車好き・バイク好きの人なら一度は気になる「ビルトインガレージ」。もちろん、そうでない人たちにも便利がいっぱいの設備です。
今回は単なる「車庫」とは違う、魅力たくさんのビルトインガレージについて、詳しくご紹介します。
ビルトインガレージ(インナーガレージ)とは
1階部分の住宅内部に駐車スペースを埋め込んだ車庫を、ビルトインガレージといいます。単に屋根のあるガレージとは違い、住まいとなる建物と一体化している点が特徴です。
屋根や壁に囲まれ、シャッターを閉めることで単なる駐車スペースとしてだけでなく、「居室のひとつ」として考えることも可能であり、工夫次第ではさまざまな目的で使用することができます。
たとえば、リビングとガラス張りの壁で仕切ることで、ガレージに格納されている愛車をリビングから眺めることができる…というようなことも可能であり、特に車好きやバイク好きな人からは憧れの的となっている空間です。
ビルトインガレージのメリット
さまざまなダメージを受けづらい・防犯になる
屋内車庫のもっとも大きなメリットとして、愛車がさまざまなダメージを受けることを防げる、というものが挙げられます。
- 風雨や直射日光によるダメージを防げる
- 雪おろしが必要なくなる
- 風による飛来物によるダメージを防げる
- 盗難・いたずらを防げる
また、愛車のメンテナンスも季節や時間を選ばずに行うことができます。車好き・バイク好きの人にとっては最高の空間になります。
車の乗降が便利になる
ビルトインガレージと居室を行き来できる出入口や大開口部があることで、屋内からそのまま車に乗れるため、天気が悪い日でも濡れずに出かけることができます。車いすを利用している方でも、スムーズに乗降ができるでしょう。
また、屋内と車がつながっていることで、買い物から帰ってきたときに荷物をリビングやキッチン、パントリーまで持ち運ぶことも楽になります。生活動線がコンパクトになり、工夫の仕方によっては生活の中で時短につながることも多々あるはずです。
車庫以外の用途でも使える
ビルトインガレージを、単なる「車やバイクを格納する場所」として考えず、ひとつの居室であると視点を変えることで、さまざまな使い方につながります。
前述したように、車を置くだけにしても、リビングの隣にガレージを設けて壁をガラス張りにすれば、愛車がまるでインテリアの一部になったかのように眺めることも可能です。
タイヤなど車用品の置き場所にできることはもちろん、ソファーやテーブルを備えて本を読みながらくつろげるような空間にしたり、書斎や趣味部屋にしたり。DIYを楽しむこともできますね。
子どもの遊び場所として利用するのもいかがでしょうか。シャッターを開け放して家族とともにバーベキューを楽しむなど、ライフスタイルに合わせたりあらかじめ備えておく設備を工夫したりすれば、ビルトインガレージの使い道は無限大になり、生活が豊かになることでしょう。
土地が狭くても駐車場所を作れる
土地の中に住居部分の建物があり、さらに駐車スペースを設けるとなると、それなりに面積が必要となって、小さめの土地では難しいという事情が出てきます。
その点ビルトインガレージであれば、住居の建物と駐車スペースが一体化しているため、ガレージの上に住居を設けることで、土地の有効利用が可能となります。
また、ガレージと住居が、基礎も屋根も共有できるため、建築コストも抑えられるというメリットもあります。
さらに、上述したようにビルトインガレージを趣味部屋やくつろぎの場所にもすることで、たとえ居住部分の居室が最低限の広さであっても、充実した豊かな暮らしを実現する助けとなるでしょう。
固定資産税が安くなる
ビルトインガレージの面積が、家屋本体の延べ床面積の5分の1以下であれば、固定資産税が安くなるというメリットがあります。たとえば、延べ床面積100㎡の家に、20㎡以下のビルトインガレージを作ったとしたら、ガレージの面積は延べ床面積に含まれない計算になり、延べ床面積80㎡が固定資産税評価額の対象となるのです。
ビルトインガレージのデメリット
1階部分の居住空間が狭くなる
ビルトインガレージは住居の1階部分にガレージを埋め込むため、その分居住空間に割く面積が狭くなってしまうというデメリットがあります。
その分、LDKを2階に配置するなど間取りの設計に検討が必要となりますが、前述したようにガレージ自体を居室のひとつと考えて内部を工夫すると、解決の糸口も見えてくるはずです。
建築費用が高くなる
カーポートなど簡易的な駐車スペースに比べると、ビルトインガレージの建設費用は高めになり、一般的に、家屋本体の工事費にプラス250万~300万円といわれています。
付属する設備やシャッター、床などをグレードの高いものにすると、さらに費用はかさむでしょう。
また、柱や梁を設けない広々としたガレージにしたいというような希望がある場合は、上部の構造物を支えるためにより強固な耐震構造にする必要があり、その結果工法や構造が限られてきて、その費用も上乗せになる可能性も考えておかなければなりません。
騒音や振動に配慮しなければならない
ビルトインガレージの構造や部屋の間取りによっては、エンジン音やシャッターの開閉音が家の中に響いてしまったり、排気ガスが居室に流れ込んでしまったりという恐れも出てきます。
下記注意点の項目でも述べますが、ガレージの中に設けておくべき設備や部屋の間取りについて、細かく留意する必要があるでしょう。
