業で古材をバラしていくことになります。古材の買取でお金が入るものの、その分解体費用が高くなるので注意しましょう。
解体費用が変動する理由②立地条件
立地条件によって、解体費用の相場が高くなることもあります。特に、近隣の建物との距離が近く、重機が入り込めない場合や養生が必要となる時は、その分相場も高くなります。
しかし、古民家の場合、広い敷地に建てられることが多いため、重機が入り込めないという理由で費用が高くなることは少ないです。
ただし、道路に対して高い場所に建てられている場合や、産廃物を運搬する車両が駐車できないなどの状況の場合は、手作業が増えて費用も高くなります。
解体費用が変動する理由③アスベスト除去費用
アスベストの除去作業などが発生すると、費用相場も高くなります。一般的な建物や住宅の場合でも、アスベストが含まれていることが分かった時点で、アスベストの除去工事が必要です。
そのため、当初予定している作業や工期で、解体を行うことができなくなるので、追加の費用が発生します。出典:石綿を含有する建築物の解体等に係る届出について(厚生労働省)
解体費用が変動する理由④残置物処理・家屋以外の解体工事
残置物が残っていた場合や、家屋以外の解体工事がある際にも費用は変動します。家の中に残置物がある場合は、撤去作業や処分費用を追加で取られてしまいます。
そのため、家に残っている残置物などは、工事が始まる前に自分で処理して、費用を抑えましょう。また、駐車場や庭、樹木が多い広場など、家屋以外の解体工事がある場合も追加費用が発生します。
これらも自分で処分できる場合は事前に行っておくのがおすすめです。しかし、自分では処分できない場合は、予算を多めに用意しておくようにしましょう。
解体費用が変動する理由⑤地中障害物処理費用
基本的に建物や住宅を解体する際には、地中1~1.5mに障害物などの不要な物がないか確認してから工事を行います。この作業は、新たに建物を建てる際の基礎工事をスムーズに行うために必要な作業です。
なお、地中障害物に関しては、工事を進めていく上で発見される場合もあります。地中障害物を見つけた場合は、撤去作業が必要となるので追加費用が発生します。
さらに、土壌汚染の進行が確認された場合は、汚染土処理にかかる費用も負担する必要があるので注意しましょう。
解体費用が変動する理由⑥産業廃棄物処理費用
古民家などを解体する場合、産業廃棄物が出ます。解体工事とは、家屋を取り壊すだけでなく、その後の産業廃棄物を処理するところまで含みます。
基本的に工事によって出た産業廃棄物は業者が責任を持って処分するのが一般的です。しかし、近年は処分に必要な費用が高騰しているため、依頼主にも費用を負担してもらうことも増えています。
古民家の解体手順
次は、古民家を解体する際の手順について紹介します。大まかな流れを把握しておくことで、不測の事態にもしっかりと対応できるようになります。
手順①古材鑑定士・解体業者に見積もりを依頼
家屋を解体する際は、工事の業者に依頼して現場調査を行い、見積書を出してもらいます。古民家の場合も、まずは解体業者への依頼を行います。
さらに、古民家は価値のある古材が使われていることも多いため、一緒に古材鑑定士にも現場調査の依頼をします。古材の買取の有無によって費用も変わってくるので、最初に双方の見積もりと買取金額を出して比較するようにしましょう。
また、業者によって相場が変動することもあるので、できれば複数の業者に見積もりを出してもらいましょう。
手順②業者の比較検討・契約
業者の比較と同時にさまざまな検討を行い、より細かいところまで決めていきます。委託契約書や支払い契約書、または近隣の住民への挨拶なども忘れないようにしましょう。
近隣住民への挨拶を行うと同時に、工事期間や問題が起こった際の連絡先も報告します。工事よりも前に伝えておくと、近隣トラブルも事前に防ぐことができるので、忘れずに行いましょう。
手順③解体工事の実施
業者の決定、近隣への挨拶などが済んだら、解体工事を実施します。事前に伝えているとはいえ、工事が進むとトラブルが起こる可能性もあります。そのため、解体業者とは綿密に連絡を取ることを心がけましょう。
工事が完了し、古材の引き渡し、産廃物の処理がきちんと契約通りに行われたかを確認したら終了です。なお、工事には多くの中間業者が関わっているので、契約書や作業の完了を示す書類はきちんと保管しておきましょう。
古民家解体に利用できる補助金制度
次は、古民家の解体工事に利用できる補助金制度について紹介します。古民家再生補助金の対象となる建物や空き家再生等推進事業の補助金を受けられる条件についても掲載しています。
古民家再生補助金
古民家の解体に利用できる補助金制度の1つとして、古民家再生補助金が挙げられます。こちらの補助金は古民家の再生を念頭に置いた場合に利用できます。
ただし、古民家再生補助金制度は自治体によっては、取り入れていない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。例として新潟県では、「ふるさと古民家再生事業」と呼ばれる制度を導入しています。
歴史的文化や伝統的木造建築技術の維持・継承などを図っています。対象となる建物の工事について、100万円を上限とし、工事費用の2分の1までを新潟県が負担する制度です。出典:空き家再生まちづくり支援事業(新潟県HP)
