マンションの建て替えや、工事中の仮住まいなどの費用相場はいくらなのかを徹底調査しました。また、負担が大きく、お金が払えない時に利用できる制度なども紹介します。費用相場以外にも、マンション建て替えに役立つ情報が満載ですので、ぜひチェックしてみてください。

マンションの建て替え費用相場や住民の負担について知りたい!

マンションの老朽化が目立ってきたら、建て替えを提案される場合があります。その際、最も気になるのは、費用の相場ではないでしょうか?
本記事では、住民が負担するお金はいくらかかるのか、負担しなくてよいケースがあるのかを、詳しく説明します。また、建て替えに対して、賛成派と反対派に分かれることがあります。建て替えが決議された後の、それぞれの流れも解説していきましょう。
マンションの建て替えにかかる費用はいくら?
マンションの建て替えにおいて、費用がいくらかかるのか一番気になるところです。ここでは建て替えにかかる費用の相場と、物件による費用負担の違いについて解説していきます。
マンションの解体・建築費用の相場

マンションの建て替えにかかる費用相場は、対象になるマンションの資産価値によって異なります。平均的に見ると、1戸あたり約1000~3000万円が相場といわれています。おおまかな内訳は、解体費用、建設費用、設計費用、事務経費です。
あくまでも一般的な費用相場ですので、さまざまな条件によって金額は大きく変動します。例えば、建物の構造や延床面積の大きさ、設備のグレードなどによっても変わってくるでしょう。物件のグレードが高いほど、建て替え費用も高くなる傾向にあります。
住民の費用負担が軽くなるケース
建て替え費用が高い場合でも、住民にかかる負担が軽減されるケースがあります。建物を建築する際には、容積率という敷地面積に対する延床面積の割合が、地域ごとに定められているのです。
既存のマンションが容積率に満たしておらず、建て替えの時に容積率のギリギリいっぱいまで使用すれば、戸数を増やすことができます。
建て替えによって新たにできた部屋を売却すれば、そのお金を建て替え費用の一部に充てることが可能になります。そうすると、自己負担がいくらか軽減されるかもしれません。場合によっては、住民の費用負担が発生しないケースもあるようです。出典:市街化調整区域における建蔽率・容積率等の指定について(福岡市)
住民の費用負担が重くなるケース
既存のマンションが容積率いっぱいに建てており、戸数を増やせない場合は、住民負担が重くなる傾向にあります。
また、戸数を増やしても、マンションの立地条件が悪いなどの理由で、なかなか売却できない場合も同様です。国内では負担の大きさは物件によって違うものの、住民負担になるケースの方が多いようです。
修繕積立金は建て替え費用に充当できない

修繕積立金とは、分譲マンションの共有スペースの維持や修理などに充てるため、住民が積み立てているお金のことです。最近の新しいマンションでは、ほとんどが取り入れているシステムになっています。
しかしながら、この修繕積立金は、一般的に建て替え費用に充てることはできません。国土交通省のマンション標準管理規約により、趣旨と異なるため原則的に禁止とされているからです。
いずれにしても、定期的な修繕などに使われているため、建て替え費用に使えるほどのお金が残っていないことがほとんどです。出典:マンション管理について(国土交通省)
建て替え費用以外にかかるお金

建て替え工事中は仮住まいに引っ越しをしなければなりません。建て替え費用に加えて、引っ越し費用や仮住まいの家賃などもかかることを、考慮しておく必要があります。引っ越しにおいては、仮住まいへ移動する時と新しいマンションへ戻る時の往復2回分です。
また、建て替え工事の期間を2年間と想定すると、仮住まい家賃と引っ越し費用を合わせて、平均で約200万円ほど別にかかるといわれています。仮住まい先の家賃はいくらか、環境はどうかなど、しっかり検討する必要があります。
マンションの建て替えの必要性
そもそもどのような場合に建て替えが必要になるのか、マンションの平均寿命と併せて、ここで解説していきましょう。寿命に大きく関わる要素や寿命を延ばす方法なども、説明します。
マンションの寿命と建て替え実施までの平均年数

