解体費用を抑えるには「廃棄物処理費用」が重要
建物解体費用を抑えるポイントは、廃棄物の処理を工夫することです。解体の前に自分で整理できるものを処分したり家具を外に出しておいたり、また庭木を整理することでも解体費用が安くなる可能性があります。
まずは、廃棄物の種類を知っておきましょう。ここからは、建物解体で発生する廃棄物の種類について紹介します。
一般廃棄物
一般廃棄物とは可燃ゴミや不燃ゴミ、粗大ゴミなど自治体が処理について責任を持つ廃棄物のことです。産業廃棄物以外の廃棄物とも定義づけられています。
一般廃棄物の中でも、水銀が含まれるものや感染性の病原体が付着したものなど、健康被害や環境被害の可能性があるものは「特別管理一般廃棄物」として、きちんと管理・取り扱われるように定められています。
産業廃棄物
産業廃棄物は、事業活動によって排出された廃棄物のことです。法令では、事業活動で発生した廃油やプラスチック類、コンクリートなどの20種類が産業廃棄物として定められています。
一般廃棄物の処理は自治体が責任を持つことに対し、産業廃棄物の処理はゴミを排出した事業者に処理責任があります。
家庭ゴミとして処分できる産業廃棄物
産業廃棄物として排出されたゴミの中には、家庭ゴミとして処分できるものがあります。自分たちで処分すれば、解体費の削減にもつながるでしょう。
ここからは、家庭ゴミとして処分できる産業廃棄物とその処分方法について紹介します。
リサイクル家電
エアコンや冷蔵庫、テレビ、洗濯機など家電4品目に該当する電化製品は、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)に基づいて処分する必要があります。
解体時にエアコンなどの家電が取り付けられたままになっていると、撤去費用が大幅に加算される可能性があるでしょう。
家電4品目に該当するリサイクル家電の処分には、購入した店舗や自治体が提携する業者に引き取りを依頼するほか、指定の場所に持ち込む方法があります。
出典:家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)|経済産業省
家具
解体する建物に家具をそのまま残しておくと、残置物として撤去費用がかかります。可能であれば粗大ゴミに出すなど、依頼主が処分するのも方法の1つです。
また、木製の家具やスチール製の家具については、解体業者に相談してみるのも良いでしょう。木製家具やスチール家具は、解体業者が他の産業廃棄物と一緒に処分することで、依頼主が処分するより安く済むケースがあります。
依頼主が自分で撤去せず解体業者に処分を依頼する場合は、事前に打ち合わせをしながら、見積もり金額の内容と自分で撤去した場合の費用をよく確認・比較しましょう。
パソコン
パソコンは、資源有効利用促進法の対象製品に指定されています。家庭で使用していたパソコンとして処分する場合には、メーカーの問い合わせ窓口から回収の申し込みをしましょう。
他にも、回収業者に処分を依頼する方法や、中古品買い取り業者に買い取ってもらう方法があります。自治体によっては回収ボックスを設置していることもあるため、ホームページなどで確認してみるのも良いでしょう。
気を付けたいポイントは、パソコン内部に保存されたデータや個人情報の保護です。情報が流出して悪用されるリスクを避けるためにも、パソコン内部のデータは完全に消去してから処分しましょう。
食器などの陶器類
リサイクルの難しい陶器類は、解体業者に処分を依頼した場合、高額になってしまう傾向があります。依頼主が自分で処分することも検討してみましょう。
食器などの陶器類は、家庭から出る不燃ゴミとして処分できます。まだ十分に使えるものであれば、リサイクルショップに買い取りを依頼したりフリーマーケットやフリマサイトに出品したりするのも良いでしょう。
書類などの紙類
書類などの紙類の処分を解体業者に依頼した場合、処分費用が割高になってしまう傾向があります。一般家庭で出すように、古紙や段ボールを資源ゴミとして回収してもらうのも良いでしょう。
しかし、事業系で排出される古紙は、自治体に回収の依頼ができないことが一般的です。その場合は、依頼主が古紙問屋や古紙再生工場へ持ち込む方法や、収集運搬業者に引き取りを依頼する方法があります。
