今まで建物が建っていた土地を更地にした場合、固定資産税の価格が変わってしまうのをご存じでしょうか?
利用されていない土地であれば固定資産税もかからないはず、そう思う人もいるかもしれませんが、更地にしておくと固定資産税の額が高くなってしまいます。
よかれと思って更地にしたことで、余計な出費が増えてしまうのです。
建物を解体し、更地にした場合の固定資産税の額が高くなってしまう理由、更地にすることのメリットやデメリットについても詳しく解説していきます。
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固定資産税とは
固定資産税とは、土地や家屋を所有する人に対して各自治体から課税されるものです。毎年1月1日時点における土地、家屋の所有者がこれに該当します。
固定資産税は土地と家屋の両方に課税されるため、更地の場合とそうでない土地とで金額が異なります。
一般的に更地の固定資産税は、ほかの不動産と比較しても高くなります。
更地にした場合の固定資産税とは
これまで建物が建てられていた土地を更地にした場合、固定資産税はどのように変わるのでしょうか?
理由として、2つのことが挙げられます。
- 建物付きの土地の場合は、固定資産税が安くなる税制になっている
- 更地であると固定資産税の軽減措置が適用されない
特例により税金は軽減される
まず、その特例措置における「住宅用地」について説明していきます。住宅用地は、住宅を建てるための土地のことです。
つまり田や畑、山林、雑種地などどのような土地であっても、最終的に「宅地」として活用予定の土地を「住宅用地」と言います。
住宅用地に該当しない土地を「非住宅用地」といい、ここでは店舗や工場などを立てるための土地や農地として活用されています。
住宅用地の特例措置
住宅用地の場合、固定資産税課税標準の特例措置を受けられます。住宅用地の特例措置を適用した計算方法については、住宅用地の区分に応じて異なります。
住宅用地であって住戸1戸につき200㎡(約60坪)までの部分については「小規模住宅用地」とされ、課税標準額の6分の1が軽減されます。また小規模住宅用地以外の住宅用地に関しては、課税標準額の3分の1が軽減されることとなります。
出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)税金の種類|東京都主税局
更地を放置すると固定資産税が高くなる3つの理由
更地を放置してしまうと各種の軽減措置が適用できないため、毎年高い固定資産税が課税されることになります。
更地以外の不動産は固定資産税の節税ができることから、敢えて更地にしないといった方法も講じられますが、ここには落とし穴があります。ここからは、その落とし穴について解説していきます。
1:特定空き家に指定されてしまう
敢えて更地にせず建物が建っている状態であれば、固定資産税の軽減が適用されます。しかし管理が不十分で放置されている、いわゆる空き家の場合は「特定空き家」に指定される可能性があります。
2:特定空き家に指定されるまでの動き
「特定空き家」の指定は、各自治体によって判断されます。特定空き家に指定されると助言や指導が入り、改善されない場合には勧告が出され「住宅用地の軽減措置特例」の対象から除外されます。
つまりは更地の状態と同様にみなされ、税率も更地と同じ税率が課されることになります。また勧告に従わない場合は命令が出され、これに違反すると50万円以下の罰金が科されることとなるため、注意が必要です。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法 第十六条|e-Gov法令検索
3:特定空き家に指定される要件
「特定空き家」に指定される具体的な要件としては2015年に施行された「空家等対策特別措置法」に基づき、国土交通省がガイドラインを掲げています。指定される具体的要件は以下の通りです。
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報|国土交通省
空き家を解体して更地にする4つのメリット
更地にすることによって、空き家の維持・管理するための費用や時間、売却をスムーズに進められます。また、空き家解体に補助金を給付している自治体もあります。
ここからは、空き家を解体して更地にすることで享受できるメリットについて解説していきます。
1:空き家の維持にかかる費用を抑えられる
誰も住んでいない空き家を管理するためには、維持費が必要です。
「特定空き家」とならないためには、定期的に手入れをすることが求められます。