建物や家屋にも、老朽化による寿命があります。マンションの寿命に決まりはありませんが、全国平均では築33.4年です。寿命が一番長いとされる東京都の平均寿命で、築40年になっています。
近年では、耐震設備などに重点を置き、耐震補強が充分でなかった時代に建設されたマンションの建て替えが増えている傾向です。
また建て替えに関する計画を始めてから実施に及ぶまで、約10年ほどの期間がかかるといわれています。住民の賛成や反対意見の割合によって、実行に及ぶまでの期間が大きく左右されるでしょう。
寿命に関わる要素①コンクリート
マンションの寿命には、コンクリートの影響が大きく関わってきます。鉄筋や鉄骨はマンションを建設する上で、重要な部分に使用する資材です。鉄筋や鉄骨は剥きだしになると酸化するため、コンクリートで覆い固めることで酸化を防いでいます。
そのコンクリートの劣化具合によって、寿命の長さも大きく変わるのです。コンクリートのひび割れや、破損があることで、鉄筋や鉄骨が酸化し錆びていくため、老朽化が進みます。覆ったコンクリートの厚みがあるほど耐久性が強く、寿命も長くなると考えられています。
寿命に関わる要素②配管設備
分譲マンションには、排水や給水、ガスなど多くの配管が設置されています。古い建築構造のマンションである場合、コンクリートの中に配管を埋め込んでいることがあります。見た目は良いのですが、配管の寿命が来て取り替えが必要になった時、建築物自体を解体しなくてはなりません。
しかし、現代の建築構造は、配管とコンクリートが別々に設置されています。そのため、配管交換のために解体という事態にはほとんどなりません。
大規模修繕やリフォームで回復・維持する場合が多い

定期的に大規模修繕を行うことで、マンションの寿命を延ばすことが可能です。大規模修繕は、12年に一度行うのが一般的であるといわれています。
また、大規模修繕を行う時は、改修だけでなく改良していくことも大切です。築年数が経ち劣化した部分をリフォームすることで、住民が快適に利用できます。それと同時に、古くなったことによるマンションの空室増加を、防ぐことができるかもしれません。
マンションの建て替え事例は少ない
国土交通省が調査したデータ発表によると、建て替え予定や工事中、すでに工事完了した分譲マンションは、令和3年年4月の時点でわずか303件でした。建て替え対象となる築30年を超えるマンションは、全国に231.9万戸あります。
一棟あたり50戸として算出すると、約4.6万棟の分譲マンションが建て替え検討の対象となります。このことから、実際に建て替えをしているマンションは、対象になるマンション全体数の0.7%にも満たしていません。出典:マンションに関する統計・データ等(国土交通省)
マンションの建て替えが実施されにくい理由
分譲マンションの建て替えを検討していても、実施に至らないケースが多くあります。ここでは、実施できない大きな理由をいくつか見ていきましょう。
住民の同意が得られない

分譲マンションの建て替えを実施するためには、協議を行った上で所有者の8割以上の賛同を得なければならないことが、法律で決まっています。しかし、建て替えをするためにかかる所有者へのお金の負担が大きく、なかなか賛同を得られないのが現状です。
建て替えの必要性に対する理解があっても、お金が払えないということが、一番の大きな理由になっています。出典:マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案について(国土交通省)
高齢者の経済的負担が大きい