また、排出される紙の量によっては古紙買い取りをしてくれる業者もあります。検索サイトなどで探してみるのも良いでしょう。
衣服などの布類
衣服などの布類も、残置物処分費用が加算されます。特にカーペットは、処分費用が高くなる傾向があるため、可能であれば自分で処分するのがおすすめです。
布類は、分別すれば普通ゴミや資源ゴミとして無料で処分できます。カーペットは、粗大ゴミに出しましょう。小さなサイズのラグであれば、可燃ゴミか不燃ゴミとして回収できるケースもあります。
詳細については自治体のホームページなどでチェックしてみるのがおすすめです。
プラスチック類
解体する建物の残置物の中でプラスチック類を家庭ゴミとして処分する場合は、自治体のルールに従うことが大切です。
一般的にプラスチックゴミとして回収されるのは、プラマークの付いた容器や包装類です。プラマークの付いていないものは、生活ゴミとして処分しましょう。
また、自治体によっては30cm以上の大きさのプラスチックゴミを粗大ゴミとして扱うケースがあります。自治体のホームページなどで粗大ゴミの規格についても確認しておくのがおすすめです。
なお、解体業者が産業廃棄物を処分する際には、廃棄物の重さで処分価格が決まることが一般的です。プラスチック類も木製品・金属製品と同様に、他の産業廃棄物と一緒に処分することで、処分費用が安くなるケースがあります。
解体時に出る産業廃棄物の費用の目安
建物を解体する際には、アスファルトやコンクリートなど依頼主が自分で処分できない産業廃棄物が出ます。ここからは、建物解体時に出る産業廃棄物の処分費用の目安について紹介します。
アスファルト
アスファルトの処分費用の相場は、1トン当たり800円~1,600円程度です。
また、アスファルトの厚みによって見積もり金額の目安を設定しているケースもあります。アスファルトの厚みが5cm程度であれば平米当たり1,000円程度、10cm以上であれば1,500円程度と心得ておくと良いでしょう。
コンクリートガラ
コンクリートガラの処分費用の相場は、1トン当たり800円~3,800円程度です。立米当たりでは、3,000円~1万2,000円程度を見積もっておきましょう。
相場価格に幅がある理由は、コンクリートの厚みの差や、金属が含まれるか否かで処分費用が変わることが挙げられます。
例えば、砂利などが混ざっているコンクリートガラの処分費用の相場は、立米当たり1万2,000円程度です。一方、コンクリート内部に金属が含まれていた場合には1万5,000円程度となります。
なお、コンクリートの中に金属の補強があるものや、砂利などが混ざっているものはガレキ類に分類されるケースがあります。
木くず
木くずの処分費用の相場は、1トン当たり4,000円~4万2,000円程度となります。平均相場は、1万4,000円程度で、業者によってはkg単位で価格設定されている場合もあります。
立米当たりの相場は5,000円からとなっていますが、他の廃棄物と混ざってしまっている場合には1万3,000円程度かかるでしょう。
廃プラスチック
廃プラスチックの処分費用の相場は、1トン当たり6,000円~11万円程度です。立米当たりで見積もる場合は、4,000円~8,000円程度が相場となります。
廃プラスチックは、素材やリサイクルの可能・不可能で処分費用を分ける業者もあり、FRP素材やリサイクル不可能な廃プラスチック類の処分費用は、高くなる傾向があるでしょう。
金属くず
建物解体時に排出される金属くずは窓のサッシやトタンなどで、状態の良い金属くずは専門業者に買い取ってもらうのが一般的な処分方法です。
金属くずの処分費用の相場は、1トン当たり600円~8,000円程度、平均価格は3,500円程度です。立米当たりでの相場は、リサイクル可能なものであれば2,000円程度でしょう。
鉄筋が入っているコンクリートや、外側がプラスチック類になっている金属類は混合廃棄物に分類され、金属くずとして取引されないことが多いので注意しましょう。
繊維くず
