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物件処分のタイミングは?
遺産相続などで取得した物件は家も土地も含めて資産となりますが、住居にしたり活用の予定がなかったりすると、固定資産税や維持費などの出費が気になります。
空き家としてそのままにしておくと、老朽化や空き巣などのトラブルに見舞われる可能性もあるため、物件処分のタイミングはできるだけ早い方が良いでしょう。
物件の処分方法4つ
物件を空き家にしないためには、どのような処分方法が考えられるのでしょうか。今、「相続等で取得した物件が空き家になる」ということが社会問題となっています。
ここからは、物件処分のための4つの方法を紹介していきますので参考にしてください。
1:無償譲渡する
空き家などの売買が難しい物件を所有する人が、土地を利用したい人に無償で譲ることを「無償譲渡」と言います。不動産を無償で譲渡する場合は、法律的には「贈与」となり、贈与税や登記費用がかかります。
2:売却する
物件を売却するのに一般的な方法は、不動産会社に仲介を頼んで販売する方法です。
この方法の場合、不動産会社が売主に代わって物件を買いたい人を探し、物件の紹介を行ってくれます。そのため、売却が成功した場合には、不動産会社に対する仲介手数料の支払いが発生します。
仲介によって物件を販売する場合は、売却までに時間がかかるのがデメリットです。また、不動産会社は様々な物件を扱っているため、条件がいい物件とライバル関係になる場合もあるでしょう。
3:賃貸として貸し出す
物件を賃貸として貸し出す方法には、家賃収入が得られるというメリットがあります。ただし、収入が得られるのは借り手がいることが条件です。
借り手がつくためには、所有物件の立地や競合する物件の状況に合わせて、借り手が借りやすい価格設定をすることが重要と言えるでしょう。
また、賃貸経営には、賃貸募集にかかる費用、エアコンや給湯器の修理や交換、床やクロスなどのリフォームなどの経費がかかりますが、これらの経費は賃料から差し引いて課税されるため、節税効果が期待できます。
4:駐車場などに有効活用する
物件を解体して更地にした場合、駐車場などに有効活用できます。しかし、物件を解体した時点で固定資産税の軽減対象から外れてしまうため、建物が立っていることで抑えられていた税金が、そのままかかってくるため注意が必要です。
物件を処分する5つのメリット
空き家となっている物件をそのまま保有していると、税金や維持費などの費用がかかります。さらに、空き家は社会問題となっていることから、状況によっては自治体から改善のための指導が入ることもあります。
ここでは、物件を処分するメリットを5つ紹介します。
- 早めの処分で税制優遇が受けられる
- 税金や維持費がかからなくなる
- 被災で売却できなくなる可能性を回避できる
- 倒壊することを事前に防げる
- 遺産を相続人の間で等分できる
1:早めの処分で税制優遇が受けられる
税制優遇が受けられる特例は、令和5年12月31日までに相続等で取得した物件を売り、いくつかの要件にあてはまる場合に譲渡所得から3,000万円までの控除を受けられるというものです。
適用要件の1つに、相続による譲渡を受けた日から3年後の12月31日までに物件を譲渡することとあるため、早めの処分が良いと言えます。
出典:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
2:税金や維持費がかからなくなる
空き家には誰も住んでいなくても、毎年の固定資産税と都市計画税がかかります。また、空き家の維持費として、庭の樹木や雑草の草むしりなどの清掃費、住宅の経年による劣化に対する修繕費といった経費もかかるでしょう。
物件を処分すれば、これらの支払いは不要になります。
3:被災で売却できなくなる可能性を回避できる
台風や地震などの自然災害で住宅に被害があった場合、物件の査定価格が下がったり、売却できなくなったりする可能性があります。
物件を早めに処分することで、このようなリスクを避けることができます。
4:倒壊することを事前に防げる
物件に人が住まない状態が続くと普段の清掃が行われず、また傷んだ場所の修繕も行われないため、一気に老朽化してしまいます。
特に古い空き家は耐震性能が低く、老朽化することで小さな地震や台風などでも倒壊してしまう可能性があるでしょう。
5:遺産を相続人の間で等分できる
物件を相続人が使用しない場合、物件を処分して売却代金を得れば、相続人の間で等分にできることがメリットです。物件のままだと分割することが難しく、利用する用途も限定されるため等分にすることは難しいでしょう。
物件処分をする前にすること
物件を処分する前には、相続の当事者で分割の方針を決める必要があります。
相続の方法は、相続人の中の特定の人に所有権を移動する現物分割と、不動産を相続人で共有したまま売却し、現物を分割する換価分割の2つの方法です。
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物件を処分する際にかかる4つの費用相場
