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国土交通省が定める空き家の定義とは
国土交通省の定義する空き家とは、個人や法人、団体が所有する未利用の建物と工作物、その敷地などです。
建物は一戸建てや集合住宅、店舗兼用住宅や事務所、倉庫など、一般的な「家」よりも広い物件も含みます。工作物は塀や門、店舗の看板やネオンが該当し、庭木や物置など敷地内全ての構築物も、空き家として定義されています。
所有及び管理者が、地方公共団体や国の場合、空き家の定義は適用されません。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報|国土交通省
空家等対策特別措置法の対象となる特定空き家とは
空家等対策特別措置法によって定義された特定空き家とは、管理が行き届かず周辺に悪影響を与え、もしくは倒壊など危険な状態であると認定された物件です。
空家等対策特別措置法とは、所有者が放置していると思われる空き家を自治体の判断で立入調査し、特定空き家と判断した場合は所有者に指導や勧告できるようにした法律で「空き家法」とも呼ばれます。
法整備により、現在では行政代執行も可能です。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)の概要|国土交通省
空き家の定義4つの判断基準
空家等対策特別措置法によって定義された空き家ですが、実際の判断基準は「基本的な指針」によって目安を提示しています。
「概ね年間を通しての継続」を目安とし、別荘や保養所など年間に数カ月程度利用する物件は除外対象です。判断基準の年間はあくまでも目安であり、厳格に適用される条件ではありません。
この他の基準も当てはめて、市町村が総合的に「空き家」と判断します。
出典:空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針|国土交通省
1:ライフラインの使用状況
水道やガス、電気の使用状況は、定義された空き家の判断に利用されます。
市町村がライフラインの使用状況を判断する方法のひとつが水道です。多くの市町村が上水道を供給し、定期的にメーター確認して利用状況を把握しています。
電気やガスは、すぐに利用できる状況になっているかが判断基準です。特定空き家ではないため、立入調査は不可能でしょう。外部から目視などで確認できる目安を併用します。
2:所有者の登記記録・住民票や利用実績
所有者の登記記録及び住民票、建物の利用実績は、空き家の定義を確認する材料になります。
土地や建物は、所有すると登記記録を作成し、変更があればその都度作成します。所有者の住民票と確認し、一致しない場合や不自然な状況になっている場合は、空き家の可能性を否定できないでしょう。
住民票移動後に所有者変更が長期間行われない物件は、利用実績が乏しく、空き家と判断される場合もあります。
3:1年以上人の出入りがあるか否か
「空き家法」で認められた空き家把握の実態調査により、1年以上人の出入りがあるかなどを判断基準に定義しています。
人の出入りとは、具体的には「日常生活や営業活動を行っている」状態です。草木が茂って出入り口まで到達できない、シャッターや玄関、雨戸が閉まったままで開けられた様子がないなど外部から状況確認します。
日常的な居住・営業実態のない物件であっても、適切な管理が行われていれば判断対象外でしょう。
4:安全・衛生管理の状況
空き家かどうかを判断する基準に、安全・衛生管理状況の確認も利用します。
建物など構造物に損傷があり、門扉や塀が壊れて所有者以外が自由に出入りできる状態は安全とは言えません。庭の手入れが行き届いていないと害獣の住処となり、敷地だけでなく周辺の衛生環境の悪化要因となるでしょう。
台風や降雪など自然災害への対策が行われていることも管理項目としてチェックします。
特定空き家の定義4つの判断基準
国土交通省は、特定空き家を定義するための判断基準を『「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針』に明示しています。
ここから特定空き家の定義の判断基準について詳しく解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針|国土交通省
1:周辺の生活環境の保全問題
庭木の手入れを怠って交通の妨げになっている場合や、門扉や出入り口の施錠が壊れて不審者の侵入が容易な状況は、周辺生活者の住環境が脅かされる状況として、特定空き家の定義に該当します。
生活環境の保全は、市町村が担う業務です。空き家への不審者の出入りは、犯罪の温床や放火などの可能性も高まります。
安心して暮らせる環境整備のためにも、特定空き家認定による早期対応が必要でしょう。
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針|国土交通省
2:景観の問題
壊れかけた構造物や庭木が繁茂して構造物を覆っている状態は景観を損なうため、特定空き家の判断対象です。
景観条例や景観法によって都市計画が行われている地区では、特に厳しい判定が行われます。周囲の景観と調和しない、看板や窓ガラスの破損、敷地内のゴミなども判断材料です。
景観の問題は、周辺環境との調和や治安に影響します。観光地は周辺が受ける影響も大きいため、重視される項目でしょう。
3:衛生上の問題
空き家は害虫や害獣の住処になり、異臭の発生や周辺住民への衛生上の問題を引き起こすため、特定空き家への認定判断を行います。
害獣や害虫は空き家の損傷だけでなく、周辺住宅への侵入など被害や影響が多大です。衛生上の問題は生活環境の悪化に直結し、周辺住民に深刻な影響を与えるでしょう。
衛生上の問題解決には、特定空き家への認定が欠かせません。周辺住民の生活を守る視点で判断されます。
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針|国土交通省
4:危険性の問題
簡単に侵入できる空き家は、犯罪の温床になる危険性が高く、防犯の観点から特定空き家への判断対象です。