空き家再生等推進事業
- 空き家である
- 自治体に建物の老朽化によって倒壊の危険性があると判断された建物
- 自治体が定めた年数以上が経過している
- 補助金申請者が税金を滞納していない
空き家再生等推進事業も古民家解体時の補助金として利用できる制度の1つです。上記のリストでは、空き家再生等推進事業の補助金を受けられる条件の一部を掲載しています。
条件をクリアすると、最大で国から解体費用の半分を補助してもらうことが可能です。ただし、補助金を受けられるのは、領収書や解体証明書を自治体に提出した後になります。
そのため、工事費用は一度自分で支払う必要があるので、最初から補助金に頼るのではなく、金銭的に余裕を持たせておく必要があります。出典:空き家再生等推進事業について(国土交通省)
古民家解体の業者の選び方と注意点
次は、古民家の解体業者を選ぶ際の注意点とポイント紹介します。後から追加で費用を請求されないためにも最初の業者選びは非常に重要です。ますは、業者を選ぶ時の条件を把握しておきましょう。
古民家の解体実績があるか
工事の業者を選ぶ際は、解体実績の豊富さに注目しましょう。特に、古民家の解体実績があるかどうかは最初に見ておくべきポイントです。一般的な建物や家屋と比較しても、古民家はそれほど多い訳ではありません。
さらに、古民家は複雑な造りとなっているケースや古材の買取を依頼するケースなど、依頼主によって条件もまちまちです。そのため、単純に重機を使って取り壊せばいい訳ではありません。
構造や立地条件も含めて、さまざまなことを念頭に置かなければならないため、業者に依頼する場合は、古民家の解体実績があるかどうかをしっかりと確認しておく必要があります。
解体費用を明確に提示してくれるか
業者に依頼する場合は、明確な解体費用が提示されているのかどうかも重要です。古民家に限らず、解体工事を行う際は追加費用が発生する可能性があります。
そのため、追加費用に関する規定やどの項目にどのくらいの費用がかかるのか、それらを契約前にきちんと説明してくれる業者を探すのがおすすめです。
中には、契約時に大まかな金額を提示し、後から追加費用を多く請求する悪徳業者もいます。そうした業者に引っかからないためにも、工事の項目や費用をきちんと提示できる業者を優先して選ぶようにしましょう。
担当者の態度・対応は良好か
業者を選んだ後は、実際にコミュニケーションをとって、担当者の態度や対応を確認しましょう。疑問点がある場合はきちんと回答してもらえるのか、近隣住民への配慮は十分なのか、その他の表情や態度から読み取れる人間性などを確認します。
そもそも、態度が悪い業者には、安心して工事を任せることはできません。現場調査や見積もりを出す際のやり取りで、本当に信頼できる業者なのかをしっかりと見極めましょう。
古民家は解体せずに活用する方法も
次は、古民家を解体せずに活用できる方法を紹介します。古民家の工事には費用がかかるため、金額を抑えるためにも解体を行わない方法も選択肢に入れるようにしましょう。
活用方法①賃貸物件にする
思い入れの古民家を残しておきたい場合は、賃貸物件として貸し出す選択肢もあります。立地条件にもよりますが、市街地などに建っている場合は改装して店舗用物件として貸し出すことも可能です。
居住用としては使えなくなった古民家でも、店舗用物件として貸し出せば、思い入れの建物を残せるだけでなく、賃貸収入も得られます。
また、近年では都心から地方に移住する人も増えているため、DIY型の賃貸物件として貸し出すのもおすすめです。
リノベーションも含めて、自分の手で新たな環境作りに価値を見出す人も多くいます。そんな、人たちの願いを支援してあげるのも1つの選択肢ではないでしょうか?
活用方法②文化施設やコミュニティースペースとして提供する
居住用として使えなくなった古民家は、文化施設や地域のコミュニティースペースとしても活用できます。古民家は古くに建てられたものが多いため、比較的敷地面積も広いです。
そうした広いスペースを利用して、地域の人たちが気軽に集まれるような場所として提供するのもおすすめです。
また、図書館や資料館といった、文化施設として地域に貢献するのもいいでしょう。地元や地域に貢献したいという思いが強ければ、解体せずに古民家をコミュニティースペースや文化施設として活用してみましょう。
活用方法③リフォーム・リノベーションする
古民家を解体せずに、リフォーム・リノベーションをして再利用してもいいでしょう。近年では、リノベーションした古民家カフェなども人気です。
また、リフォーム・リノベーションを行い、広い敷地面積のある古民家をシェアハウスとして貸し出すのもおすすめです。
リノベーション後は、かつての状態とは違う形になってしまいますが、思い入れのある古民家の枠組みだけでも残したい場合はリフォーム・リノベーションも選択肢に入れましょう。
古民家を解体する際は古材買取や補助金制度を確認しよう
古民家を解体する場合は、通常の木造建築の解体工事と同様の工期で進められます。しかし、古民家には価値のある古材が使用されている可能性があるため、古材鑑定や古材の買取などで通常よりも費用が多くなることが多いです。
なお、費用は自治体の補助金制度などを利用する事で抑えられます。また、古民家は解体せずにそのまま再利用することもできる物件ですので、さまざまな選択肢の中で自分にもっとも合うものを探してみましょう。