雪の多い地域では、毎年冬になると雪かきの手間や雪の置き場所に悩むのが恒例となっていることでしょう。
最近は、個人の住宅でもロードヒーティングや融雪機・融雪槽など便利な装置を採用する家庭も増えてきました。とはいえ、設置費用やランニングコストも気になるところですよね。
今回はこれら雪国の強い味方である融雪装置について、詳しく見ていきましょう。
ロードヒーティングとは
ロードヒーティングは、地面に熱源を埋め込んで中からあたため、地表に降り積もる雪を溶かす装置です。当然ながら、設置した場所の雪しか溶けませんが、設置場所を工夫することで雪かきの負担を軽減することができます。
また、凍結を防止するため、転倒対策ができます。高齢者のいる家庭では玄関から駐車場まわりを中心に設置すると、安心して通行することができるでしょう。
ロードヒーティングの種類と設置費用
温水循環式(ボイラー式)【灯油・ガス】
地中に張り巡らせて埋設したパイプの中に、専用のボイラーであたためた温水(不凍液)を循環させることで、雪を溶かします。主な燃料は灯油とガスです。
パワーが強力なので、広範囲に設置する場合に適していますが、対して狭い範囲や入り組んだ部分には不向きです。
ランニングコストとして灯油やガスの燃料代のほかにも、ボイラーの定期点検代、不凍液の定期交換代といったメンテナンスにかかる費用が発生します。
通常時のコスパは決して悪くありませんが、灯油の価格が高騰したり、プロパンガスしか使えない地域だったりすると、燃料代は高くついてしまうという弱点があります。
電熱線式【電気】
地中にパイプではなく電熱線を埋設し、それが熱くなることによって雪を溶かします。安全でクリーン、さらに耐久性が高く、メンテナンスもほとんど必要がありません。
弱点は、電気代が高くなりやすいこと。特に広範囲に設置する場合や積雪が多い地域では、ランニングコストが高額になりがちです。立ち上がりは速めなので、駐車場だけ、玄関前だけ、などといったコンパクトな範囲を集中的にあたためたいときに適しているといえます。
ヒートポンプ式【電気】
雪を溶かす直接の仕組みは温水循環式と同じで、地面の下に埋設したパイプに温水を流すことで地表をあたためます。
温水循環式と違うのは、熱を作り出す仕組みです。冷媒ガスが空気中の熱エネルギーを取り出すという「ヒートポンプ」という仕組みで、不凍液をあたためるのです。
ヒートポンプを動かすエネルギーも灯油やガスではなく電気を使うのですが、効率の良いシステムであるためランニングコストは低めに抑えられ、環境にも配慮しているといえる方式です。
温水循環式のメリットと、電気をエネルギーとして使う点のメリットをうまく組み合わせているシステムといえます。
ただし低めのランニングコストに対して、設置費用は多少高めであり、ヒートポンプの寿命が比較的短い・不凍液は定期交換が必要である、というところがデメリットと感じられる点かもしれません。
また、ボイラーを熱源とするよりも送水温度が低めなので、電源を入れてからの立ち上がりが遅く、地表があたたまるまで少し時間がかかるという弱点もあります。
ロードヒーティングの弱点
積雪が多すぎる地域では力不足
ロードヒーティングの融雪力は、そこまで大きなものではありません。少しだけ積もった雪を溶かしたり、これから積もろうとしている雪が地面に着いた瞬間に溶かしたり、ということであれば問題ありませんが、すでに相当な量が積もってしまった雪を溶かすのは不可能であることが多いのです。
そのため、積雪が多すぎるような地域だと、使い方を工夫しなければまるっきりの力不足となってしまう恐れがあります。
雪による段差ができる
当然ながら、ロードヒーティングは設置した部分の雪しか溶けないため、雪が降り積もって溶けていない部分との境目に雪の段差ができてしまいます。雪の量によっては、その段差が数十センチになることもあり、車の乗り入れに支障をきたすなどの障害となる恐れが出てきます。
段差を削るとなると、雪かき以上の労力がかかることもあるため、せっかくのロードヒーティングのメリットがデメリットに変わってしまうことも考えられます。このような状態になってしまう可能性があるのなら、事前に対策を考えておかなければならないでしょう。
ランニングコスト節約や省エネのためのポイント
敷地内すべてをロードヒーティングにしようとしない
当然のことながら、ロードヒーティングは設置面積が広くなればなるほど設置費用もランニングコストも高額になっていきます。
そのため、まずもっともロードヒーティングが必要な場所はどこなのかということをしっかりと絞りましょう。玄関前や駐車場スペースだけを融雪し、あとの部分は雪かきをしよう…などという感じで優先順位をつけるのです。