分譲マンション自体が老朽化してくると、若い世代の居住者は新しい住まいへ転居する確率が大きいです。そうなると、古いマンションには、自然と高齢の居住者が多くなることになります。
そのような状況の中、お金の負担が大きい条件であれば、高齢者の8割以上の賛同を得ることは非常に困難です。賛同を得るためには、高齢者が担うお金の負担を軽くしたり、できれば負担なしにしたり等の条件の提供がポイントになるでしょう。
既存不適格建築物の建て替えはデメリットが多い
分譲マンションの中には、既存不適格とされる物件が多い点も理由のひとつです。既存不適格建築物とは、建築時には正当に建てられたものが、改定された現在の法律に対しては適合しない建築物のことをいいます。
建て替えの対象となる築30年以上のマンションは、1970年~1980年代に建てられた物件が大半です。その時代はまだ法律改定前ですので、既存不適格建築物に該当する物件も多くあるでしょう。
改定前の法律に沿って建てられた建築物は、現在の法律に適合するように建て替えなければなりません。そうするとお金も多くかかるため、居住者への負担が重くなるなどの、デメリットがあります。出典:既存不適格建築物の増築等について(国土交通省)
建て替えまでのプロセスが複雑
先述したように、建て替えの計画から実施まで、平均10年ほどかかります。長期になると、15~20年かかるケースもあるようです。これは、建て替えのプロセスが、非常に複雑であることが理由のひとつです。
プロセスには準備、検討、計画、実施と4つの段階があります。この4つのプロセスを完了させるために、かなり時間がかかるのです。そのため、途中段階で中止になるケースも少なくありません。
マンションの建て替え実施までのプロセス

建て替えの計画から実施までの、4つのプロセスについてまとめています。ここでは、実際にどのようなことが行われるのか、ひとつずつ具体的に解説しましょう。
段階①建て替え検討の準備
まずはマンション建て替えの検討を開始するための、合意を得なければなりません。そのために、建て替えをする理由やいくらお金がかかるのか、工事の期間などを情報収集して、話し合う必要があります。
そして、検討内容や理由を理事会に掲示し、住民の収集や決議会に発展させます。決議会が決行されたら、検討組織を設置することや修繕積立金や管理費などから拠出することに対して、住民に賛同を得ることができればプロセス完了です。
段階②本格的な検討を開始
この段階で本格的に検討を開始することができます。検討する際は、マンションコンサルタントなど専門職の方にも、サポート依頼をした方が良いでしょう。
検討委員会を立ち上げて、専門家のサポートを受けながら、アンケート調査や耐震診断、建て替えに関する費用対効果などの調査を実行します。建て替えの必要性が実証されたら建て替え推進決議を行い、そこで一定の賛同を得ればプロセス完了です。
段階③計画の具体化・建て替え決議の実施
事業協力者を選んだり、いくら費用負担がかかるのかなどを具体化し、計画をすすめます。計画が明確になったら建て替え決議を実行し、計画内容に対しての賛同を受けることが必要です。この時に住民の8割以上の賛同を得ればプロセス完了で、いよいよ最終段階の実施へすすむことができます。
段階④組合の設立・建て替え実施
住民が仮住まいに引っ越しをしたら、建て替えが着工されます。着工前に、マンション建て替え組合の立ち上げや住民の権利調整などを、完了しておくことが必要です。
住民の権利には、区分所有権や敷地利用権、住宅ローンの抵当権などが相当します。工事が完了し状況が整ったら、住民は仮住まいを終え再入居をして、全てのプロセスが完結となります。
マンションの建て替えに賛成する場合

建て替えの工事に関しては、賛成派と反対派に分かれることがほとんどです。ここでは、賛成した場合にどのような流れですすんでいくのかを、解説していきます。
仮住まいへ転居・建て替え完了後に再入居
賛成した場合は、マンションの解体工事が始まる前に仮住まいへ引っ越します。そのため、工事が実施される前に、仮住まい先を決定しておかなければりません。工事が完了したら、仮住まいを終えて再入居することになります。
したがって、仮住まいへの引っ越し資金や家賃などのお金も必要です。建て替え費用も含めるとかなりの金額になるため、総額いくらお金が必要になるのか、しっかり把握して計画しておきましょう。
返済特例制度などの支援助成制度を利用
建て替えに関する費用負担が大きく、お金を払えないという事態になった時は、 支援助成制度を利用する方法もあります。地元自治体の専門窓口で、詳しい内容を問い合わせてみると良いでしょう。
また、建て替えに関する不安やトラブルの相談ができる、 地方公共団体の都市整備局やまちづくり住宅課、マンション再生協議会などの機関もあるので、利用してみるのもおすすめです。出典:マンション建替えに関する国・その他関係機関等の支援制度(一般社会法人 再開発コーディネート協会)
マンションの建て替えに反対する場合

