分譲マンションには、「管理組合」というマンションを管理する組織があります。
多くの場合は、管理組合の役員はそのマンションの住人から選ばれますが、マンションの管理というのは煩わしい業務が多いことから、どうしても敬遠される傾向にあります。
また、仮にマンションの住人が役員となったとしても、いざ業務に取り掛かるときには予備知識もなく、経験も不足していることから、管理運営がうまくいかないといったケースもあり、業務のほとんどを「マンション管理業者」に委託している管理組合も少なくありません。
この管理業務を円滑に行う役目を持っているのが、「管理業務主任者」です。
管理業務主任者とは?
管理業務主任者は、2001年8月1日に設置された比較的新しい国家資格です。主な業務内容は、マンション管理業者に所属してマンションの管理受託契約の締結や管理組合に管理事務の報告などといったもので、独占業務や設置義務などがあることから近年注目を浴びている資格のひとつとなっています。
マンション管理の適正化の推進に関する法律制定に伴い、マンション管理に関する重要事項及び、管理業務の報告を行うために設けられました。そのため、マンション管理業を営む際には設置が義務付けられています。
また、管理組合で実施する理事会や総会などのトータル的なサポートをしたり、マンションの修繕の計画を立てて実施したりと、マンションの維持管理に関わる業務なども行います。
・マンション管理業者は、マンション管理業をする者であって、国土交通省の認可を受けてマンション管理業名簿に登録された業者を指します。
・管理受託契約とは、賃貸する住宅の所有者と賃貸住宅管理業者との間で、賃貸住宅の管理業務を受託する契約を指します。
マンション管理適正法の概要
ここで、管理業務主任者の仕事とマンション管理適正法について、詳しく解説しておきます。
登録の更新・申請
マンション管理業者の登録の有効期間は5年です。この有効期間以降も引き続きマンション管理業務を行う場合は、登録の更新が必要となります。更新は、有効期間満了日の90日前から有効期間満了日の30日前までに申請書を提出しなければなりません。
変更の届出
マンション管理業者は、業者の商号及び名称、代表者・役員・専任の管理業務主任者、事務所の名称及び所在地に変更があった場合には、その日から30日以内に変更の届出を提出しなければいけません。
廃業の届出
マンション管理業者は、イ.個人が死亡したとき ロ.法人の合併によって消滅したとき ハ.破産したとき ニ.法人の解散があった場合 ホ.マンション管理業を廃止したとき、以上のことがあった場合には、その日から30日以内に変更の届け出を出さなければいけません。※イ.個人が死亡したときはその事実を知った日から30日以内
標識の表示
マンション管理業者は、事務所ごとに見やすい場所にマンション管理の適正化の推進に関する法律施行規則の標識を掲げなければいけません。
管理業務主任者の主な仕事内容
管理受託契約の重要事項説明
管理受託契約を交わそうとするときには、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の所有者や賃貸人に対して、契約前に「重要事項説明」を行わなければなりません。
重要事項とは、たとえば管理受託契約の内容や履行に関する事項などで、国土交通省令で定められた事項に沿って、これらの記載された書面を交付し、説明しなければなりません。
なお、宅地建物取引業の重要事項説明は、宅地建物取引士が資格者証を契約者に提示し、その上で重要事項説明を行う必要があるのに対して、管理受託契約における重要事項説明は、必ずしも業務担当者が説明をしなければならないわけではありません。業務管理者以外の者が説明を行うことも認められています。
加えて、重要事項説明をするときに受託管理者証や従業員証の提示の義務もありません。
ただし、重要事項説明については、正確な情報を適切に説明することが条件となっていますので、管理業務に関する専門的な知識や経験を有する者が行うことがよいとされています。
管理受託契約の重要事項説明書への記名と押印
管理受託契約における重要事項説明は、管理会社の押印がされている場合もあります。
よく宅地建物取引業の重要事項説明書と混同されてしまいますが、適正法におけるマンション管理受託契約の重要事項説明書では、管理業務主任者の記名と押印が義務付けられてはいるものの、管理会社の押印の義務は定められていないのです。
