「店舗兼住宅」は、店舗と住宅が合わさっている建物で、店舗と住宅を行き来できるようになっている建物です。
解体後の建て替えで、店舗兼用住宅を建てたいと考えている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、店舗兼住宅を建てる場合におすすめの間取りや建築法での決まりなど、店舗兼住宅を建てる場合に知っておきたいことをご説明します。
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店舗兼住宅とは
店舗兼住宅とは、ひとつの建物の中に店舗と住宅があり、店舗から住宅へ、また住宅から店舗へそれぞれ行き来できるつくりになっている建物のことです。
店舗兼住宅の代表的な例には、一軒家の1階部分を店舗にし、2階部分を住宅にして、自由に行き来できるようになっている建物があります。
自宅で事業を始めることができるので、自営業を始めたい方や、家族経営を始めたい方に向いています。通勤する必要がないため、とき間や費用をかけずに事業を始めることができます。
店舗兼住宅を建てる場合は、地域ごとに法律で要件が定められているため考慮する必要があります。住宅の住みやすさのために、店舗との距離感を考えることも必要です。
店舗兼住宅に適した間取りにするためのポイント8選
店舗兼住宅を建てる場合は、知っておくべき設計上のポイントがあります。ここでは店舗兼住宅におすすめの間取りをご紹介します。
店舗は1階部分にする
店舗は1階部分に配置するのがおすすめです。 2階以上に店舗を設置すると、お客様が道から店見つけにくくなるため、集客力が落ちやすくなります。
1階部分であればお客様が道から店を見つけやすく、入りやすくなるため、1階部分に店舗を設けることをおすすめします。
店舗と住宅の動線を分ける
店舗と住宅が合わさっている店舗兼住宅では、店舗と住宅の動線を分けることをおすすめします。
将来的に賃貸物件をして建物を貸し出すことを想定している場合はとくに店舗と住戸の区画を完全に分けるのがおすすめです。
ただし第一種低層住居専用地域といわれているエリアで店舗兼併用住宅を建築する場合は、設計上、店舗と自宅が内部で行き来できることが条件になります。そのため将来他人に建物を貸し出すことはできません。
住宅ローンを借りて店舗兼住宅を建築する場合も、自営が前提になります。
店舗の外から店内が見えるように設計する
店舗の外から店内が見えるように設計しましょう。店舗に大きな窓を設けると、お客様が外から店内の様子を確認できるようになります。こうすることで、お客様が営業中か閉店中か、混み合っているか、店内はどのような雰囲気かなどが一目でわかるようになります。そのためお客様が入店しやすくなり、集客につながります。
店舗内にお客様と従業員のトイレを設置する
店舗にはお客様や従業員が利用するトイレが必要です。面積に余裕があれば、お客様用のトイレと従業員用のトイレを分けて作りましょう。
バックヤードを設置する
店舗を作る上では、バックヤードも必要になります。バックヤードは、在庫や掃除用具を置いておいたり、従業員が食事をしたり、休憩したり、事務作業をしたりするために必要です。
バリアフリーな設計にする
店舗はバリアフリーを意識して設計しましょう。車椅子のお客様やベビーカーのお客様、高齢者のお客様にとっても利用しやすい店舗にしましょう。
入店するときや店内で移動するときに困ることがないように、スロープや手すりを設置して、バリアフリー設計にしましょう。
車椅子のままでも入れるように、トイレのスペースを広めにしておくのがおすすめです。
店内にトイレを作ると、排水勾配を確保するために店舗の床レベルが上がってしまうことがあります。こうなると、店舗の入口に段差ができてしまいます。段差があると、車椅子のお客様やベビーカーのお客様が入りにくくなり、バリアフリーではなくなってしまいます。段差が上がってしまう場合は、スロープなどを設置することで、バリアフリーにしましょう。
必要に応じて駐車場を設置する
必要に応じて駐車場を設置します。駐車場は、業種やエリア、規模によっては必要になります。商圏が半径500mくらいであれば、駐輪場も作っておくと良いです。
店舗には荷捌きスペースが必要になることがあります。しかし店舗兼住宅は敷地が狭い場合が多いため、荷捌きスペースを確保することが難しい場合が多いです。仕入が頻繁にある場合などは、荷捌きスペースを確保した方が良いと考えられます。
駐車場は、後から近くの月極駐車場を借りることで確保することもできます。店舗の周りに月極駐車場があるのであれば問題ありません。
店舗のセキュリティ対策をする
店舗は、防犯カメラなどを利用することでセキュリティ対策をしましょう。店内には釣り銭や商品在庫があります。そのため盗難されないように、セキュリティ対策を必ず実施するようにしましょう。
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店舗兼住宅の建築で知っておくべき決まり3つ