建て替えの実施が決定された場合、反対した側はどうすればよいのでしょうか?立ち退きに関わる売渡請求権や敷地売却についても、詳しく解説していきます。
売渡請求権の実行・立ち退き
反対した側は、建て替えの着工前に立ち退くことになります。その際に注意しておくポイントは、売渡請求権についてです。売渡請求権が実行されると、建て替え組合側からマンションの住戸部分の権利を、時価で売却することを請求されます。
買取請求との違い
買取請求は所有者側から建て替え組合側に対して、買取の請求をすることです。どちらも結果的に分譲マンションを手放すことは同じですが、請求する側とされる側の立場が逆になります。反対することで立ち退く場合は、売渡請求が実行されるのが基本です。
時価の算出方法
- 時価(売渡金額)=マンション敷地全体の概算評価額×敷地の配分割合
上記の方法で算出された売渡金額から、奥行価格補正や側方路線影響加算などによって、さらに修正が行われます。正確な金額を知りたい場合は、税理士など専門家に算出してもらうことをおすすめします。出典:建替え不参加者に対しての売渡要求(NPO法人 匠リニューアル技術支援協会)
反対住民が多ければ敷地売却できることも
反対派の数が多ければ、建て替え検討案は廃案または保留となります。その場合は区分所有権を手放し、敷地売却できる可能性もあるのです。ただし、マンション敷地売却制度による、耐震性が不足するマンションが対象となります。
敷地売却するためには、マンション敷地売却決議を行い、住民の8割以上の賛同を得なければなりません。出典:耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン(国土交通省)
マンションの建て替えが検討される前に売却するには?
築30年以上になると、少しずつ老朽化していくことは避けられません。住んでいて実際に不便さを感じているのであれば、建て替えが検討される前に売却するのも、賢明な方法です。ここでは、売却するためのコツをいくつか説明します。
売却のコツ①いくら位で売れるかをリサーチする

売却したい物件がいくらで売れるのか、相場をしっかりリサーチしておくことです。似たような立地条件の売却物件を探して、相場がいくらなのかをリサーチします。
まずは、ネットや新聞広告などから、同じ築年数の物件価格を見てみるのも良いでしょう。頻繁にチェックしていくうちに、おおよその相場が把握できてきます。
売却のコツ②セールスポイントを確認する
売却するためには、さまざまな広告に載せるなどのアピールが必要です。買い手は魅力のある物件を探しています。そのため、売りたい物件の魅力は何であるのかを、確認しておきましょう。例えば、共有施設の充実や駅に近い立地の良さなどでもOKです。
アピールの仕方によっては価値のある物件になるため、さらに良い価格を設定できるかもしれません。
売却のコツ③写真掲載や内覧に向けて掃除をする

マンションの売却を考慮している時点から、室内をきれいに掃除しておくこともポイントです。物件をアピールする時には、室内写真が必要になるため、何枚も撮影して一番良いものを掲載できるように、準備しておきましょう。
また、内覧を希望する方もいるので、室内はいつも清潔できれいな状態に保っておくのがベストです。
売却のコツ④良い不動産会社を探す
自分で買い手を見付けられない時は、不動産会社に仲介してもらう方法もあります。その際は、信頼のできる不動産会社を探しましょう。
大きい会社であれば良いという訳ではありません。ネットなどで実際に利用した方の口コミをチェックするなど、不動産会社についてもリサーチしてみてください。
マンションの建て替えに備えて費用や流れを把握しておこう!

マンションの建て替えに必要な、費用相場はいくらなのかを解説してきました。築30年以上の分譲マンションに住んでいる方は、建て替えの検討を発案されることがあるかもしれません。
その時に慌てなくて良いように、事前に費用相場や建て替えの流れを把握しておきましょう。また、建て替え費用だけでなく、仮住まいの家賃や引っ越し費用が発生するのもポイントです。
反対派の方は、自分の不動産がいくらで売却できるのか、相場を知っておくといいかもしれません。この記事を参考に、いざという時のための準備をしておきましょう。
