京都市では「非居住住宅利活用促進税」という新たな税金制度が導入されることになりました。京都に空き家や別荘などを所有している人は、今後はこの税金も納税しなければなりません。
しかし京都市に関わらず、空き家を放置すると納める税金が増えてしまい、場合によっては6倍にまで増えてしまうこともあります。
この記事ではこの「非居住住宅利活用促進税」についての概要や、空き家にかかる税金、空き家を所有している人がすべき対応について紹介します。
京都市で始まる「非居住住宅利活用促進税」とは?
京都市が「非居住住宅利活用促進税」を導入すると発表しました。この「非居住住宅利活用促進税」は、空き家や別荘などの所有者が納税しなければならない税金です。
この新たな税金制度は2026年度以降に導入されるそうです。想定されている課税対象は約1.7万件といわれています。利用されていない空き家を減らすことが目的とされています。
課税額は下記のものを合算した額です。
- 評価額(家屋)の0.7%
- 評価額(土地)の単価に建物の床面積をかけた額の0.15%~0.6%(固定資産評価額が700万円未満は10.15%、700万円以上900未満は0.3%、900万円以上は0.6%)
条例施行から5年ごとに課税条件などの検証が行われていくとされています。資産価値の低い空き家を所有している人に配慮して、固定資産評価額が100万円未満の建物については税金制度導入後5年間の間は対象外になります。また市条例で保全対象になっている京町家や景観重要建造物、また賃貸や売却を予定している住宅なども対象外になるとされています。
税収は導入初年度に8億6千万円、翌年度以降は9億5千万円になると見込まれていますが、徴税費用として年約2億円かかるとされています。税収は空き家対策などに充てるとのこと。
これまでは、静岡県熱海市が昭和51年にリゾートマンションなどに「別荘等所有税」が導入された例がありますが、都市部で空き家も含めた幅広い住宅の所有者を対象として定められた税金制度は、この京都市での「非居住住宅利活用促進税」は全国初だといわれています。
京都市で「非居住住宅利活用促進税」の導入が決まった背景
京都市で「非居住住宅利活用促進税」の導入が決まった背景には、子育て世帯が市外へ流出しまっているという問題があります。京都市では住居が不足していて、これによって若年層や子育て層を中心に市内に居住したくても住宅を購入できずに外へ出ていくケースが多くなっているのです。京都市での「非居住住宅利活用促進税」の導入は、子育て世帯が市外へ流出するのに歯止めをかける狙いがあります。
市街地の面積が限られている京都において、人が住んでいない空き家を減らして住居を増やすことは、住居不足の解消に大きな効果をもたらします。
人が住んでいない空き家が増えることは、防災・防犯・生活環境・景観の保全などに悪影響を及ぼします。人が住んでいない空き家を減らすことには、このような問題をなくすことにもつながります。
空き家にかかる「固定資産税」と「都市計画税」
上記では京都市で「非居住住宅利活用促進税」が新たに導入されると説明しましたが、京都市に限らず課税される税金があります。
空き家を所有していると、毎年「固定資産税」と「都市計画税」が課せられます。 「固定資産税」は、原則としてすべての土地や建物が課税の対象になります。一方 「都市計画税」は、都市計画法による市街化区域内にある土地や建物が課税の対象となります。
空き家を放置すると納める税金が6倍になる?
「固定資産税」については注意が必要です。空き家を放置していると納める税金が6倍になってしまうことがあるからです。これについて順を追って説明していきます。
まずはじめに「固定資産税」とは、不動産の所有者に対して課せられる税金です。すべての土地や建物が課税の対象になります。
固定資産税には「固定資産税等の住宅用地特例」という減税制度があり、これによって住宅が建っている土地の税金は安くなります。固定資産税の納税額が6分の1の額だけで済むこともあります。
しかし「空き家法」により、管理が不十分であるとされる「特定空き家」に指定された空き家は、「固定資産税等の住宅用地特例」の対象外になってしまいます。住居を放置していると「特定空き家」に指定され、減税が適用されなくなり、結果的に固定資産税によって課せられる税金が増えてしまいます。特例率6分の1が適用されなくなるため、納税額が最大で6倍にまで増えてしまうのです。
「特定空き家」だと判断されるのは下記のような空き家です。
- 倒壊などの危険がある
- 衛生上問題がある
- 管理が行われていないことで著しく景観を損なっている
- 周辺の生活環境に悪影響を与える
所有している空き家はどうすればいい?
