解体工事に限らず、さまざまな産業活動のあとには必ず廃棄物、つまりゴミが発生します。この廃棄物にはどのような種類があり、また収集・運搬をする際にはどんな点に気をつけなければいけないのか、「産業廃棄物収集運搬許可」というワードを中心に置いて見ていきましょう。
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廃棄物の種類
廃棄物とは
「廃棄物」とは、一言でいうと「ゴミ」や「不要物」であるというイメージがあるでしょう。
きちんとした定義では「自ら利用し、または他人に有償で売却することができないために不要になったもの」がこれにあたります。
ほとんどの廃棄物は廃棄物処理法という法律によって規定されており、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形状又または液状のもの」ということになっています。
廃棄物の分類
廃棄物は、「産業廃棄物」「特別管理産業廃棄物」、および「一般廃棄物」「特別管理一般廃棄物」と、大きく4つに分類することができます。
産業廃棄物
今回一番の焦点を当てる産業廃棄物には「事業活動に伴って生じたもののうち、規定されている20種類」が該当します。言い換えれば規定されていないものは、事業活動において生じたものでも「一般廃棄物」ということになります。
特別管理産業廃棄物
産業廃棄物のなかでも、特に指定された有害なものがこれに該当します。
一般廃棄物
上でも少し触れましたが、産業廃棄物以外のものは「一般廃棄物」となります。このなかでも、やはり上で触れた「産業廃棄物以外の、事業活動で発生したもの」を事業系一般廃棄物といい、「一般家庭の日常生活から発生したもの」を家庭廃棄物といいます。
特別管理一般廃棄物
一般廃棄物のうち、特に指定された有害なものがこれに該当します。
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「産業廃棄物収集運搬許可」とは
上記で説明した「産業廃棄物」に該当するものを運ぶ際には、「産業廃棄物収集運搬許可」というものが必要になります。
産業廃棄物というゴミは、誰でも、どんな人でも、収集して処理場まで運搬できるものではないという点がポイントです。
この産業廃棄物収集運搬許可について詳しく見ていきますが、「産業廃棄物収集運搬許可」がなくても廃棄物の運搬が可能な場合というものがありますので、最初項ではまずそれを確認していきましょう。
許可がなくても廃棄物の運搬が可能な場合
「廃棄物処理法」という法律によると、「事業者は、自らその産業廃棄物の運搬または処分を行う場合には、”政令で定める”産業廃棄物の収集、運搬および処分に関する基準に従わなければならない」という規定があります。
「政令で定める産業廃棄物の収集、運搬に関する基準」というのは、以下の3点です。
裏返していえば、「この基準にさえ従っていれば自分で出した廃棄物は自分で運搬することができる」ということになるわけです。
そしてもちろん、この基準を満たしていても「他人が排出した廃棄物」に関しては、運搬できないということにもなります。
このときもっとも注意しなければいけないのは、自分の排出物だと思って運搬していたのに、法律的には他人(他業者)の排出物だった、というようなことが起きた場合です。元請け業者・下請け業者といった立場が絡んでくると、このようなことが起きやすくなるのですが、このケースだと自分もその他業者も、重大な廃棄物処理法違反にあたってしまうことになるのです。
自分で運搬する場合には、本当にそれが許可なしでも可能なケースなのかどうかをしっかり確認することが大事です。
産業廃棄物収集運搬許可が必要な「産業廃棄物」とは
上述したように、産業廃棄物の定義は「事業活動に伴って生じたもののうち、規定されている20種類」というものです。この20種類は、具体的には以下のものです。
1~12はあらゆる事業活動に伴うもの、13~19は特定の事業活動に伴うもの、となっています。
燃え殻
焼却炉の残灰や石炭ガラなど
汚泥
排水処理や各種製造業生産工程で排出された泥状のものなど
廃油
鉱物性油、動植物性油、潤滑油など
廃酸
廃硫酸、廃塩酸、すべての酸性廃液など
廃アルカリ
写真現像廃液、すべてのアルカリ性廃液など
廃プラスチック類
合成樹脂くず、合成繊維くずなど
ゴムくず
生ゴム、天然ゴムくず
金属くず
鉄鋼または非鉄金属の破片、研磨くずなど
ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず
ガラス類製品の製造過程等で生ずるコンクリートくずなど
鉱さい
電炉等溶解炉かす、不良石炭など
がれき類
新築、改築または除去により生じたコンクリート破片、アスファルト破片など
ばいじん
大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法に定める特定施設または産業廃棄物焼却施設において発生するばいじんであって集じん施設によって集められたもの
紙くず
建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず
木くず
建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、木材・木製品製造業(家具の製造業を含む)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木材片、おがくずなど
繊維くず
建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず
動植物性残さ
食料品、医薬品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあらなど固形状の不要物
動物系固形不要物
と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物
動物のふん尿
畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等のふん尿
動物の死体
畜産農業から排出される牛、馬、豚、にわとりなどの死体
1~19の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの
産業廃棄物収集運搬許可の取得に必要な条件
取り扱いに注意が必要な産業廃棄物は、誰でも収集・運搬が可能となってしまうと、環境破壊や不法投棄などの深刻な事態につながりかねなくなります。
そこで必要なのが、「許可を得ること」となり、その取得条件は大きく5つ挙げることができます。
経理的基礎が確固としていること
倒産が危ぶまれる経済状態の企業だったら、廃棄物の収集をまかせることはできませんよね。そのような理由から、直近3年はしっかりとした経営状況であることが求められます。
講習会を修了していること
産業廃棄物収集運搬許可に関する講習会を受講・修了し、しっかりとした知識を得ていることも条件となります。
運搬施設がしっかりしていること
収集運搬ができる施設や車がしっかりと用意できていることも必要です。
事業計画がきちんとしていること
計画的で適法な業務内容、適切な施設や人員配置など、事業を行う体制が整っていることも求められます。
欠格事由に該当しないこと
申請者やその法人の役員、株主、出資者、法定代理人、政令使用人が、「破産者、暴力団員、その他」に該当していないことも条件となっています。
以上の条件を満たしたうえで、都道府県知事または政令で定める市の許可を得ることができます。
別の許可が必要な場合
注意しなければいけないのは、これまで説明してきた産業廃棄物収集運搬許可を得ていても、その他の一般廃棄物は収集・運搬ができないということです。つまり、家庭から出るゴミなどはまた別の許可が必要となってくるのです。
産業廃棄物収集運搬許可ですべての廃棄物を扱えるわけではないため、すべて一緒くたに考えることはできないという点は覚えておきましょう。
まとめ
人間は生きているだけで廃棄物を排出する生き物です。普段の生活ではさまざまな種類のゴミが膨大に発生していて、これを扱うためにはそれぞれ許可が必要となります。許可を得られる条件などきちんとおさえて、スムーズな処理を心がけたいですね。
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