物件の売却によって得られる売却代金の入金よりも前に、物件の解体費用や境界の確定測量のための測量費が発生します。
さらに物件の家財道具の処分費用や、名義変更にも費用が必要です。ここからは、物件を処分する際にかかる4つの費用相場について見て行きましょう。
1:物件の解体費
物件の解体費用は、解体する建物の構造と広さにより異なります。木造なら1坪当たり3万円~5万円程度ですが、鉄骨造りなら1坪当たり4万円~6万円程度、鉄筋コンクリートなら6万円~8万円程度が相場です。
より頑丈な構造であるほど、多くの人件費や、重機費用がかかります。
2:物件の家財道具の処分費用
物件を解体する場合、事前に家財道具を処分する必要があります。空き家で一戸建ての場合、家財道具の処分費用は20万円~50万円程度です。
中にはトラックに載せ放題で家財道具の処分費用を決めている業者もあります。この場合は、1立方メートル当たり1万円~2万程度です。
3:名義変更の費用
物件の名義変更に必要な費用は、3万円~7万円程度です。
名義変更自体は自分で行うことは可能なものの、書類作成と資料の収集、戸籍謄本の調査などを自分で行うのには、かなりの手間がかかります。司法書士に依頼する選択肢もありますが、別途費用がかかることを念頭に置いておきましょう。
4:測量会社への境界確定の費用
境界確定の費用は隣接地が国、都道府県、市町村などの役所が保有する場合と、私有地の場合で大きく異なります。
隣が私有地で、民間同士で立ち会って境界確定が行える「民民立ち合い」では30万円~50万円程度、隣が役所の場合の「官民立ち合い」では60万円~80万円程度です。
このように、役所との境界線がある場合は図面や書類が多いため、より費用がかかります。
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物件処分に助成金・補助制度とは?
年間を通じて利用されない空き家で、自治体が建物として危険性があると認めるものの解体工事に補助金を出す「危険空家等除却補助制度」といった制度があります。
例えば札幌市では、50万円以内(除去後の土地を5年間、地域の自治組織に貸し出す場合は150万円以内)の費用の一部が補助されます。ただし、予定予算を超えた場合は選考が行われ、補助金の支払いについて検討されます。
他の例では、大阪の阪南市で「阪南市危険空き家除却補助制度」、鹿児島県奄美市で「危険空き家等除却助成金」という名称で、物件の処分をする際の補助金や助成金の制度があります。
地方自治体によって名称や補助される金額の上限は異なりますが、同様の制度があるため、物件を処分する場合は確認してみましょう。
出典:令和3年度札幌市危険空家等除却補助制度のご案内|札幌市
物件を処分する際の注意すべき3つの点
物件処分の際は、再建築不可の物件でないかなど注意すべき点があります。また、売却価格が安くなったり、処分したくても買い手がつかなかったりということもあるでしょう。
ここからは、物件を処分する際の注意点を3つに分けて紹介していきます。
1:処分する際は家の中も空にする
家の中のものの処分には様々な方法がありますが、今後使用する予定がない不用品などは専門業者に引き取ってもらうのが良いでしょう。ただし、この場合は費用がかかることに注意が必要です。
家具や家電などを処分する場合は、リサイクルショップなどの買い取りを利用することで収入が得られる可能性もあります。
家の中に何が残っているのかを事前にしっかりと確認してから、利用する業者などを選ぶようにしましょう。
2:物件の相場を予め調べておく
物件を売却する前に物件の相場を調べておきましょう。
国土交通省の「土地総合情報システム」で不動産取引価格を調べる方法や、一括査定サイトを使う方法もあります。
3:家以外の遺産も相続できなくなる可能性がある
物件の相続による悩みを解消するためには、相続放棄をするのも1つの方法です。
相続放棄をすれば、最初から相続人でないという扱いとなるため、相続したくない物件を相続しなくて済みます。そのため、「その物件が売れるかどうか」や「固定資産税などの支払いが発生してしまう」などの悩みはなくなるでしょう。
しかしながら、相続放棄を行うと預貯金などの財産や、物件を換金できた場合の利益は受け取れません。
相続を放棄しながらもどうしても相続したい財産がある場合には、「限定相続」という方法があります。また、相続後に負債が発覚したとしても、相続分以上の支払いをしなくても済むという制度もあるため、状況に合わせて検討するのもいいでしょう。
出典:民法の相続制度の概要 ~相続税法を理解するために~|国税庁
物件処分は早めにしよう!
ここまで、物件を処分するメリットや注意点、費用相場について解説しました。空き家を放置しておくと、劣化により倒壊の恐れなども出てくるでしょう。
本記事を参考に、物件の処分に関する助成金や補助制度もうまく活用しながら、空き家物件を早めに処分しましょう。
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