空き家を解体することで、維持費などの費用がかからず、特定空き家になる不安を抱えることがありません。
2:土地のみを売却すると買い手が見つかりやすい
更地は、新築住宅や駐車場など買い手視点を考えると思い通りに利用できます。そのため空き家を解体して更地にすることで、買い手が付きやすくなるメリットもあります。
また更地は、建物付きの土地よりも価格が上がるケースもあります。これはすぐ次の事業に着手できるためです。個人からの買い手だけではなく、注文住宅を建設して土地付き建物として販売する不動産会社が買い手となるケースもあります。
3:新たに賃貸物件を建てて運用できる
ある程度の広さのある土地の場合、空き家を解体して新築賃貸物件(アパートなど)を建てることで新たな収入を得ることが可能です。
更地のまま所有するのではなく、賃貸住宅をたてることで「小規模住宅用地の特例」や一般住宅用の軽減措置の適用が可能となり、固定資産税を安く抑えられます。
4:事業に土地を活用できる
空き家を解体して、新しい事業に活用できるといったメリットもあります。田舎の場合は、賃貸需要が見込めない地域もあるため、駐車場や太陽光発電システムとして土地を活用するというのも方法の1つです。
空き家を解体して更地にする4つのデメリット
空き家を解体して更地にするにはデメリットもあります。先述したメリットと併せて、デメリットについても確認しておく必要があります。
主として解体費用や固定資産税の税率の違いが挙げられますが、そのほかにも土地の条件やリノベーション技術なども鑑みる必要があります。
1:解体自体に費用がかかる
建物が建てられていた土地を更地にするには、解体費用などが必要です。
空き家は解体を専門とする業者に解体工事を依頼する必要があります。
解体費用は、建物の大きさ・種類・重機での解体が可能であるか、などによっても坪単価が変わってきます。
一般的な木造住宅の場合、1坪当たり3〜5万円程度であり、建坪が30坪の場合は90〜150万円ほどの解体費用となります。
それ以外に費用がかかる場合もあるので、見積もり時に確認をしておきましょう。
2:解体してしまうと固定資産税がかかる
建物を解体して更地にすることで、従来の「建物がある土地」に比べて固定資産税が高くなるというのが税法上のルールです。日本では、マイホームを所有している人への負担を軽減するために、持ち家が立っている土地の固定資産税を安くする仕組みとなっています。
住宅用地特例
- 固定資産税:⅙
- 都市計画税:⅓
そのため建物を解体し、更地にすることで固定資産材の軽減措置適用の対象外となり、土地の固定資産税が高くなってしまいます。
3:古家での売却で価値が見込める場合もある
近年においては、リノベーション技術も進歩しています。そのため古家付きでの売却においても、価値が見込めるのに解体費用をかけて更地にしてしまい、結果として多くの費用や時間をかけてしまうケースも見受けられます。
古い住宅を購入し、自分の手でセルフリフォームをする人も増えているので、古家だから解体と決めつけてしまうことは問題かもしれません。
建物の取り壊しを依頼する前に、複数の不動産屋へ無料査定を依頼し、建物ありの状態でも売却が可能かを確認してみるのも有効的な方法の1つです。
4:更地にしたからと売却金額が上がるわけではない
その土地の条件によっては、法律上同じ土地であっても建てられる家の広さなどが異なる場合があります。代表的な例が「接道義務」です。
日本は、土地に家を建てる際に救急車や消防車が通れるように「幅4メートル以上の道路」に接することを義務化しています。この接道義務を満たしていない場合、新築住宅の建設許可を得られず、思うような建て替えができません。
このようなルールができる前に建てられた古家を取り壊した場合、土地としての活用度合いが低いため、売却金額が上昇することは期待できません。
これまでよりも狭い建物しか建てられないことも考えられます。
このような場合は、現在ある古家をリフォームするなどの方法が適切と判断される場合もあるので、土地における法律を確認しておくこともポイントの1つです。
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更地を相続した場合に固定資産税以外にかかる費用4つ
ここからは、更地を相続した場合に発生する固定資産税以外の費用について紹介していきます。
相続した更地を所有したり売却したりすることで、固定資産税以外にも費用が発生します。これらを押さえておくことで、土地を所有して運用するのか、あるいは、早期の売却を検討するかの判断材料として活用できます。