空き家を今後使わない場合は、下記のいずれかを行いましょう。
- 空き家が建っているまま売却する
- 空き家が建っているまま再利用する
- 更地にしてから土地を売る
- 更地にしてから土地を売再利用する
いずれにしても、空き家や土地の費用の相場を知っておく必要があります。費用の相場を知りたい場合は下記から費用をシミュレーションしてみてください。
費用シミュレーションのリンク
空き家が建っているまま売却する
空き家を解体せずに売却する場合は、まずは仲介してもらう不動産会社を探しましょう。空き家が比較的新しい場合は、購入してもらえる見込みがあります。
不動産会社はなるべく空き家の近くになる不動産会社を選ぶのがおすすめです。現地を見て査定してもらうことになるため、あまり遠いと正しい査定をしてもらいにくくなります。
大手にこだわらずに地域密着で空き家を得意としている不動産会社を検討するのもおすすめです。
依頼する不動産会社を決める際は、より良い不動産会社に依頼するために、複数の不動産会社を比較検討するのがおすすめです。まず複数の不動産会社を候補として選び、その中から依頼する不動産会社を選びましょう。
空き家が建っているまま再利用する
空き家が比較的新しいなら、空き家を賃貸戸建てや貸店舗、レンタルスペースなどにして再利用して収入源にするという活用方法もあります。築年数が経過して老朽化していても、空き家を解体せずに活用したいなら、適切に修繕することで再利用できます。
空き家を放置すると固定資産税を支払い続けなければなりませんが、空き家を収入源にすることができれば、固定資産税の支払いで悩む心配がなくなります。うまくいけば安定した収入が得られるようになります。
ただし修繕して再利用できる状態にしても、より魅力的なものが近くにあれば人はそちらに流れてしまいます。たとえばレンタルスペースを経営するのであれば、同じような条件でより魅力的なレンタルスペースは他にあれば、利用客がそちらのレンタルスペースにとられてしまいます。空き家の状態や方法によってはライバルを調査するなど努力も求められます。
また修繕しても建物は経年劣化していくので、定期的に修繕して管理していく必要があります。
空き家が建っているまま再利用するアイデアを下記に紹介します。
賃貸戸建て
空き家を修繕して、賃貸戸建てとして貸し出す方法です。ファミリー層に需要があり、一度入居すると長期間住み続ける場合が多いので、収益が安定しやすくなります。しかし空室になると収益が得られません。
貸店舗
お店を出したいと考えている相手に貸店舗として貸し出して賃料を受け取ります。人通りが多いなどお店として立地条件が良い場合は、賃貸戸建てよりも貸店舗の方が向いているかもしれません。
貸し別荘
貸し別荘として数カ月単位で貸し出す活用方法もあります。観光地や田舎に空き家を所有している場合は、貸し別荘としての需要が見込めます。
借り手がその建物を気に入った場合は、購入してもらうことも可能です。売却を考えている場合は、買い手が見つかるまでの間、貸し別荘として数カ月単位で貸し出し賃料として収入を得ながら活用することもできます。
レンタルスペース
会議やイベントなどに使うためのレンタルスペースとして活用する場合は、時間単位で貸し出すことが可能です。テーブルやイスなどがあればいいので簡単に始めることができます。
宿泊施設
空き家を修繕して宿泊施設にして、宿泊料を受け取り収入源にする方法です。こちらも観光地などにある場合に適しています。観光シーズンには大きな収益を期待できる場合もあります。
宿泊施設を経営する方法として民泊と簡易宿泊所があります。民泊は届出するだけで営業が可能ですが、一年間のうち営業できる日数が180日までと営業できる日数が限られています。一方で簡易宿泊所は民泊と異なり営業日数に制限がありませんが、経営する場合は旅館業法の許可を得る必要があります。
更地にしてから土地を売る
築年数が経っている空き家だと、資産価値が低くなってしまいます。建物が古く、建物付きのまま売却したり再利用するのが難しそうな場合は、空き家を解体して更地にすることも検討しましょう。
一般的に日本では中古の戸建ては人気が低いといわれています。建物を解体して更地にした方が、売却できる確率が高くなります。住宅の解体費用には費用がかかり、首都圏での解体費用は約100〜200万円ほどです。空き家の解体に利用できる補助金制度があり、解体費用の半額を補助する制度もあるので、ぜひ活用しましょう。
土地に住宅が建っている場合は「住宅用地の特例」によって固定資産税が最大で6分の1に、都市計画税は最大3分の1に減額されますが、更地にすることによってこれが適用されなくなってしまうので要注意です。
更地にしてから土地を再利用する
空き家を解体して更地にしてから、その土地を売却せずに自分で再利用する方法もあります。土地を再利用するアイデアを下記に紹介します。
コインパーキング
コインパーキングなら狭い土地であっても始めることができます。整地やロック板などへの初期投資のみで気軽に始められます。簡単にやめられることもメリットです。車通りが多いかどうかなど土地の特徴を考慮してコインパーキングを経営するか検討しましょう。
太陽光発電
太陽光発電は売電価格が固定されているので、その点は安定した収益につながります。しかし売電収入が日照時間や天気に左右されることもあります。始める際は太陽光発電に使うためのソーラーパネルを設置します。土地の日照の良さを考えて検討しましょう。
野立て看板用地
野立て看板用地には、「〇〇店まであと何km」というようにお店まであとどのくらいの距離なのか知らせるための誘導看板などがあります。看板を設置するだけなので始めることができます。看板を出したい企業側からオファーがあったら、野立て看板を立ててもらい、企業から看板掲示料を受け取ります。野立て看板用地も、すぐにやめることが可能です。
資材置き場
資材置き場は、土地をそのまま貸し出すだけで始めることができる方法です。土地を整地する必要もなく、初期費用がほとんどかかりません。しかし資材置き場として活用できるのは、近くで工事を行っていて資材を置く場所を確保したいというニーズがある場合のみです。
まとめ
この記事では京都市で導入されることになった「非居住住宅利活用促進税」や、空き家にかかる税金、空き家を所有している人がすべき対応について紹介しました。
京都市では「非居住住宅利活用促進税」という新たな税金制度が導入されることになったので、京都に空き家や別荘などを所有している人は、今後はこの税金も納税しなければなりません。
しかし京都市に限らず課税される税金があります。空き家を所有している場合は、毎年「固定資産税」と「都市計画税」を納税しなければなりません。 すべての土地や建物が課税の対象になる 「固定資産税」についてはとくに注意が必要です。空き家を放置すると納める税金が増えてしまい、場合によっては6倍にまで増えてしまうこともあります。
現在空き家を所有している場合は、この記事で紹介したような方法で売却したり再利用して、無駄な税金による出費をなくしましょう。