繊維くずの処分費用の相場は、7,000円~11万円程度となります。平均価格は45,000万円程度で、立米当たりでは1万2,000円程度が目安です。
繊維くずの種類には布やロープなどのほか、カーペットや畳も含まれます。畳は1枚当たりで計算し、2,000円~2,500円程度が処分費用の相場です。
また、布に見える素材でもナイロンなどを含んだ合成繊維の物は、廃プラスチック類に分類されます。
ガラス
ガラス類の処分費用は1トン当たり1,000円~4万3,000円程度が相場となっており、平均価格は7,500円程度になります。立米当たりで見積もる場合は、1万2,000円~1万6,000円程度が相場です。
ガラス類は、リサイクル可能であるかどうかで処分相場が変わります。リサイクル可能なガラス類の方が、処分費用の相場は低くなる傾向がありますが、建物解体で排出されるガラスはほとんど混合廃棄物に分別され、埋め立て処分することが多いでしょう。
解体工事業者の選び方
建物解体を依頼する際、解体工事業者選びに迷うこともあるでしょう。解体工事業者を選ぶ際には、許可や登録を保有している業者であるか、マニフェストを開示する業者であるかを確認しながら選ぶことが大切です。
ここからは、解体工事業者の選び方のポイントを紹介します。
「一般廃棄物収集運搬業許可」を取得しているか
一般廃棄物収集運搬業許可とは、普通ゴミや汚泥、家電4品目の廃家電など、産業廃棄物以外の廃棄物を収集・運搬できる許可登録のことです。
一般廃棄物収集運搬業許可を取得するためには、許可要件を満たした上で事業計画書など必要な書類を提出し、審査を受ける必要があります。
許可を得ている業者は、管轄の自治体のホームページなどで公開されているため、確認してみるのもおすすめです。
「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得しているか
解体業者を選ぶ際は一般廃棄物収集運搬業許可と共に、産業廃棄物収集運搬業許可も取得しているか確認しておくのもおすすめです。
産業廃棄物収集運搬業許可は、産業廃棄物を適切に運搬するために都道府県の審査基準をクリアし、登録・許可を受けた業者に発行されます。
建物を解体する際、産業廃棄物収集運搬業許可を受けていない業者を選んだ場合には、解体業者が運搬業者を別に発注して解体工事を進めるため、中間マージンが発生する可能性があります。
マニフェストを開示する業者か
マニフェストとは、通称「E票」とも呼ばれる「産業廃棄物管理票」のことです。廃棄物処理法施行規則に基づいて定められた様式に従って作成されます。
マニフェストは、解体した建物の廃棄物がどのような経緯をたどってどのように処分されたのかを確認するための書類です。契約書と共にコピーをもらえることもあります。
一方で、マニフェストの作成や提出を嫌がる業者は、産業廃棄物の違法投棄を含め他の規定も守らない可能性があるため避けるのが良いでしょう。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
車両や施設が整っているか
車両や重機を持っている業者であることも業者選びのポイントです。業者によっては、保管場所が確保できないなどの理由から、車両や重機を持たないケースがあります。
車両や重機を所有していなければ、リース代が加算され見積もり金額が高くなることがあるでしょう。
また、業者の所在地をチェックするのもおすすめの方法です。ホームページの会社概要欄には住所が明示されているか、住所にアパート名などの記載がないかを確認しましょう。
所在地に事務所など施設が整えられていない場合は、運営の危うい業者の可能性があります。
解体時には産業廃棄物処理費用を減らせるようにしよう
業者を選ぶ際は、自治体や都道府県から収集運搬許可を得ている業者を選ぶのがおすすめです。
建物を解体する際には、様々な廃棄物が排出されます。解体時に発生する廃棄物の品目によっては、解体業者に処分を依頼すると高額な費用がかかってしまうため注意しましょう。
建物に残る不用品などは、自分で撤去することで産業廃棄物処理費用を減らせるケースがあります。本記事を参考に、建物解体で発生する産業廃棄物処理費用を減らす工夫をしてみましょう。