そのため、管理会社の押印はないものがありますが、書類不備ではありません。
帳簿の作成
マンション管理業者は、管理組合からの委託を受けて、施行規則第86条に定めにある管理受託契約の内容などに関する帳簿を、マンション管理に従事する事務所ごとに作成し、5年間は保管しなければなりません。
マンション設備に関する言及や管理組合へのサポート
管理業務主任者の仕事には、マンションの健全な運営に関わる仕事を全般的に行うため、マンションの設備の保全や積立金の管理も担ったり、フロントマンの側面もあったりと、大変重要な役割を持っています。
管理組合が開催する理事会や総会などのサポート
区分所有のマンション管理は、本来は所有者が当事者となりますが、管理会社と契約している場合には管理業務主任者が音頭を取り、企画書の作成から各部屋にPRなどの告知を投函したり、管理室やマンションの玄関前などに掲示を張りだしたりもします。
そのうえで、理事会や総会といったものを開催して全体的にサポートし、マンションの健全な運営を支えています。
メンテナンス・維持管理の計画と実施
建物というものは、新築当初なら問題はないのかもしれませんが、築年数が経つとともにいろいろな問題が出てきます。
日々の管理にも多岐にわたり項目があり、ましてや大規模な修繕ともなると、金銭面の管理や業者の手配、住人の協力を仰ぐことやその対応など、あらゆる計画をしなければなりません。そういったことも管理業務主任者の大切な仕事のひとつです。
住人への対応
住民への対応も大きなウエイトを占めています。水道のトラブルや、駐車場、中には騒音といった住民間でのトラブルまで、対応が必要とされます。
管理業務主任者の仕事は、そういったトラブル対応において個人の裁量が大きく作用されることがあるため、社会経験の豊富な人が望まれる傾向にあります。
今後増えてくる需要
日本の人口の10人から8人のうち1人が、分譲マンションに住んでいます。その比率は今後も増えていくといわれています。新築当初はなかったトラブルや問題も、本格的なマンションの建築が行われる時代からおおよそ50年たった今ではどんどん増えており、マンションの健全な経営に対して大きな壁となっているのです。
そのような現状で、管理業務主任者に求められるものとはどんなことなのでしょうか。
時代の変化に柔軟に対応
今後は既存の建物の老朽化に伴い、耐震強度の診断や補強対応の問題が出てきます。また住人の高齢化が進み、バリアフリーへの改造、建て替えに至るまで、マンション管理の重要性はますます高まっていくことが予想されます。
独占業務
管理業務主任者は宅地建物取引士と並び、独占業務があるため希少性は高いといえるでしょう。求人の需要も高く、社会人のスキルの高さが評価されるため、定年後の仕事としてとらえている方も少なくはありません。
余談ですが、管理業務主任者だけではなく、宅地建物取引士などの関連する資格があるとよいでしょう。
その理由として、求人数だけでいえば、不動産取引を扱う宅地建物取引士の数が圧倒的に多く、管理業務主任者やマンション管理で求人を探すのに対して、宅地建物取引士で探すと、その数は数段多くなるためです。
管理業務主任者とマンション管理士
混同されがちな資格としてマンション管理士というものがあります。この二つに共通していえるのが、国家資格であり、またともにマンションの健全な運営を行うためのものだということです。
ただ、大きな違いでいうと立ち位置の差があります。管理業務主任者は管理組合に対して行う重要事項の説明や管理業務の報告、管理会社だけではカバーしきれないようなマンション管理のトータル的なマネージメントを幅広くサポートするので、管理会社側の立ち位置となります。
それに対して、マンション管理士は、マンションの管理に対する管理会社への指導及びサポート、区分所有者のマンションに関わる生活の相談など。いわば運営のプロである管理業務主任に対し、マンション管理士はその名の通り、マンション管理のプロといったものになります。
まとめ
ともにマンションの専門家である管理業務主任者とマンション管理士。資格を取得の際は、ダブルライセンスがおすすめです。もし差異をつけるのであれば、管理会社に就職して管理業務のエキスパートを目指すなら管理業務主任者、管理組合の側に立ちマンション生活をサポートしたいのであればマンション管理士、と分かれるでしょう。
どちらも分野としては学習範囲が重複するので、学んだ勉強を活かして両方の資格取得を目指すのは効率的といえます。