後述する融雪機や融雪槽と併用することも検討に入れられますね。
降雪センサーや自動/手動運転を併用・駆使する
雪が降っている・気温が低いということを自動的に感知して電源が入るセンサー機能は、夜中や留守の際には大いに役立ってくれる反面、必要がないときにもスイッチが入ってしまっていることがあります。
地面の状態を自分で目視・確認して、手動運転にこまめに切替することも、省エネのためには必要だということです。
また、自動運転には「予熱運転(雪が降りだす前から地面をあたためておく)」と「遅延運転(雪がやんだあとも雪が溶け切るまで地面をあたため続ける)」があり、これらの使い方も工夫することで省エネが可能です。
降雪が少ない日は予熱運転が必要ないこともあるでしょうし、あたたかい日であれば遅延運転を止めてしまっても太陽光と余熱で残りの雪が溶かされることもあるでしょう。
その日の天気や気温・地面の状態によって運転方法をこまめに切り替えることで、大幅な省エネにつなげることが期待できます。
補助金や無利子ローンなどの助けを借りよう
ロードヒーティングの導入時には、ランニングコストはもちろんのこと、初期費用についても考慮しなければなりません。20平方メートルほどの面積に敷設するとして、初期費用の目安としては温水循環式が60万円前後、電熱線式が70万円前後、ヒートポンプ式が90万円前後といったところです。
敷設面積が広くなっていくにつれ割安になる傾向はありますが、やはり予算的に設置をためらってしまうほどには高額である場合が多いでしょう。
そういうときのために、雪の多い地域の自治体によってはロードヒーティング設置のための補助金や、無利子もしくは利子の一部免除という融資制度を設けているところがあります。
条件など細かい点は各自治体で差があるため、まずは確認してみるとよいでしょう。
融雪機と融雪槽
ロードヒーティングと比較検討されるものに「融雪機」「融雪槽」があります。どちらも地面にあけた穴に埋め込んだ装置に雪を入れ、溶かすためのものですが、実は微妙に違うものです。
融雪機と融雪槽の違い
融雪機の仕組みとメリット・デメリット
灯油でバーナーを燃やし、燃焼缶をあたためて雪を溶かします。融雪力が強力なので、入れた雪がすぐに溶けるため、制限なくどんどん雪を入れ込むことができます。また、降ったばかりの軽い・やわらかい雪だけでなく、降り積もって時間が経ち硬くなった雪や、氷の塊を入れても溶かしてくれます。
デメリットとしては、バーナーを燃焼させているため、作動中はそばを離れられないこと。一気に融雪する時間が設けられない場合はいちいち立ち上げないといけないため、ある程度まとまった時間の確保が必要です。また、作動音も大きいので、住まいの周辺環境によっては作業時間帯に気を遣わなければなりません。
地面に埋設した穴にはもちろんフタがありますが、閉めた状態では地面との段差が2~3センチほど生まれます。が、車などを上に止めるのは問題ありません。
融雪槽の仕組みとメリット・デメリット
ガス・灯油・ヒートポンプを熱源として温水を作り、それを穴の底にあるパイプに循環させて雪を溶かします。
雪を入れたらフタを閉めてそばを離れることができますが、雪が溶けるスピードは遅く、その分入れる雪の量にも制限があります。また、大きな雪のかたまりや氷などは砕いて小さくしてから入れる必要があります。
運転音は静かなので、作動時間を選ばずに使うことができるのは嬉しいところで、地面との段差もほとんどありません。
ロードヒーティングと融雪機・融雪槽の併設
ロードヒーティングは雪かきの手間が省けますが、設置した部分しか融雪できません。対して融雪機・融雪槽は、雪かき自体は行わなければなりません。
どちらにもそれぞれメリット・デメリットがあるため、それぞれのいいところ取りをするためにも、両方を併用するのもひとつの手です。
設置費用は、融雪機・融雪槽も(設置面積にもよりますが)ロードヒーティングと大きな差はありません。併用することで総合的に楽になる、コスパは良くなるということも考えられるため、いろいろとシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
雪対策の設備は、どれもそれなりに費用がかかるものです。しかし、雪かきする時間や労力を考慮して、コスパのバランスを考えると、思い切って導入した方が総合的には良いという家庭も多いはずです。
自分のライフスタイルや家族構成、住まいの環境も鑑み、設備のメリット・デメリットをしっかり押さえたうえで自分に合うものを選んでいきたいですね。