押さえておきたいポイント・注意点
シャッターの選び方
シャッターの開閉による騒音の対策は、よく検討しておくべき事項です。シャッターの種類の選択から誤ってしまうと、家の中や近所にシャッター開閉音が響き渡ってしまいます。
また、ビルトインガレージのメリットのひとつに「雨にぬれずに車の乗降ができる」というものがありますが、手動のシャッターだとこのメリットが活かしきれなくなってしまいます。
そのため、電動式で、なおかつ音が大きくないシャッターを選びたいところです。
以下に、ビルトインガレージで使えるシャッターを3種類挙げます。
チェーン巻き上げ式
もっとも一般的な、チェーンを使って巻き上げる方式のものです。シャッターの収納場所がコンパクトなので、設置場所を選ばないというメリットがあります。パワーもあるため、重いシャッターでも開閉可能ですが、音が大きいのと開閉のスピードが遅いことから、家の中や近所に開閉音が響きやすいという弱点があります。
ベルト巻き上げ式
チェーンではなく、ベルトで巻き上げる方式のものです。チェーン方式より音は静かですが、重量のあるシャッターは持ち上げられないのが難点です。
オーバースライダー式
パワーがあるうえ軽量で、楽に開閉できます。開閉スピードも速く、なおかつ音も静かですが、天井に設置したレールに沿ってシャッタースライドさせるため、収納スペースを確保するには高い天井が必要となります。
床材の選び方
ガレージの床は通常、車の重量に耐えられる強度を持ち、水や油汚れにも強いコンクリートやモルタルが採用され、その上に樹脂製塗料などを塗るなどの方法が取られます。
ただし、ガレージの使用目的や雰囲気によって素材を選ぶことも大事です。ここはしっかり設計士さんなどの専門家と相談して決めておきたいところです。
設置しておきたい設備
照明
設計にもよりますが、壁に囲まれシャッターも閉めると真っ暗になってしまう、という造りであれば、照明は必須です。
収納
タイヤや車の整備グッズ、趣味のものや本を置いたりすることを考えると、用途に応じて収納棚などを設けておくと便利です。
換気扇
シャッターを閉めたガレージは、基本的に閉鎖的な空間になるため、換気扇も必須です。特に排気ガスやオイルのにおいが充満し、場合によっては居室に流れ込んでしまうことが考えられるのであれば、換気扇の位置や数、種類も吟味する必要があるでしょう。
エアコン
車庫としてだけでなく、長時間過ごす趣味部屋のような使い方をするのであれば、快適さを追求するためにエアコンも装備しておくといいですね。
排水口・水道・シンク
ビルトインガレージの中で洗車したり、何か洗い物をしたりするときに、排水口や水道、シンクはあると便利です。
洗車をするつもりがないなら、排水口までは設けなくても、少しだけ床に傾斜をつけておけば雨水が入ってくることもないでしょう。
充電設備
近い将来、電気自動車の時代がやってくるのは明白です。もしかしたら次の新車は電気自動車かもしれません。
それに備えて、通常のコンセントに加えて電気自動車充電用の200Vコンセントを設けておく、もしくは配線だけでも済ませておくといいでしょう。あとからリフォームで配線工事をするよりも、手間や費用をかけずに済みます。
間口が広い場合は柱や梁で補強する
広々としたガレージに車を2台以上駐車したいという場合、開口部を大きくしなければなりません。その場合は、構造や工法を工夫する必要が出てきます。
このとき、柱や梁で補強するのであれば、デザイン性のあるものを選ぶといいでしょう。ガレージの雰囲気やテイストに合ったものにすれば、すんなり溶け込んでオシャレ度をアップさせることが可能です。
広さには余裕を
現在所有の車の大きさにぴったり合わせて設計してしまうと、将来車を買い替えたときに不具合が出る、ということも考えられます。特に注意したいのは車高です。背の高い車にしたために、つっかえてしまってガレージに入らない、ということも起こりえます。
これからのことも考えて、広さには余裕を持ったガレージにしておくのがいいでしょう。
部屋の間取りを考慮する
ビルトインガレージを設置すると、どうしても1階部分の居住空間が狭くなってしまうため、LDKを2階に設けるというケースも出てきます。
2階のLDKは採光がしやすく、広々と開放感があるというメリットがある一方で、ビルトインガレージに止めた車から直接買い物の荷物を運び込めて「生活動線がコンパクトになる」という利点をなくしてしまう、というデメリットにもつながってしまうため、そこは考えどころとなるでしょう。自分のライフスタイルに合わせた間取りの検討が必要となります。
また、ガレージのシャッター開閉音や車のエンジンの音が家の中に響く可能性を考慮すると、寝室の位置もガレージから離した場所に設けるというようなことも検討するといいでしょう。
まとめ
車やバイクが好きな人には、ビルトインガレージは夢のあふれる憧れの設備ですよね。もちろん、メリットがあればデメリットもありますが、注意ポイントを押さえて自分のライフスタイルに合わせたものを造り上げられれば、豊かな暮らしを実現できる手助けとなってくれるはずです。
住まいを新築する際にビルトインガレージの設置を考えているのであれば、設計士さんにしっかり希望を伝え、納得の行くまで話し合いをし、理想のガレージを手に入れてくださいね。