その土地に店舗を建てることができるかどうかは、建築法によって決まります。店舗兼住宅を建てる場合に知っておくべき建築法での決まりについてご説明します。
店舗兼住宅を建てることができる用途地域
店舗兼住宅を建てることができる「用途地域」についてです。店舗については、建築可能なエリアと店舗面積が決められています。店舗は規制によって自由に建てられないことがあります。土地には、用途地域という建築する建物についての規制があります。用途地域では、どこにどのような建物を建てて良いのかが決められています。用途地域は、住居、商業、工業等の用途を適正に配分することで、住居の環境を保護して、商工業の利便を増進するために決められています。
中には「地区計画」や「建築協定」と呼ばれる規制によって、店舗の建築が制限されているエリアもあります。
店舗は、基本的には閑静な住環境を脅かす存在と考えられています。そのため、住民たちが地区計画や建築協定などによって店舗を建てることを禁止することを街づくりルールとして決めていることがあるのです。
第一種低層住居専用地域内で建てることができる店舗兼住宅
続いて「第一種低層住居専用地域内で建てることができる店舗兼住宅」についてご説明します。住宅地の用途地域の中で第一種低層住居専用地域といわれているエリアでは、原則として店舗を建てることができません。ただし第一種低層住居専用地域であっても、一定の要件を満たす「住宅に付随する店舗・事務所等」であれば例外的に建築することが可能です。
第一種低層住居専用地域内で店舗兼住宅を建てる場合は、「店舗の床面積は、50平米以下で、建築物の延べ面積の1/2未満であること」というルールが決められています。
店舗の用途についても、次のようなルールが決められています。
- 事務所
- 日用品の販売を主な目的とする店舗または食堂または喫茶店
- 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらのようなサービス業を行う店舗
- 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらのようなサービス業を実施する店舗
- 自家販売のために食品製造業を実施するパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらのような店舗
- 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらのような施設
- 美術品または工芸品を製作するためのアトリエまたは工房
第一種低層住居専用地域内は、店舗面積が50平米以下と決められていて、これがネックになります。一般的な飲食店や美容室では30坪くらいはあります。そのため50平米(約15坪)以下にするとなると、かなり面積が狭い店舗になってしまいます。
店舗の面積が狭いということは、十分にな数の数や商品棚を設置できないということになります。そのため売上が少なくなってしまいます。
第一種低層住居専用地域で店舗兼自宅を建てて店舗を運営していく場合は、店舗のレイアウトの他に、商品構成や販売方法なども含めて検討していくことが大切です。
たとえば、販売方法については、テイクアウトやデリバリー、ネット通販などを取り入れるのがおすすめです。こうすることで、店舗の面積が狭いことによって減少する売上を補うことができ、狭い店舗面積による悪影響を受けにくくなります。
街には小さな店舗でありながら繁盛しているお店もあります。このような店舗がどのように営業しているのかを参考にしてみるのもおすすめです。
第一種低層住居専用地域以外で建てることができる店舗兼住宅
第一種低層住居専用地域以外で建てることができる店舗兼住宅についてご説明します。第一種低層住居専用地域以外の用途地域では、店舗の要件が緩和されるため、建てやすくなります。
第二種低層住居専用地域では、2階以下であり床面積が150平米であれば飲食店や美容院などのような店舗を建てることが可能です。
第一種中高層住居専用地域になると、500平米以内の店舗や飲食店を建築することが可能になります。
このように第一種低層住居専用地域以外では、本格的な店舗を建てることができるようになります。
店舗兼住宅の固定資産税
不動産を所有していると固定資産税が発生します。一般の住宅には建物にも土地にも固定資産税の軽減措置があります。
店舗兼住宅の場合、一般の住宅よりも固定資産税が割高になってしまう可能性がああります。しかし店舗兼住宅であっても、自宅部分の面積が1/2以上であれば、一般の住宅と同じように固定資産税を軽減することが可能です。
ここでは店舗兼住宅の固定資産税について知っておくべき「建物の固定資産税」と「土地の固定資産税」についてご説明します。
建物の固定資産税
店舗兼住宅について、自宅部分の床面積の割合が2分の1以上にすることで、固定資産税が半額になります。
建物の用途が住宅だけである場合は、建物の固定資産税は新築から3年間(3階建以上の中高層耐火住宅等は5年間)の間は2分の1と半額になります。