1:譲渡所得税
更地を売却して利益が発生すると「譲渡所得課税」の対象となります。売った土地の所有期間が、売った年の1月1日現在で5年を超えるかどうかで、適用される税率が異なります。
2:相続税
更地を相続すると「相続課税」の対象になります。
相続税の財産評価額は、原則として「時価」で計られます。しかし土地や建物については、市場でつけられている取引相場価格ではなく、実務上公平性の確保や納税者の便宜のため定められた画一的な方法で評価が行われます。
評価方法としては、国税庁によって発表される路線価に基づいた「路線価方式」や「倍率方式」などが採用されます。
出典:相続税|国税庁
3:登録免許税
更地を相続する場合、財産の名義変更を目的とした相続登記手続きを行う必要があります。この際に、「登録免許課税」の対象となります。
登録免許税とは不動産を登記する際に課される税金であり、登録免許税を納めなければ登記申請を行えません。平成30年度の税制改正によって、土地の相続については登録免許税が免除される場合もあるため、免税措置を受けられるか否か確認が必要です。
4:都市計画税
その年の1月1日時点において、市街化区域内に土地や建物を所有している人は都市計画税を納めなければなりません。都市計画税とは市区町村が課税する地方税の1つであり、固定資産税と一緒に課税されます。
出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) 税金の種類|東京都主税局
固定資産税の滞納で生じる5つのリスク
固定資産税の納税を滞納してしまうと延滞税が加算されたり、財産を差し押さえられたりと大きな不利益を受けることになってしまいます。
ここでは、固定資産税の滞納による延滞金の発生や督促状、差押えなどのリスクについて解説していきます。
1:延滞金が必要になる
固定資産税を滞納してしまうと、滞納額に追加して「延滞金」が課されることとなります。
滞納している期間によって金額は異なり滞納している期間によって金額は異なり、納期限の翌日から1か月が経過するまでの間は年利7.3%で、納期限の翌日から1か月が経過して以降は年利14.6%が課せられます。
また、やむを得ない事情で延滞してしまった場合は、申請によって免除される場合もあります。
2:督促状が届く
固定資産税は納期限が設けられているため、納期限を過ぎても納付されない場合は滞納とみなされます。滞納になった時点で税務署から督促状が手元に届きます。
督促状には、「固定資産税が滞納となっている旨」と「滞納額の支払いを請求する旨」が印字されています。督促状を受け取った場合は、できる限り早いタイミングで滞納額の支払い、滞納を解消することが大切です。
3:督促手数料を徴収される
督促状を送付するにあたって、郵送料などの督促手数料を負担するように指示されます。金額は自治体によって異なりますが、当初の固定資産税に加え、延滞金、督促手数料が徴収されることとなります。
4:財務調査で資産をチェックされる
督促状が送られてきているにも関わらず納付に応じなかったり、税務署に連絡を入れずに放置したりすると、徴収職員によって自身の「財産調査」に着手されてしまいます。
「財産調査」は滞納者がどのような資産・財産を保有しているかを把握するために、国税徴収法に基づいて行われます。この財産調査によって、勤務先や預貯金口座など滞納者が保有する資産・財産を明らかにします。
5:財産を差し押さえられる
財産調査によって滞納者に資産・財産があることが明らかになると、その資産・財産について差押えを行うことが可能となります。差押えの対象となるものとしては、不動産や預貯金口座、給与などです。
滞納者の財産を差し押さえる場合、預貯金や給与の差押えが一般的とされています。これは不動産を差し押さえるよりも、手続き上、簡易的で時間を要しないためとされています。
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固定資産税を考えると更地は活用か売却が望ましい
更地は建物付きの土地と比べて固定資産税が高く、所有しているだけで毎年税金が発生してしまいます。ただ放置しているだけでも費用は必然的に発生するため、更地主義者は早期に土地活用あるいは売却することを推奨します。
また固定資産税を納付することにおいてもリスクがあるため、納税が負担となり難しくなるようであれば、売却によって手放すことがおすすめです。
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