火災保険の「見舞金」とは、一言でいうと火災保険本体につける「特約」のひとつ。
特約なので、火災保険の基本補償に「任意」でつけられるものです。つまり、あってもなくてもいいものなのです。
しかし、ぜひつけておくべき、とおすすめしたい特約であることも間違いありません。火災の被害は、物理的だけではなく精神的にも非常にダメージの大きなものです。そんなとき、見舞金という特約は必ず期待以上に役に立ってくれるはずだからです。
今回は、火災保険の見舞金(費用保険金、臨時費用補償特約)について、どんなときに役立つか、どのような種類があるのか、といったことまで細かく見ていきましょう。
火災保険の「見舞金」とは?
火災保険金の見舞金は、「費用保険金」という名称でも知られています。火災保険は、その名前からして火災で被った損害を補償するための保険金が保険会社から支払われる制度です。
この保険金が「損害保険金」であり、一般的に「保険がおりる」というときにもらえるお金はこの損害保険金です。
では「費用保険金」つまり「見舞金」とは、損害保険金とどのような違いがあるのでしょうか。
見舞金は「一時的な被害に対処する」もの
火災保険の見舞金とは、「火災での被害に対しておりる損害保険金に先立って支払われる保険金」です。
損害そのものに対して補償するものではなく、損害を受けたことによって生じる一時的な出費に対して支払われる臨時の保険金なのです。
具体的にどのようなケースでもらえるのかという詳細は後述しますが、例をいくつか出すと「損害を受けた住宅を修復している間にホテルに泊まっていたので、その宿泊代」「破損した家屋のがれきなどの撤去代」というものなどに充てられます。
見舞金は保険金に付帯する「特約」のひとつであり、基本補償に任意で付帯させるものなので、「臨時費用補償特約」といういい方をされることもあります。「サポート」の意味合いが強い、と思っていてもいいでしょう。
見舞金と損害保険金との違い
損害保険金とは、前述したように火災で直接被った建物や家財の損害に対する補償です。たとえば「燃えてしまった家財道具の費用」「汚損した屋根の修理代」として支払われるものです。
対して、見舞金は損害保険金で補償される部分以外の予期しなかった損害に対して補償されるものです。たとえば、前述しましたが「損害を受けた家屋に住めない間の宿代」「火災の際にケガをした場合その治療費」などに適用されるのです。
これらは備えられるリスクの範囲に違いがあるもの、といえるでしょう。特に見舞金は損害補償金を受け取るまでの一時的・急な出費に対応してくれるものなので、大変助かるはずです。
費用保険金の種類
各保険会社によって名称に多少の違いはありますが、以下のようなものが費用保険金の大まかなものです。
〇臨時費用保険金…建物が損害を受けて生活が難しい状態である際に、宿代や仮住まい費用を補償するもの
〇残存物片付け費用保険金…損傷した家屋のがれきや外壁の残がい、飛散したガラス、焼け残った家財道具などを取り除く費用を補償するもの。建物の取り壊し費用も該当
〇損害防止費用保険金…今後の損害の拡大や再発を防ぐために要する費用(消火に使った消火器の補充など)を補償する
〇失火見舞費用保険金…火災などにより近隣住宅に物理的破損をもたらしてしまった場合、その見舞金
他にも「仮住まいへの引越し費用」「家財を一時的に保管しておくトランクルーム費用」「各種連絡のための通信費用」など、多くの諸費用による負担をカバーしてくれます。
見舞金の相場
では、見舞金はどのくらいもらえるものなのでしょうか。
これは各保険会社の設定にもよりますが、一般的には火災保険で実際に支払われる損害保険金額の10~30パーセント、限度額100万~300万が相場だといわれています。
注意すべき点は、「かかった費用の領収書などを用意して、実際に払った金額そのままを見舞金としてもらえるものではない」という点です。
ちなみに、見舞金をもらうために特約をつけて払い込む保険料は、一般的に年間2,000円程度といわれています。1か月に換算すると150円ほど。これなら気軽に特約をつけられて、なおかつ安心も手に入るといえますね。