ただし、店舗兼住宅である場合は、固定資産税が半額になるのは自宅部分の床面積の割合が2分の1以上の物件に限られます。
自宅部分の面積が2分の1未満となっている店舗兼住宅は、新築当初の軽減措置を受けることができないため、通常の住宅よりも最初の固定資産税が高くなってしまいます。
固定資産税を半額にして固定資産税の負担を軽減したい場合は、店舗兼住宅を建てるときに、自宅部分の床面積の割合が2分の1以上になるようにしましょう。
土地の固定資産税
土地に「住宅」の用途である建物を建てることで、住宅用地の軽減措置が適用されるため、土地の固定資産税が安い金額で済みます。
店舗兼住宅の場合も住宅用地の軽減措置は適用されます。しかし自宅部分の床面積によって土地が住宅用地とみなされるかどうかが違ってきます。
たとえば木造2階建ての店舗兼住宅を建てた場合、自宅部分の面積が1/2以上であれば、その土地は全て住宅用地とみなされるのです。
しかし自宅部分の面積が1/4以上1/2未満である場合は、その土地の50%しか住宅用地の軽減措置が適用されなくなってしまいます。
残りの50%の土地には住宅用地の軽減措置が適用されないため、固定資産税は高くなってしまいます。
たとえば敷地の面積が200平米で、その土地が100%住宅用地としてみなされた場合は、固定資産税の課税標準額が固定資産税評価額の6分の1になるため、固定資産税が大幅に安くなります。
店舗兼住宅で固定資産税を安くしたい場合は、建築する建物を設計する段階で、自宅部分の面積を1/2以上にするように設計しましょう。
住宅ローンで店舗兼住宅を建てる方法
住宅ローンを利用して店舗兼住宅を建てることも可能です。ここでは住宅ローンを利用して店舗兼住宅を建てる方法についてご説明します。
住宅ローンを借りる要件
店舗兼住宅であっても銀行によっては住宅ローンを借りることができます。
銀行によって要件に多少の違いはありますが、共通して求められている要件は、次の2つです。
1つ目は、半分以上が自宅であることです。店舗部分を除く居住部分の床面積が、建物全体の床面積の2分の1以上あることが要件として決められています。
2つ目は、自己使用であることです。店舗部分は自分で使用する場所であることが要件として決められています。自己使用のみ認められるため、店舗を他人に貸し出すことは禁止されています。
店舗兼住宅で住宅ローンが組める銀行はあまり多くはありません。主に一部のネット銀行が実施しているものが可能です。店舗を住宅ローンで建てることができることは有利なことです。そのため住宅ローンでの店舗の建築は検討する価値があります。
たとえば、法人が建物の融資を受ける場合は、一般的にローン期間は最長でも20年までであることがほとんどです。
住宅ローンであれば35年ローンを組むことができます。そのため、毎月の返済金額を低い金額にすることができます。
住宅ローン控除を受けるための要件
店舗兼住宅では、一定の要件を満たすことで、自宅の部分だけに「住宅ローン控除」を利用することができます。住宅ローン控除とは、返済期間が10年以上であるローンを組んで住宅を購入した際に、自分が住むことになった年から一定の期間に渡って、所定の金額が所得税から控除されるという税金特例です。
新築物件で住宅ローン控除を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 住宅を新築する、または新築住宅を取得し、2009年1月1日から2021年12月31日までにその住宅を自己の居住のために用いること。
- 工事完了の日または取得の日から6カ月以内に、自己のために用いること。
- 床面積が50平米以上であること。
- 居住用と居住用以外の部分(店舗など)があるときは、床面積の2分の1以上が居住用であること(この場合は居住用の部分のみが控除の対象)
店舗兼住宅は経費にできる?
店舗兼住宅で発生した費用を経費として計上し、節税につなげることが可能です。
店舗を経営する際に発生する公共料金の代金や、通信費、保険料などは、経費として計上することができます。
ただし住居で発生した分も全額計上できるわけではなく、店舗で利用した分のみが経費にすることが可能です。そのため店舗で利用した分と住居で利用した分を按分しておく必要があります。
その他、店舗の運営で発生するさまざまな費用を経費にすることができます。たとえば固定資産税やローンの利息、建物や設備の減価償却費なども経費にすることが可能です。
まとめ
この記事では、店舗兼住宅を建てる場合におすすめの間取りや建築法での決まりなどについてご説明しました。
店舗兼住宅は、店舗と住宅が1つになっていて、店舗と住宅を行き来できるようになっている建物です。
店舗兼住宅を建てる場合は、建築法での決まりについて理解した上で、この記事でご紹介したおすすめの間取りなどを参考にして取り組んでみてください。
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