空き家は不審者が住み着く可能性が高く、周辺住民は安心して生活できないでしょう。無法地帯になる可能性も高まり、近くで営業する店舗や賃貸物件にとっては風評被害の不安もあります。
安心して暮らせる環境保全は周辺住民だけでは限界があり、行政による特定空き家への指定など強制力のある対処が必要でしょう。
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針|国土交通省
特定空き家の定義に該当した場合のリスク
特定空き家の定義を適用された場合のリスクは、固定資産税の増額と市町村からの強制撤去の勧告です。
固定資産税の他に、都市計画地域に該当する場合は、都市計画税の増額も適用されます。また、特定空き家に対する立入調査が行われ、建物の解体などの助言や指導などが市町村から発せられた場合は、それに対して必要な措置をとらなければなりません。
それぞれについて詳しく説明していきます。
固定資産税が増額される
住宅用地には特例措置があり、税負担が軽減されます。住宅用地に対する固定資産税は、一般住宅用地であれば価格の1/3ですが、特定空き家に指定されると、この特例が適用されません。
特定空き家への指定は、住宅ではないと認定されたことを意味します。したがって、住宅用地に対する特例措置が認められず、更地と同じ税額が適用されるのです。
都市計画税も同様に住宅用地の特例の適用外になり、納付税額が増額になります。
市町村から強制撤去を勧告される
空き家法に基づき、市町村は現状確認のための立入調査を実施後、指導や勧告、命令などを行います。
最初は家屋の修繕や撤去、庭木の伐採などの助言や指導です。改善されない場合は勧告、その後猶予期間を設定した命令、行政代執行へと強制力の高い措置が順次発せられます。
命令を受けた時点で意見書の提出などは可能ですが、立入調査拒否や命令に違反した場合は過料(罰金)対象です。
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特定空き家定義に該当しないための5つの対策
空き家を放置して特定空き家の定義を適用される前に、空き家の有効活用を行いましょう。
所有地と居住地が離れていても、周辺住民とのいざこざは避けたいものです。理想は定期的な利用や短期間の居住ですが、困難な場合は管理会社などのメンテナンスサービスの利用も検討しましょう。
費用をかけるだけでなく、賃貸物件やレンタルスペースなど、新たな収入源への転換も可能です。
1:定期的にメンテナンスを行う
空き家の定期的なメンテナンスは、費用をかけずに自分でできる比較的簡単な対策です。
雨漏りなどは修繕し、定期的に換気と通水、掃除を行うだけで空き家の老朽化スピードを遅らせることができます。庭などの草刈りを行い、出たごみは適宜処分して放置しないようにしましょう。また、敷地内を巡回し、新たな修繕箇所があれば対策を施します。
所有物件は責任を持って対処することが肝要です。
2:賃貸物件にする
状態の良い空き家は、賃貸物件として活用する方法も有効な対策です。
店舗や倉庫は、放置するよりも賃貸物件にした方がメンテナンス作業も不要になり、収入が得られるなどメリットがあります。住宅は水回りのリフォームを行うと、賃貸収入アップも可能です。
方法がわからない時は、不動産会社など所有地の地元企業を通すと費用はかかりますが、全てを任せられるでしょう。
3:空き家管理サービスを利用する
空き家管理サービスは、定期的な巡回やメンテナンスを行う他、賃貸物件にした時の入居者の募集や家賃回収などが含まれます。
多少費用をかけても、自分で行う手間を省きたい方には魅力的なサービスです。不動産会社が手掛けますが、メンテナンスだけならNPO法人も行います。
所有地と居住地が離れている時など、自分で定期的な訪問やメンテナンスが行えない場合は、きめ細かい巡回などかえって安心でしょう。
4:売却する
空き家を売却すると、メンテナンスや固定資産税などの費用負担がなくなります。
建物付の現状のままでも更地にしてからでも、どちらでも売却は可能です。維持管理のための時間や費用負担を軽減できるでしょう。
相続により取得した住宅及び更地にした土地は、特例措置の対象です。取得から売却までの期間や売却代金など決まりがありますが、譲渡所得から一定額が控除されるため、適用できる場合は活用しましょう。
5:集合住宅の場合はレンタルスペース活用する
集合住宅や空き店舗は、地域の方のレンタルスペースに活用する方法も検討します。
週末だけのイベントやギャラリースペース、地域のコミュニティ会場など、人々が交流できる場所は、地方でも人気です。集合住宅の部分的な提供は、利用者の負担軽減と賑わい創出に役立ちます。
自分で管理が難しい時は、NPO法人などへの委託も有効です。定期的に利用状況を確認するなど、任せっぱなしにしないように心がけましょう。
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空き家リスク対策に火災保険加入もおすすめ
空き家から出火するリスクへの対策は、火災保険の加入がポイントです。
火災保険は、住居使用物件を対象とします。転勤や別荘など、継続利用している中の一時的な空き家は住居利用物件と判断されますが、完全な空き家状態は加入が困難です。
ただし、空き家でも家財が整備されているなど状況によって加入できる保険もあります。自分で判断せず、思い切って保険会社に相談してみましょう。
空き家の定義を理解して適切な管理をしよう
空き家の定義は、概ね年間を通して使用していない住宅や店舗、倉庫及びその敷地と工作物を指し、所有者が適切な管理を行わなければなりません。
空き家を放置して周辺環境に悪影響を与える状況になると、市町村により特定空き家に指定されます。固定資産の増額と自治体からの指導や命令への対応など、空き家とは異なる対応が必要です。
特定空き家に指定されないように、責任を持って空き家を管理しましょう。
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