見舞金に税金はかかるのか
結論からいうと非課税です。見舞金に税金はかかりません。
利益を受け取ったのではなく、損害に対する補償を受けたわけなので、課税されることはありません。
「本体」にあたる損害保険金も同様で、税金はかかりませんので、安心ですね。
見舞金申請の手順
見舞金は、自動的に支払われるものではないため、自分で申請しなければならないという点に注意が必要です。
一般的には、まず保険会社に申告したうえで書類に必要事項を記入し、それらを保険会社に送付します。あとは保険会社からの審査や調査の結果を待ち、それに通れば保険金を受け取れます。大体、請求から30日以内には受け取れるということがほとんどです。
ただしこの手順も、保険会社によって多少の違いがあります。前もって確認しておくとよいでしょう。
見舞金のメリット
もらえる保険金総額が単純に増える
火災保険の損害保険金としてもらえる補償金には算出方法が定められていて、その上限を超える金額は支給されません。
しかし見舞金を特約として付帯しておくと、損害保険金として受け取れる金額に単純に10~30パーセント上乗せした金額を支給してもらうことができるのです。
安心感が増す
火災などの直後は、ただでさえ精神的にダメージが大きいものです。すぐ目の前の事態を収拾しようにも、まとまった貯金などがない場合は生活を立て直すまでも一苦労でしょう。
いくら損害に対する補償がなされるとなっても、そこに至るまでの期間は不安が続くことも多いはずです。
そのようなとき、見舞金のような一時金があれば、安心感が湧くでしょう。前述したように、特約をつけるための保険料負担は1年間で大きなものではありません。安心を買う意味でも、見舞金はぜひ用意しておきたい特約です。
見舞金のデメリット・注意点
自ら請求する必要がある
前述もしましたが、見舞金は自分で請求しないと自動的に支払われるということはありません。
どのような補償のついた火災保険に入っていたか、費用保険金の内容はどうだったか、ということを忘れてしまっていると、いざというときに迅速な請求ができません。被害を受けてただでさえ身体的・精神的にもダメージを受けているときに、金銭的な痛手も重なるのは大変です。
また、自分自身では見舞金の支払い対象にならないと思っていたら、実は支払い対象だった、ということもありえます。
自分の保険内容をしっかり把握し、すぐに行動できるように自覚しておきましょう。
見舞金が支払われないケースがある
見舞金は、損害に遭ったとしても必ず受け取れるとは限らないものです。以下のようなケースでは、見舞金が支払いになりません。
・住宅に欠陥や劣化があったため損害が生じた場合
・地震や噴火によって損害が生じた場合(地震火災費用保険金に加入していない場合)
・契約者の故意や重大な過失で損害が生じた場合
・戦争や内乱が原因で損害が生じた場合
これらの場合は、見舞金だけでなく、損害保険金の支払い対象外にもなることがほとんどです。
「見舞金詐欺」に注意が必要!
火災保険の見舞金に絡んだ詐欺が、近年横行しています。ここ数年は規模の大きな自然災害も多く、その被災者がターゲットとされることも多いのです。
事例としては、「自己負担なしで修繕ができて、なおかつ火災保険金も全額受け取れる」「保険会社に対して、損害保険金を全額支払われるようにしてあげる」などといって連絡をしてきて、保険金請求のサポートをするからと高額な手数料をだまし取られる、というようなものです。
火災保険には、このような業者は関係ありません。保険金の支払額を決めるのもあくまで保険会社であり、第三者の業者が何かするものではないため、不審に思ったらまずは契約している火災保険の保険会社にすぐに連絡を入れて確認してみることが大切です。
まとめ
火災保険には通常の「損害保険金」のほかに「見舞金」という特約があり、損害そのものではなく損害に伴う不測の事態に対して使うことのできる保険金を受け取ることができます。
さまざまな不便が起きてしまう災害直後ですから、こういったものの内容をしっかり把握しておき、うまく活用していきましょう。